「外国人観光客や子連れ」より厄介…JR東海が明かした、乗客をイライラさせる「令和の新幹線2大トラブル」

■「お盆の新幹線」はなぜ荒れるのか
2026年もお盆の季節がやってきた。JR東海によれば、お盆期間の東海道新幹線の指定席予約席数は158万席で、昨年と同水準(7月23日現在)。混雑のピークは、下りが8月8日、上りが8月15〜16日ごろだという。
車内が混雑し、普段乗り慣れていない人も増えるこの時期。乗客同士の接触も増え、SNS上では「新幹線のマナー」に関する議論も相次ぐ。事実、JR東海広報部によれば、8月は、同社サービス相談室へのマナーに関する意見・問い合わせが最も多い月なのだという。
果たして現場では、どのようなトラブルが起き、どのような声がJRに寄せられているのか。最新の車内トラブルの傾向について話を聞いた。
■「マナーの悪い外国人」クレームは減少
マナーの話題になると、昨年からよく話題になるトピックが、外国人観光客に関するマナーだ。筆者が所長を務める調査サイト「鉄道トレンド総研」が2025年に調査したことによれば、駅や電車でマナーの悪い外国人を「見たことがある」という人は62.4%に上った。
しかしある時期をきっかけに、インバウンド絡みのクレームは減っているという。
「昨年の大阪・関西万博が終わってから、外国人利用客のマナーに対する問い合わせ・意見は減少しています。それも含め、サービス相談室に届く意見は、全体的に減少傾向にあります」(JR東海広報部、以下同)

万博期間中は、日本での新幹線利用に不慣れな訪日客も急増したはずである。万博が終われば、そうした乗客も減少し、トラブルの沈静化につながっていると考えられる。また、デッキにある荷物置き場を予約不要で利用できるようにするなど、臨機応変なルール変更が功を奏し、トラブル減少へよい効果をもたらした、と同社は見ている。
またここ数年、SNSやウェブメディアで乗車マナーに関する議論が活発に行われてきた。そうした情報に触れ、一人ひとりが車内での振る舞いを自覚的に意識するようになったことが、結果としてマナー違反の減少につながっているのではないだろうか。
全体的なクレームが減少傾向にある中で、「ここ1年で増加傾向にある」と同社が警戒感を強めているトラブルが2つある。
■車内で勝手に撮影するインフルエンサー
1つは、車内での「動画の撮影・配信」だ。近年、YouTuberをはじめとするインフルエンサーが増えたことで、車内で動画を撮影したり、生配信を行ったりすることへの意見・トラブルが増加しているというのだ。
実際に鉄道トレンド総研にも、「大声で喋りながら配信していてうるさい」という怒りの声や、「動画に自分の顔が映り込んでいるのではないか」という不安の声も届いている。
そもそも、列車内の撮影ルールはどうなっているのか。同社によれば「駅や車内では、営利目的の撮影は事前の許可が必要」としている。もちろん、みんなで旅行に行った際の、思い出のための動画撮影には制限がない。しかし「他のお客様へご配慮ください」と同社は呼びかけている。

