一方で被告は「Aの発言によって好意をもっていると考えた」、「互いに近づきキスをした」、「自身は顎や頬を掴んでいない」、「Aから『嬉しいです。幸せです。今日一日頑張れます』と言われてディープキスに至った」、「Aは用もないのにロケバスに乗ってきており、口腔性交をする際も同じ気持ちだと思った」、口腔性交で「Aは自ら顔を近づけた」、「行為は10秒ほどだった」などと弁解した。

 しかし、本件犯行がロケバス内だったことを踏まえると、性的行為の同意があると誤信していたというのは、およそ不自然である。また、Aの好意が性的行為を許容するほど強いものでないことは明らかである。被告の弁解はあまりに飛躍しており、不自然・不合理である。

 犯行後の被告からの謝罪も、「良い答えが返ってくることを確信して尋ねるもので、口癖だ」と供述するが、およそ意味不明であり、不自然・不合理な弁解であると言わざるをえない。かつ、被告の当公判廷における供述は、一部が供述調書と異なり、変遷している。

◆検察側が斉藤被告に懲役7年を求刑

【情状関係】

 本件犯行は、被告の芸能界における立場を利用し、撮影の合間のロケバス内において3回にわたってキスしたうえ、口腔性交に至っており、大胆でAの性的自由への侵害は大きい。その犯行態様は悪質である。

 また、Aは本件犯行の影響で、精神科への通院を余儀なくされ、日常生活もままならず、本件犯行で生じた取り返しのつかない結果は、重大なものである。

 Aは意見陳述で実刑を求めており、量刑において十分に考慮されるべきである。前科がないことなど被告に酌むべき事情を考慮しても相当な期間、矯正施設に収容して猛省を促すことが不可欠である。

 懲役7年に処するのが相当だと思料する。

◆「Aさんの証言には信用性がない」弁護側が供述の矛盾点を指摘

 これに対して、無罪主張をする弁護側最終弁論の要旨は次のとおりである。

【Aさんの証言の信用性等】

 第1の時間帯の最初のキスに至るまでの経過は自然なものだった。斉藤さんは行為があったことを認めており、虚偽を述べることもない。

 第2の時間帯にAさんは「キスをされた」と供述した。しかし、当時のロケバスを映した防犯カメラの映像には、車内からドライバーが出てくる様子はなかった。車内でドライバーに音を聞かれ、カーテンの隙間から見られる可能性などがある。その状態で行為をすることは考えられない。斉藤さんは犯行をしていない。