横浜FC戦では、そのベースの部分にもまだ整備すべき余地があることを露呈した。

 秋葉監督も前半の戦いには強い不満を示している。

「前半はもう前の圧力がまったくなかったんで、ハーフタイムで雷を落としましたから。トップ、両ワイド、もっと迫力を持って行けと。あれでは我々が求めているところじゃないですし、戦う姿勢ではない」

 ただし、こうした問題は選手個々のメンタリティだけで解決するものではない。「もっと前から行こう」「もっとアグレッシブに戦おう」という意識を高めることは必要だが、相手が自分たちの想定とは異なる配置やボールの動かし方をしてきた時に、誰がどこへ出て、空いたスペースを誰が埋めるのか。その判断に迷いが生じれば、いくら前への意識を強く持っていても、チーム全体として連動したプレッシングにはならない。

 だからこそ、トレーニングからの積み上げに加え、ミーティングや日頃からの選手間のコミュニケーションを通じて共通理解を深め、試合中に起こる「想定外」をできるだけ「想定内」に変えていく作業が必要になる。

 それは守備だけの話ではない。ボールを奪った後に、どこを使って前進するのか。相手を押し込んだ時にどう崩すのか。リスタートをどうチャンスにつなげるのか。あらゆる局面で判断の基準を共有し、ピッチ上で迷う時間を減らしていかなければならない。

 その土台があって初めて、選手たちはイレギュラーな状況に自分たちで解決策を見つけられる。秋葉監督が求める「超攻撃的、超アグレッシブ」という姿勢も、単純に走る量や気持ちの強さだけで実現するものではないはずだ。
 
 戦うことを大前提として、その戦いをチームとしてどう機能させるのか。横浜FC戦で問われたのは、まさにその部分だった。

 後半開始から乾貴士と為田大貴を投入すると、磐田の前への圧力は強まった。さらに桑原航太、ジョアン・ヴィクトルらを送り込み、横浜FCに退場者が出てからは相手陣内へ押し込んだ。

 しかし、秋葉監督が言う通り、それでは遅い。

「本来は後半に持っている、あの姿が我々の姿です。もっと言えば、0−1になったからあの姿になったら遅い。やはり開始の笛とともに、あの後半の姿を出せるようにしないといけない」

 秋葉監督の就任によって、明確にベースアップしている部分もある。目の前の相手と戦う。球際で負けない。ボールを失えば切り替える。そして最後まで走る。

 現代サッカーの三原則とも言える「球際、切り替え、ハードワーク」という部分では、52位に終わった百年構想リーグから変化が見える。日々のトレーニングの強度も上がり、選手間の競争も激しくなった。

 だが、ここを混同してはいけない。それはJ2優勝への武器である以前に、優勝を争うための大前提である。
 
 磐田だけがハードワークするわけではない。相手も走るし、球際でも戦う。しかも各クラブは自分たちのベースを持ったうえで、「ジュビロ磐田にどう勝つか」をスカウティングし、具体的なプランを準備してくる。

 横浜FCがまさにそうだった。

 須藤監督は試合後、磐田について「秋葉監督になってインテンシティが非常に上がっていて、球際の強さ、走ること、切り替えの早さ」を警戒していたことを明かした。そのうえで、こう振り返っている。

「その相手の土俵でも打ち勝ちながら、我々らしくボールを動かして、何度もゴールへ向かうことができたと思います」

 この言葉は重い。

 磐田が自分たちの強みにしようとしている部分を横浜FCは真正面から受け止め、そこで互角以上に戦いながら、自分たちが百年構想リーグから積み上げてきたスタイルまで表現した。