ターンインではフロントが逃げる素振りなど微塵も見せず、立ち上がりでは後輪が強烈なトラクションで車を前に進める。車から伝わるインフォメーションの濃さもあり、気づけばどんどんペースが上がってしまう走りっぷりである。

SF90以降、順に採用されてきたABS Evo.と呼ばれる電動ブレーキシステムは、ローマからの最大の変更点と言ってもいいかもしれない。ストローク短く剛性感あふれるタッチ、4輪の制動力を個別に、そして緻密に制御することによる安心感に満ちたブレーキング性能は、止めるためにも曲げるためにも素晴らしい効果を発揮してくれるのだ。

正直に言えば、スペックあるいは新採用アイテムのリストを見ただけの段階では、これも素晴らしい走りを楽しませてくれたローマ スパイダーに対して、一体どれだけの違いを実感させてくれるのかと、訝しい気持ちも無かったわけではない。しかし実際に走らせてみれば、そのアップグレードぶりは想像以上のものだった。

甘い生活を標榜したローマは、実際に乗ると結構荒々しい部分もある車だったが、そこから完成度を飛躍的に高めたローマ スパイダーを経て、アマルフィ スパイダーは一層の洗練、そして同時にスポーティネスを実現した、素晴らしい仕上がりを実現していた。ローマのエボリューションとするのではなく、新しい名前が与えられたのも、その長足の進化ぶりからすれば、大いに納得である。

文:島下泰久 写真:フェラーリ
Words: Yasuhisa SHIMASHITA Photography: Ferrari