東京大学

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 日本でもっとも偏差値が高い学部学科といえば、東京大学理科三類(理三)である。大手予備校の模試などでは、医学部以外の一般的な難関私立大学で65程度。しかし、理三は70台後半から時には80にも及ぶから、いかに難しいかが分かろうというもの。合格の栄冠を手にした俊英たちは、いったいどんな幼少期を過ごし、どんな習い事をしてきたのか。受験期の子供を持つ親ならずとも気になるところではないだろうか。

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【写真を見る】東大理Ⅲ生の習い事 「3位は公文式、2位はピアノ」1位は?

「同世代の人口のうちトップ数百人に入る頭脳集団」

 東大理三が東京大学の中でもいかに別格な存在であるのか。7月に『東大理三の世界 日本一の天才集団にみた謎すぎる生態』(ダイヤモンド社)を上梓したばかりの教育ジャーナリストの庄村敦子氏はこう語る。

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「東京大学は1学年約3000人いるのですが、理三はその中の約100名だけ。いわば彼らは同世代の人口のうちトップ数百人に入る頭脳集団とも言えると思います」

 理三生は2年生までは教養学部生として過ごし、3年生からはほぼ全員が医学部へと進学することになる。

 少し解説すると、東大では2年生前期までの成績によって3年生以降の学部・学科が振り分けられる独自の「進学選択制度」(通称「進振り」)がある。入学した科類、例えば文科一類(文一)ならば法学部に進学しやすい、理三ならばよほどのことがない限り医学部へ行けるという傾向はあるものの、「進振り」で理三以外からでも医学部に進めないことはない。ただし――。

「これがかなりの狭き門で、500名を超える理二生のうち指定科類枠の医学部医学科進学の定員は10名だけ。文一、文二、文三、理一、理二の全科類枠は合わせて3名だけ。理三以外に合格したものの、どうしても医学部に行きたいという場合は東大に在籍しながら仮面浪人をして理三を再受験する学生もいます」(同)

東大入試に有利な「習い事」とは

 そんなレアな存在であるからこそ、庄村氏も東大理三生や医学部生に取材する機会をはじめの頃はなかなか得られなかった。ところが20年ほど前、東大理三合格者を取材したことがきっかけになって、これまで合格者やその保護者数十人から話を聞いてきたという。

 理三に合格するような学生たちは、さぞかし子供の時分からエリート教育を受けてきたのではないか。誰もがそう考えるところだ。今回の本の執筆に当たって、庄村氏が、理三生、医学部生、理三出身の卒業者限定でアンケートを取ったところ、「幼少期の習い事」について、以下のような回答があった。そのベスト3を紹介しよう。

「回答があったのは36人。まず3位は公文式で10人がやっていました。まず東大に入るには文系であっても2次試験に数学があるので、数学ができないと合格は難しい。文系の場合は数学の配点は80点なのですが、理系は120点と比重が大きいので、ここが合否の鍵になりやすいんです。ですから、公文式をやって、小さい頃から算数力が備わると、その後の東大理系の入試にはすごく有利になるんです」(同)

 それもできるだけ幼い頃からやらせることが重要だという。

「息子3人と娘1人、自身のお子さん全てを理三に合格させた教育評論家の佐藤亮子さんはお子さんに1歳頃から公文をさせていたと言います。幼い頃から公文をやっていると、中学受験塾に入った時点で、たいていは小学3年生の終わり頃には中学の数学が全て終わっていたりする。佐藤さんが経験談を講演などで話されていることもあって、公文式を習わせるご家庭は増えているのではないでしょうか?」(同)

芸術のセンスも身に付けてほしいので

 公文に続く習い事の第2位はピアノという結果に。

「16名の人がピアノを習っていました。直接受験とは関係ないように思われますが、楽譜を見て暗譜してなければいけないので、頭を使うんですね。指先を使うのは頭にいい影響を与えるとも言われ、賢くなるイメージがあります。親とすれば勉強だけではなく、芸術系でも何かひとつ習わせたいと思うのでしょう」(同)

 さて、気になる堂々の1位は――。

「子供には勉強や芸術ができるだけではなく、スポーツ系もやってほしい。そんな親の願いがあるせいか、1位は水泳の20人でした。水泳は男女ともに広く取り組まれているスポーツなので、アンケートをすると票数が上がるのかもしれません。また水泳は体力づくりに役立つ全身スポーツであるうえ、スイミングスクールが割とあちこちにあることもメリットです。これは公文式の教室でも同じことが言えますが、通いやすいんです」(同)

 幼少期に始めた水泳をずっと続ける学生も多いという。

「東大には全学部生が参加する『運動会〇〇部』と、理三と医学部生だけの『鉄門〇〇部』という部活やサークルがありますが、この鉄門水泳部の部員数が飛びぬけて多いです。50~60名はいますね。鉄門野球部が10名ほどしかいないのと比べると、その人数の多さがわかってもらえると思います」(同)

3つぐらいの習い事は当たり前

 12年前に雑誌『AERA』で、庄村氏が編集部と協力して東大生(全学部)を持つ父母35人にアンケートを取ったときも、1位は水泳、2位ピアノだったそう(ちなみに3位はサッカー)。東大に入るには、水泳、ピアノは必須科目と言えるかも。

 今回の理三・医学部アンケートでは、勉強系では公文式以外の幼児教室(たとえばECCジュニアとか)、習字、英会話、珠算、フランス語などが習い事としてあがった。公文式と他の幼児教室と合わせるとのべ33人と、教育熱心な家庭が多いことをうかがわせる結果となった。

 運動系は体操、サッカー、スキー、空手、少林寺拳法など。芸術、趣味系では絵画、バイオリン、囲碁、能楽などの回答があった。

「アンケートでは同時に4つ以上の習い事をやっていた人が10人いました。3つぐらいは当たり前でした。結局、勉強もできて、運動もできて、芸術系でもできるような子供に育ってほしいという親の願いがあるんじゃないでしょうか。ただ、みんながみんな、習い事をやっているわけでもなく、習い事ゼロという人もいました」(同)

やはり多いのは開業医の家庭

 こうした習い事は、水泳のように大学まで続ける学生もいるが、多くは「幼稚園から始めて、中学受験塾に行くようなるまで続ける人が多い」(庄村氏)ようだ。それにしても、これだけ習い事をさせるとなると、親の負担もかなりの額になるはず。

「よく言われているように東大生のご家庭は一般よりも平均年収が高いですから、習い事にはお金をかけられるのでしょう。取材経験からいうと、やはり多いのは医師のご家庭、それも開業医ですね。母子家庭や貧困家庭の学生もいます。世帯年収600万円以下だと東大は授業料が免除になるので、親が教育にお金をかけてくれずとも、自分の努力だけで入ってきたという学生もいます」(同)

 ただ、これだけ子供の頃から習い事をしているとなると、遊ぶ時間もなさそうで可哀想な気も。いくら理三に入って、前途洋々の未来が待っているとしても、もっと子供の頃は自由に遊べたほうが幸せだったりしないだろうか。

「医学部卒業の誰に聞いても、みんな『子供時代は楽しかった』と口を揃えて言いますよ。親がいつも褒めてくれたり、美術館や博物館、海外旅行など、いろんなところに連れて行ってくれたりしたと。つまり、愛情たっぷりに育ててくれたと言います。習い事も、本人が嫌がるものではなくて、楽しめるものをやらせてあげれば、心も豊かに育ってくるのではないかと思いますね」(同)

 東大理三に進学するために最低限必要なもの――。それはありきたりだけど、親の愛情なのかもしれない。

デイリー新潮編集部