京都五山送り火ピンチ 気候変動や獣害に施設老朽化「もう限界」 クラファン募る
京都市の夏の風物詩「五山送り火」が、苦境に直面している。気候変動や獣害といった自然要因に加え、火床の整備に不可欠な設備の老朽化にも悩まされているという。長年受け継がれてきた盆の伝統行事に何が起きているのか。現場を取材した。
五山送り火は毎年8月16日の夜に行われる。京都盆地を取り囲む山々に「大文字」(左京区)、「妙法」(同)、「船形」(北区)、「左大文字」(同)、「鳥居形」(右京区)の送り火が順に点火され、盆に迎えた先祖の霊を送るとされる。
しかし気候変動により、近年は京都市近郊の山でも大雨が頻発。昨年は大文字山で火床が崩れた。また妙法の山では、シカの繁殖で下草が食べ尽くされて表土が流出する危険があり、京都五山送り火連合会の岩粼勉会長(77)は「シカの侵入を防ぐための柵を設置するなどの対策を始めている」と話す。
送り火を脅かすのは、これら自然環境の変化だけではない。関係者が最も頭を悩ませているのは、設備の老朽化だ。「送り火の設備」とは何なのか。「左大文字」の現場を訪ねた。
左大文字は北区の大北山に点火される。送り火の前日と当日には、金閣寺の門前で護摩木の志納を受け付けることでも知られる。
京都市の最高気温が40度近くに達した7月23日、左大文字保存会の岡本義行会長(75)の案内で急坂を登った。関係者以外立ち入り禁止の登山口に立つと右側に、はしごが連なったような装置が見えた。
この装置は運搬用ウインチレールだ。頂上部に取り付けるウインチがはしご状のレールに載せた台車をワイヤで引っ張り上げることで、まきや火床整備のためのセメントや石材を重さ150キロまで持ち上げられるのだ。
1991年にこのウインチレールができるまでは、50段以上ある階段を保存会メンバーが資材などを担いで登っていた。現在も横にある階段を実際に上ると、何も担いでいないのにすぐに汗が噴き出た。ほんの少しだけだが、先人たちの苦労がしのばれた。
作業の負担を軽減するウインチレールだが、設置から35年が経過して老朽化している。レールを支える支柱の一部がさびているほか、地盤の変化で所々浮いている。現在は逐次補修でなんとかしのいでいるのが現状だ。
保存会の岡本会長は「本来は更新しなければいけない時期に来ている。もう限界だが、費用の問題でできていない」と語る。
ウインチレール設置時と比べて、会員はさらに高齢化している。「火床までを考えれば一部の区間だが、ウインチレールがあって大変助かっている。これが使えないとなると…」。岡本会長の危機感は深刻だ。
こうした状況は、他の山でも同様だ。そこで京都五山送り火連合会はこの夏、クラウドファンディング(CF)に挑戦している。岡本会長は「山の現状を知ってもらい、少しでも協力をお願いしたい」と呼びかける。
CFは8月31日まで、京都新聞社が運営する「THE KYOTOクラウドファンディング」で受け付けている。
(まいどなニュース/京都新聞・浅井 佳穂)

