アメリカのトランプ大統領がホワイトハウスの記者会主催の夕食会において、2028年の大統領選への出馬を“宣言”し、自身のSNSにも大量の関連画像を投稿している。アメリカ憲法では大統領の任期は最長2期8年と定められており、トランプ大統領の真意が注目を集めている。

【映像】大量に投稿された“再出馬”匂わせ画像(複数カット)

 ニュース番組『わたしとニュース』では、この発言の本気度や低迷する支持率、泥沼化したイラン戦争の現在地について、国際政治学者の三牧聖子氏とともに深掘りした。

■「トランプ2028」アピールに国際政治学者「人気あった頃は世論も真剣に…」

 13日連続で実施していたイランへの攻撃を停止した後、交渉が順調に進んでいるとの認識を示したトランプ大統領。イランに最初の大規模攻撃を行ってからすでに半年。ホルムズ海峡をめぐる状況は解決の見通しが全く立っておらず、11月の中間選挙が刻一刻と迫る中、支持率は低迷したままだ。

 こうした中、3ヶ月前の暗殺未遂事件から仕切り直しとなったホワイトハウスの記者会主催の夕食会が行われた。この夕食会では、大統領がジョークを交えたスピーチを披露する伝統があるが…。

「これはスクープだぞ。私はアメリカ大統領選に出馬する。もう一度出馬する。ありがとう、私はやるぞ」(トランプ氏の発言)

 さらに、「トランプ2028」をアピールする画像を自身のSNSにも立て続けに投稿。アメリカ大統領の任期は最長2期8年までと憲法で定められているが、本当にジョークなのか。

 次の大統領選の候補者として、トランプ氏と舌戦を繰り広げているカリフォルニア民主党のニューサム州知事は、「ドナルド・トランプはこの(中間)選挙を不正に奪おうとあらゆる手を尽くすつもりだ」と厳しく批判した。

 三牧氏は、トランプ氏による3期目への出馬アピールが持つ“意味合いの変化”を次のように指摘する。

「ジョークを期待される場で言ったということでジョークとして考えたいが、トランプ氏の発言はこれが最初じゃない。今まで何度も『3期目に挑戦する』と言ってきている。ただ、その時と今が違うのは、トランプ氏は(就任直後は)支持率が約5割とかなり人気があった。憲法に禁じられていても、これだけ人気がある大統領だからとアメリカ世論も真剣に受け止める向きがあったが、今はイラン戦争が響いて支持率も下がっているタイミング。2028年の大統領選は、憲法で禁じられいているので任期としても、そして支持率としても厳しい。ジョークとしてもあまり笑えない、どういう反応をしていいかわからない感じ」(三牧氏、以下同)

 2期目の就任直後には5割を超えていたトランプ氏の支持率は、イランとの戦闘の泥沼化によって、一時3割台にまで急落。その大きな原因として、三牧氏は泥沼化したイラン戦争をあげる。

■「一体何のための戦争?」ホルムズ海峡封鎖が生んだアメリカ国民のモヤモヤ

「(トランプ氏が掲げた)看板政策はが、関税政策、移民政策、そして戦争はしないと。今起こっている戦争を止めると言って支持されて大統領になったのに、新しい戦争まで始めた。やはりイラン戦争が大きく響いているのではないか」

 トランプ氏が戦争をしないと掲げたにも関わらず、新たな戦争を開始した上で泥沼化させている現状について、アメリカ国民の間にモヤモヤが広がっていると指摘。

「さらに自分で始めた戦争を終えることすらできない。そもそも戦前は閉じていなかったホルムズ海峡を再び開けるという現状への回復。一体何のために戦争したんだというモヤモヤ感がアメリカ国民には広がっている。アメリカは軍事的には圧倒していたはずだったが、戦略的には敗北したという見立てが強まっている」

■米兵の死者数を隠蔽?「命を軽視している」アメリカ国内で広がる批判

 トランプ氏は自身のSNSに、「イランとの戦闘でのアメリカ兵の死者は18人」と投稿し、他の戦争に比べて犠牲者が極めて少ないことをアピールしている。一方で、「アメリカ軍の被害状況を隠蔽しているのではないか」といった報道も出ている。これについて、三牧氏は…

「今月に入って新たに4名の米兵の死者が出た。ただ、トランプ氏が停戦を宣言した後にこの4名が亡くなったということで、犠牲者リストから一時的に外された。やはり犠牲が出たことに批判があるから外したということなのだろうが、そういう不誠実な説明の仕方、さらに批判されてまた戻す。アメリカ軍の犠牲の規模や受けたダメージなどが、適切に国民に説明されていないのではないかという不満や批判も高まっている」

「トランプ氏のこれは本当にやってはいけない例。やはり犠牲者1人1人に命がある。そして今回の戦争に関しては、そもそも開戦当初から支持率がとても低い。国民はこの戦争は正しい戦争だと思って開始した戦争ではないので、『ほかの戦争に比べたら犠牲者が少ないじゃないか』という正当化する仕方は、大統領、軍の最高司令官として適切ではないと思う。アメリカ国民も、そんな1人1人の命を軽視しているのかと。こんな大義も目的もわからない戦争で亡くなった人たちのことをどう考えるのか、と批判が高まっている」

ネタニヤフ首相からの「継続要請」と中間選挙を控えたトランプ氏の岐路

 兵器の消耗、基地の破損、そして何より米兵の犠牲が増え続ける中、イスラエルのネタニヤフ首相が訪米。トランプ大統領に対し「イランを叩ける千載一遇のチャンスだ」と、戦争の継続を強く訴えかけたという。あくまで戦争の継続を求められている状況について、三牧氏は、トランプ大統領が試されていると指摘する。

「こうした発言をすることは来る時からわかっていたが、最終的にアメリカの大統領はトランプ氏なので、トランプ氏がもう戦争をやめてほしいと、国民の声や、兵力が持たないという現場の声をきちんと尊重して終戦に向かうのか、それとも、またネタニヤフ首相の誘いに乗ってしまうのか。トランプ氏が問われている局面」

「やはり中間選挙を見据えて、これだけ被害が出ている状況は国民に明らかにしたくない。でも今はSNSもあるし、政府がいかに隠蔽しようとしてもわかってしまう。そうなると、わかってしまった事実と、さらにこの事実を政府が隠蔽しようとしたという2倍の怒り、不信になってトランプ氏に返ってきてしまう。そのため、まずは国民にいろいろな負担を強いているので、透明な責任は当然、この戦争をどうにか終戦させる。覚書はかろうじて生きていて、イランの方だって戦争をやめたい事情はたくさんあるので、この覚書をまた交わさせて、中間選挙のタイムラインに間に合うようにどうにか終戦させていく。それが今大統領には求められている」

(『わたしとニュース』より)