■「座席を倒せない」「前の人が倒しすぎ」
もう1つが座席のリクライニング問題だ。鉄道トレンド総研の調査では、リクライニングを倒すとき、「声をかけてほしい」と思う人は52.3%、「必要ない」は38.2%となるなど、現代人を悩ます問題の一つとなっている。
こうした声掛けにとどまらず、JR東海に届く声としては、後ろの席の人が大きいキャリーケースを置いていて「リクライニングを倒せなかった」という話や、逆に「前の人がたくさん倒してきて嫌だ」というのもあるようだ。
リクライニングに関してのルールは設けられていない。声を掛けなければいけない決まりもなければ、座席を全力で倒してはいけない、という決まりもない。トラブルを回避する最大の答えは、結局のところ「お互いへの少しの思いやり」に尽きる。
同社によれば、基本的には乗客同士で解決をするのがベストだが、「困ったことがあれば車掌・乗務員に相談を」としている。
夏休みシーズンは、家族連れの乗客も増える。「子連れ」に関するトラブルや議論も、毎年この時期のSNSでは多く見られる。
週刊女性PRIMEが男女500人を対象に行った調査によれば、「新幹線でマナー違反だと思う乗客」の第1位は「子どもが騒いでいるのに親が注意しない」となった。この種のトラブルはどれほど起きているのか。
■「子どもがうるさい」苦情は目立たない
同社によれば「サービス相談室には、ほかのお客様がうるさいというご意見はたしかに届いています。しかし、それがお子様に限ってかというのは、そこまで判別できていません。大人の方に対するご意見もあります」とのこと。特段、「子供がうるさい」という声は目立っていないようである。
子どもなら、泣いたりぐずったりするのは避けられない。「騒いだ子供を注意しない親」にイラっとする気持ちもわかるが、子供が泣いたらデッキにすぐさま移動したり、申し訳なさそうにしたりする親御さんの様子もしばしば見かけるのも事実だ。
東海道新幹線では、お盆などの繁忙期には「お子さま連れ車両」も設定されている。利用者からは「周りもお子様連れなので、あまり気を遣わなくていい」と好評なのだとか。「子どもが泣いたらどうしよう」と肩身の狭い思いをしているパパ・ママを救い、同時に一般車両の静粛性を保つという、双方にとって理想的な環境作りといえる。
また、「お子さま連れ車両」は多目的室に近い12号車に設定され、授乳やおむつ替えがしやすい環境を整えている。
■「ベビーカーは畳む」が公式ルール
さらに子連れ関連で言えば、「ベビーカー」も議論に上がりやすいトピックだ。SNSを見れば「ベビーカーを置かれて困った」という声や、逆に「ベビーカーを置けずに困った」という声もある。ベビーカーのルールはどうなっているのか。

「ベビーカーは、畳んで収納していただくのが基本です。デッキにある予約不要の荷物置き場をご利用いただいたり、荷棚の上や、足元に置いたりしていただいても構いません。車両最後部には予約制の『特大荷物スペース付き座席』もありますので、心配な方は取っていただくことも可能です」とのことだ。
■泣き寝入り、直接対決よりプロに相談
ここまで、新幹線で起きている最新トラブルについて紹介した。乗客それぞれには事情があるのだから、思いやりを大切にして乗りたいところである。だが、それでも、周囲の乗客にイラっとしてしまったらどうすればいいか。
JR東海は、積極的に乗務員に相談することを進めている。「些細なことでも、相談してもらえれば、対応できることはいろいろあります」と頼もしい一言が返ってきた。
東海道新幹線の場合、車掌室は8号車にある。そこを訪ねるのもいいし、パーサー、警備員を含めれば、複数の乗務員が巡回しているので、声をかけるのでもいい。
自分たちで解決しようとすると、トラブルに繋がることもあるので注意したい。何を「マナー違反」と感じ、「注意すべきかどうか」の基準は人それぞれである。乗客同士では永遠に折り合いがつかないこともあるのだ。
感情的に注意してトラブルが深刻化したり、最悪、暴力事件に発展したりしては、楽しい旅が台無しだ。泣き寝入りや直接対決を選ぶ前に、迷わず乗務員を頼ることが、身を守る最善の防衛策といえよう。
また東海道・山陽新幹線では、10月1日から一部車両において個室タイプの座席「Supreme Class」を導入することを発表している。

個室であれば、静かに過ごしたい乗客はもちろん、仕事の電話やウェブ会議、動画撮影や配信も、周囲に気兼ねなく行える。トラブルを回避する手段として、こうしたサービスを賢く利用するのもひとつの手だろう。
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東 香名子(あずま・かなこ)
コラムニスト
鉄道コラムニスト。鉄道トレンド総研所長。メディアコンサルタント。外資系企業、編集プロダクション、女性サイト編集長を経て現在フリー。メディア出演多数。著書に『超タイトル大全 文章のポイントを短く、わかりやすく伝える「要約力」が身につく』ほか。
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(コラムニスト 東 香名子)
