「彼女がやった」ひき逃げ男のウソを暴いたのはAI相談履歴だった 拒否してもスマホは調べられる?
神奈川県内を普通乗用車で走行中、ひき逃げ事故を起こしたとして、男性が逮捕されました。逮捕された男性は当初、「彼女が事故を起こした」と供述していましたが、AIへの相談履歴からウソと発覚したそうです。
テレビ朝日の報道によると、男性は今年4月、交差点で軽自動車に衝突し、乗っていた30代の男性に軽いけがをさせながら、その場を立ち去った疑いが持たれています。翌日、警察署に出頭したものの、「彼女が事故を起こしました」と説明。
しかし、警察が男のスマートフォンを調べた結果、AIへの相談内容から事故の詳細などが判明し、嘘が発覚したそうです。
男性は容疑を認めているとのことです。犯罪をしていなくても、AIの相談履歴の中には他人に見られたくないものもあるでうしょう。警察が調べようとした場合、拒否しても無理やり調べられることになるのでしょうか。
●見せるのを断っても、令状で強制的に差し押さえられる可能性
まず、警察が持ち主に対し、「スマホの中身を見せてください」「任意に提出してください」などと頼むことがあります。この場合、見せるかどうかは持ち主の自由なので、断ることもできます。
持ち主から中身を見せることや提出を断られた場合、警察は次の段階として、スマホを強制的に差し押さえようとする可能性があります。
具体的には、警察が裁判官に令状を請求し、裁判官が認めた場合には、令状が出て差し押さえられます(刑事訴訟法218条1項)。
また、警察が、スマホを本人に操作されることで罪証隠滅を図る危険性が高いと考えた場合などは、最初から令状を用意することもあります。
なお、逮捕の場面なら、その現場で、事件に関係する物を令状なしに強制的に差し押さえることもできます(同法220条1項2号、3項)。
このように強制的にスマホを差し押さえられた場合、警察に持っていかれたスマホは解析が終わるまでは手元に戻らないのが普通です。
●中を調べるのと、ロックを解除させるのは別の話です
差し押さえた端末の中のデータを警察が解析することは、差押えの効力として行われます。端末の中を見るために、別の令状が要るわけではありません。
なお、スマホがクラウドと連携している場合、クラウド上のデータを見るためにはまた別の手続きが必要になりますが、本稿では割愛します。
これとは別なのが、本人にロックを解除させることです。パスコードは頭の中にある記憶なので、警察が教えるよう強制することはできません(憲法38条1項)。警察が本人に端末の操作に協力するよう求めることもありますが(刑事訴訟法111条の2)、本人がこれを断っても罰則はありません。
では、顔認証や指紋認証はどうでしょうか。顔や指紋は記憶ではなく身体の特徴なので、話すことを強いられないという理屈が、そのままは当てはまりません。無理やり指を当てさせることなどができるのかは議論があり、パスコードほどはっきりしていません。
●巻き込まれるのは本人だけではありません
男は「彼女が事故を起こしました」と話しました。もし本当なら、事故を起こしたのは彼女だということになります。
そうなれば、彼女が捜査対象となってしまいます。警察が彼女のところに行き、スマホの提出を求めたり、場合によっては令状をとったりすることになります。
今回の事件では、男から相談されたAIは、正直に話すよう答えていたそうです。そのとおりにしていれば、彼女を捜査の対象にするようなリスクを負わせずに済んだわけです。
小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)

