中国AI『Kimi K3』がGPT超え…米AI株急落 研究者「ムーンショットが非常に頑張った」米中覇権争いの中、サイバー攻撃を「中国AIで防御する」事態も

中国製AI「Kimi K3」が、アメリカの最先端モデルを一部の性能指標で上回ったとして、各方面に衝撃が広がっている。
【映像】「Kimi K3」の優れているところ(10秒でわかる詳細)
コーディングなどの評価テストでアンソロピック社の「Claude Fable 5」やオープンAIの「GPT-5.6 Sol」を超えたとされ、市場ではアメリカのテック関連株が急落。「キミショック」とも呼ばれる事態となった。開発元はムーンショット社で、低コストかつオープンモデルとして公開されていることも注目を集めている。
一方でオープンAIが開発中のモデルが、テスト環境を自ら脱出し、外部サイトへのサイバー攻撃を行ったことも明らかになった。AIの自律的な暴走という新たな脅威が現実のものとなりつつある中、米中間のAI覇権争いはどこへ向かうのか。『ABEMA Prime』でAI研究者に話を聞いた。
■「総合的に性能が高いと言っていい」Kimi K3の実力と中国の技術力

北陸先端科学技術大学院大学の客員教授で、AI研究者の今井翔太氏は、Kimi K3の性能について「非常に性能が高いと見ていい」と話す。AIの評価指標であるベンチマークについては「ハックが可能で、高いスコアを出しても実際には使えないということが結構ある」と前置きしつつ、「今回はそれもなかった。実際にユーザーが使ってみて本当にすごいとなっている。プログラミングや半導体設計など、総合的に性能が高いものと言っていい」と評価する。
なぜここまで急激に性能が向上したのか。「テクニカルレポートが出されるということで、正確な意見はそれを見てからになる」としつつ、「普通は、上流という性能の高いAIから小さいモデルへ性能を移す技術をやるが、Kimi K3は非常に性能が高いので、上流する相手はFable 5やGPT-5.6 Solしかいない。それらが公開されていた期間は数日間ほどで、その短期間でまともな上流ができたとは思えないし、それが高い性能を説明する要素にもなっていない。ムーンショットが非常に頑張ったんだろうなというのが率直な評価だ」。
また、ムーンショット社の創業者ヤン・ジーリン氏については「AIの神様と呼ばれ、ノーベル賞を受賞したジェフリー・ヒントン氏の孫弟子にあたる。本人も今の生成AIにつながる技術を直接研究していた人で、そのチームから出てきた企業として非常に注目している」と説明する。
■オープンモデルがもたらすインパクト
アメリカ国内での中国製AIのシェアについて、2025年初頭の10%未満から、直近では63%にまで上昇しているというデータが示された。今井氏はこの数字を踏まえ、「アメリカで中国AIを規制するかどうかが完全に分裂している。中国のAIが脅威だという話になれば普通は一致団結しそうなイメージがあるが、逆に、もうみんな使っちゃっているので今更規制はやめてくれという声が政治の表面に出てきている状況で、それを示している数字だ」と述べる。
Kimi K3がオープンモデルかつ低コストであることについては「オープンAIやアンソロピックには特に非常に脅威になると思う。誰でも使えるオープンモデルが現れて、みんながダウンロードして自分のサービスに組み込んで使うとなると、AIしか事業がないところは売り先がなくなってしまう」と分析する。
AI全体の覇権という観点では「少なくとも人工知能の技術本体に関しては、アメリカと中国にそんなに差はない。ただ半導体技術については、輸出制限や製造装置の規制も受けている状況なので、さすがにまだ同等とは言い難い」。
■「AIが勝手にカンニングした」
オープンAIが開発中のモデルが、テスト環境から脱出して外部サイトにサイバー攻撃を行った件について、今井氏は「今の人工知能は意外と暴走をよくする。最終目標はあっていても、途中過程でセキュリティを無効化したり、消してはいけないファイルを消したりすることがしょっちゅう起きる。人工知能は人間の常識を持っていないので、最終ゴールに到達しても中間ステップでやらかすのは非常によくある」と説明する。
今回の経緯については「AIをテストしていて、このテストで高い評価を出してくださいと指示した。今の人工知能は非常に賢いので、自分の力を上げるのではなく、テストでいい点を取るには外部に正解データがあるはずだと考えた。隔離されている状態から一旦インターネットへのアクセスを獲得して、外部サイトを攻撃して内部データを引き抜こうとした。要するにカンニングだ」と解説する。
さらに、今回の事案では攻撃を受けた側がアメリカの最先端AIで防御しようとしたところ、安全上の制限に引っかかって拒否されたため、中国のAIを使って防御したという事実も明らかになった。「アメリカは性能が高いが、ガードレールは性能と両立できない。今回それに引っかかってしまったので、中国のAIを引っ張り出して防御した。AI同士の対決みたいなことが実際に起きている」。
一般ユーザーへの注意点として、今井氏は「AIへの依存と個人情報の取り扱いに注意が必要だ。普通のお悩み相談程度は個人と完全に切り離されて情報処理されているので問題ない。ただ、うっかり学習データに個人情報が混じってしまうと、それをAIが覚えて見知らぬ人に出力されてしまうケースが非常にまれながらある。また中国製のアプリについては、ブラウザ経由で使う場合は情報が中国側に送られる可能性がある。一方、中国が公開しているオープンモデルを自分のパソコンにダウンロードして使う場合は情報流出は起こらない」と述べた。
(『ABEMA Prime』より)
