米富豪ジェフリー・エプスタイン元被告(Getty Images)

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 米司法省(DOJ)が今年1月30日(現地時間、以下同)に約300万ページに及ぶ「エプスタイン文書」を追加公開してから、およそ半年。7月20日に、勾留中に死亡したジェフリー・エプスタイン元被告(享年66)に若い女性を紹介していたとされるモデルスカウトの男、ダニエル・シアド(69)がパリ郊外の自宅で死亡しているのが見つかった。【前後編の後編。前編から読む

【写真を見る】エプスタイン被告に若い女性を紹介していたとされるシエド、電気マッサージ器やナースセットが用意されていたエプスタイン邸の内部

 シアドはDOJが公開した文書に名前が約2000回登場し、米テレビ局「CNN」のインタビューにおいて、複数人の女性を紹介したことを認めている人物だった。しかし、性犯罪への関与や人身取引の疑いについては否定。今年2月以降、フランス当局はエプスタイン元被告の関係者とされる人物に対し、人身売買をめぐる捜査を開始しており、シアドにも電話傍受などを実施していたが、直ちに逮捕するに足る証拠は得られていなかったという。

 一方で、シアドには"黒い噂"があったという。大手紙国際部記者が解説する。

「今年2月、元モデルの女性が、シアドから受けたとする被害についてパリ検察に告訴しました。告訴したのは、スウェーデン出身のエッバ・P・カールソンさん。1990年7月、当時20歳だったカールソンさんは、ストックホルムでシアドから声をかけられ、モデルの仕事を持ちかけられたと証言。その後、ともに南フランスへ渡り、カンヌの邸宅でシアド本人から性的暴行を受けたと主張しています」

 現地メディアでは、シアド自身は大手モデル事務所を率いるような"大物"ではなかったが、業界の有力者へ若い女性やモデル志望者を紹介する、現場のスカウト兼仲介役だったと報じられている。実際、パリの大手モデル事務所「エリート・モデル・マネージメント」の欧州部門トップだったジェラルド・マリーや、エプスタイン元被告と深い関係にあったモデルエージェント、ジャン=リュック・ブリュネルらのためにも女性を探していたとされる。

「さらに現地報道によると、ロシア出身のモデル、スベトラーナ・ポジダエバさんは、シアドからエプスタイン元被告に紹介され、虐待を受けたと証言しています。

 米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』の取材では、ポジタエバさんは『モデル業の成功』を信じて、エプスタイン元被告による"支配"を心身ともに受け続けてきたことが分かっている。着る服や髪型、誰と時間を共にするかということすら指示され、マッサージを口実に性的暴行を受けていた。また、元被告のために新たな女性を探すことも手伝わされていたようです。

 DOJが公開したエプスタイン関連文書によると、シアドはエプスタイン元被告に女性モデルを紹介するメールを繰り返し送っていた。その中には10代も含まれていました。彼女らの証言は、シアドが凄腕のスカウトマンとして活動しながらも、各地で見つけた女性をエプスタイン元被告ら権力者へとつなぐ役割を担っていた可能性を示しています」

「行方不明」の女性と懇意にしていたか

 そしてシアドが亡くなる約1か月前の6月10日には、新たな事実が浮上していた。約11年前から行方不明になっていた女性の名前が、エプスタイン文書内で確認された。そして、その女性は長年、シアドと連絡を取り合っていたというのだ。

「ドイツ出身のミシェルという名前の女性は、2015年9月ごろから行方不明になっており、家族は同年10月、警察に捜索を届け出ています。当時22歳だったミシェルさんは、スーツケースを持って母親のアパートを出た後、家族や友人との連絡を断ちました。

 現地報道によると、ミシェルさんは2012年ごろ、ドバイのダンスバーで、モデルスカウトを名乗るシアドから声をかけられたという。シアドは写真撮影を持ちかけ、その後も2人は連絡を取り合っていたと見られています」

 DOJが公開したエプスタイン関連資料には、シアドがエプスタイン元被告にドイツ人のミシェルという女性を紹介するような内容のメールが確認できる。日付は2014年3月10日。その文面は、次のようなものだった。

〈もしよろしければ、ドイツから来ていたミシェルという女の子に(飛行機の)チケットを送っていただけないでしょうか。彼女は私がよく知っている子で、とてもクールで、素晴らしい子です。きっと気に入っていただけると思います〉(DOJ公開資料より抜粋)

「家族は、このメールに登場する名前の女性が、11年前に行方不明になったミシェルだと主張しています。そのほかのメールにも、ミシェルさんの名前は複数回登場している。しかし、ドイツ警察は彼女の名前がファイルに記載されていることが判明した後も、具体的な証拠がないとして捜査の開始を見送っています」

 シアドが亡くなった今、本人の口から数々の疑惑に対する説明の機会は失われてしまった。一方フランスでは、エプスタイン元被告に関する人身取引の捜査が依然続いている。事件の真相が明らかになる日は来るのだろうか。