ソフトトップは感服の設計水準 フェラーリ・アマルフィ・スパイダー(1) 640psのV8にレース・モード 最も肩肘張らずに乗れる
最も肩肘を張らず乗れる側のフェラーリ
真夜中、同行したカメラマンからマップの位置情報が届いた。結果的には、フェラーリの設定ルートから大きく外れることになったが、壮大な地形がわれわれを待っていた。
【画像】一般道で深い一体感を生む才腕 フェラーリ・アマルフィ・スパイダー 競合のオープンと写真で比較 全148枚
ギリシャ南部、オリギルトス山脈を越える国道66号線。石灰質の土地へ豊かな緑が広がる渓谷で、まるで文明から忘れ去られたかのよう。しかし、ハイスピードに耐えるほど平滑なアスファルトが、うねるように伸びていた。

フェラーリ・アマルフィ・スパイダー(欧州仕様)
路肩には、黄金色のハチミツで満たされたであろう、無数の四角い巣箱。ここはギリシャ神話、ヘラクレスにまつわる舞台の1つで、神秘さを感じたとしても不思議ではない。
こんな道の堪能へ至った理由は、フェラーリ・アマルフィ・スパイダーのメディア向け試乗会に招かれたから。相対的には、同社のラインナップで最も肩肘を張らず乗れる側にある。英国価格は、22万7260ポンド(約4886万円)からだという。
従来以上に鋭いV8ツインターボにレース・モード
プレゼンによると、「可能な限り運転しやすい」らしい。フェラーリへの乗り換えに敷居の高さを感じるドライバーへ、最良の選択肢として位置付けられるという。あまり情熱を感じない表現に聞こえるが、果たして、それは杞憂といえた。
確かに、ミドシップ・ハイブリッドの296 GTSや、1050馬力を誇るフラッグシップの849テスタロッサ・スパイダーと比較し、親しみやすいことは間違いない。しかし、気軽に乗れる跳ね馬だと結論付けるだけなら、過小評価したことになる。

フェラーリ・アマルフィ・スパイダー(欧州仕様)
アマルフィのホイールベースは短く、油断すればお仕置きを食らいそうなほど、ステアリングは鋭敏。3.9L V型8気筒ツインターボエンジンは、従来以上に鋭く回り、最高出力は640psに達する。3000rpmから生じる最大トルクは、77.4kg-mと極太だ。
ドライブモードには、スタビリティ・コントロールの介入が制限される、レースが追加された。理性を忘れるほど没入して「運転しやすい」と、彼らは表現したかったのかも。
計8層構造のソフトトップは感服の設計水準
アテネが位置する、ギリシア東部のアッティカ地方を出発する。高速道路は真新しく、ガラガラ。質感向上を目指したという、ローマからの改良点を確かめるのに丁度良い。
電動ソフトトップは、5層のファブリックと3層のラバーで構成され、遮音性はリトラクタブル・ハードトップと遜色ないとか。実際、静寂性は唸るほどで、アストン マーティン・ヴァンテージ・ロードスターに勝り、ベントレー・コンチネンタルGTCに迫る。

フェラーリ・アマルフィ・スパイダー(欧州仕様)
このソフトトップは、走行中でも64km/h以下なら13.5秒で開閉可能。サイドウインドウを閉め、リアシート・パネルを展開すれば、風の巻き込みは殆どない。助手席の人と、普通の声量で会話できる。感服の設計水準といえる。
車高はさほど低くなく、ノーズリフト機能の出番は少なそうだが、マグネライド・ダンパーが上下動を担う。スプリングも新しく、特性の幅はローマ以上に広がったという。
フェルスタッペンが好むであろうシャープな反応
つまり、コンフォート・モード時はソフトへ、レース・モード時はハードへ、より明確に変化する。ステアリングには、アルマイト仕上げのマネッティーノ・ダイヤル。その角度を問わず、奥へ押し込めば、最も柔らかいバンピーロード・モードを呼び出せる。
ソフト側にあるアマルフィ・スパイダーは印象的にしなやかで、ロードノイズは最小限。シートはホールド性に優れ、グランドツアラーとしての素養は極めて高い。

フェラーリ・アマルフィ・スパイダー(欧州仕様)
そして、うっかり筆者も油断してしまった。緩く弧を描く高速道路を降り、ランプレーンへ侵入。ステアリングも、コンフォート・モードらしい優しい特性にあると思い込んでいた。大きめに手首をひねると、予想を超えてフロントノーズが内側へ食い込む。
F1ドライバー、マックス・フェルスタッペン氏が好むであろう、シャープな反応で我に返る。電動パワーステアリングの設定は、ローマ時代と変わらない。
覚悟と技術が必要でも得られる充足度は高い
ステアリングホイールへ僅かに角度を与えるだけで、パワードームが見える長いボンネットは、吸い込まれるように向きを転じる。この鮮烈なレスポンスを楽しめるかどうかで、アマルフィ・スパイダーとの暮らしの喜びは、左右されるだろう。
ポルシェ911 GTSカブリオレのステアリングは、より穏やかでナチュラル。カーブ中央を過ぎて加速へ映る場面で、サスペンションの動きを味わえる魅力も伴う。

フェラーリ・アマルフィ・スパイダー(欧州仕様)
アマルフィ・スパイダーの操舵感は、最近のフェラーリらしく刺激的で、味付けはやや人工的。エンジンがボディ中央寄りなレイアウトを、活かし切ろうという考えがある。乗りこなすには、ある程度の覚悟と技術が求められるが、得られる充足度も高い。
肝心な走りの印象とスペックは、フェラーリ・アマルフィ・スパイダー(2)にて。

