セレブ=高級品をあげればいい…と考えるのは甘かった

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 事業を成功させたい一心で、富裕層の会食に飛び込んだ若き経営者。しかし、そこで目の当たりにしたのは、庶民とはかけ離れた金銭感覚と、洗練された「手土産のお作法」だった。「手ぶらで行って浮いてしまった」「ご馳走になったお返しに、一体何を渡せばいいのか分からない」「そもそも富裕層と付き合う必要はあるのか?」……。頭を抱える男性に、富裕層のリアルなライフスタイルや価値観に詳しいファイナンシャルプランナー(以下FP)の山口京子さんが、教科書には載っていない「富裕層の心を射抜く手土産術」と、「富裕層ネットワークがもたらす真の価値」を伝授する。

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 半年前に独立してAI関連の事業を起こしたばかりの有人さん(38歳・男性、仮名)は、苦笑交じりに振り返る。人脈作りのため、大学時代の友人の紹介で年収数千万円〜数億円クラスの経営者が集まるホームパーティに参加した。

セレブ=高級品をあげればいい…と考えるのは甘かった

「まず、そのマンションがものすごく豪華でした。エントランスは見たことないくらい天井が高いし、ドアが何重にもなっていて、そのたびに部屋番号を押さなきゃいけない。コンシェルジュの若い女性がふたりと、スーツ姿の年配の男性が迎えてくれました。エレベーターまで迷いそうなくらい広くて、中庭まで見える。これがホテルライクってやつか、とビックリしました。お部屋に到着すると他の参加者が『これ、よかったら皆さんで』と、さりげなく上品な手土産を主催者に渡したんです。紹介者の友人も涼しい顔でワインを手渡して……。手ぶらで来たのは僕だけでした(苦笑)。『あー、こういう感じなんだ……』と恥ずかしくなっちゃいました」

「こんな場は最初で最後かも」と開き直った有人さんは、大学時代にさんざん飲み歩いて得た、ワインとウイスキーの知識をフル活用し、他の参加者のお酒をサーブ。終始、明るいテンションでホストをサポートすることに徹した。

「それが気に入られたのか、後日、ある年配の経営者の方に『今日空いてる?』と誘われたんです」

 どうやら会食の欠員が出たらしく、つれてゆかれたのは、高級ウニやキャビアがひたすら出てくる会員制の飲食店だった。1人十数万円はかかりそうだった、という。

「一瞬、『払えるのかな』と焦りましたが、相手の方がさらっとおごってくれました。感謝しつつも、それはそれでパニックです。なんと今度は会社のほうにも招いてくださるそうで……。次に会う時までにお礼を考えなくてないけない。でも《セレブ 手土産》などとネットで検索すると、すごいものばかり出てきます。『村上開新堂』とかいう紹介者がいないと買えない店などは、クッキーがメルカリでひと缶1万円。そんな入手困難なものを用意できる気がしないし、どうしたらいいのか……」

 有人さんは、身の丈に合わない付き合いで散財してしまう恐怖もあり、「そもそも富裕層と付き合う意味はあるのか」と悩んでいる。

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「まず知っておいてほしいのは、『村上開新堂のクッキー』『空也の最中』『小ざさの羊羹』といった、紹介制の店や行列店の手土産は、富裕層コミュニティの中では“おなじみ”であること。お金もキャリアもない若手が、無理をして珍しいものや高価なお返し対決を挑んでも、100%勝ち目はありません。消耗するだけですからやめておきましょう」

 数多くの富裕層と親交のある山口さんはそう語る。

「そもそも、あなたにご馳走してくれたお金持ちは、見返りなんて1ミリも求めていません。『ホテルのスイートを取ったから、ワイン会でもやろう』『美味しいお寿司を若い奴にご馳走して喜ばせよう』という、単なるエンタメやシェアの感覚でやっているだけ。ご馳走されたら、大喜びしておいしくいただき、手土産の代わりに、情報提供をするのが若手の役割です。同等の金額でお返ししようと焦って散財する必要はまったくないのです」

 では、お金をかけずに富裕層の心を掴み、感謝の意を伝え、「できる男」と一目置かれる手土産とは何なのか。山口さんは3つのアイデアを提案する。

富裕層の心を射抜くアイデア(1) 高級日用品×ストーリー

 お金持ちは何でも持っているので、消えモノの日用品で高級なものがおすすめ。

「そこに“若い世代だからこそ仕入れられた“ストーリー”がついていると、なおいいですね。『ほかの経営者から教えてもらった、寝起きでもキスができるお口さっぱりの歯磨き粉』とか、『表参道のカリスマ美容師が薄毛で悩む自分におすすめしてくれた』1万円のシャンプーとか……」

 山口さん自身は、とある有名投資家に、パッケージに本人の写真が入ったドリップコーヒーをオーダーしてプレゼントしたことがあるという。

「大ウケして取材先やファンに配りまくっていましたよ。『自分のために時間を割いて考えてくれた』という気持ちが伝わることが何よりのプレゼントです」

 関西で有名なカリスマ実業家のマダムは「いつも面倒を見ている若い子に、自分自身のアクリルスタンドを作ってもらった」と喜び、自分のショップにずっと飾っているそう。この場合は、お金をかけなくても、慕う気持ちを表現し、手間をかけることで喜んでもらえたようだ。

富裕層の心を射抜くアイデア(2) ギャップ体験のプレゼント

「普段、高級料亭や和牛鉄板焼きなどに行き慣れている富裕層ですから、値段が安くても相手にとって『未知の場所』へ連れて行くのも最高のお返しです。店主のうんちくが面白い月島の庶民的なもんじゃ焼き屋や、『モンゴル旅行に行ったそうですね』と神楽坂にある隠れ家的モンゴル料理店に誘う……。お金のない若者ならではの場所を発掘してみましょう」

 本当の富裕層が足を踏み入れたことがないような「若者が行くクラブ」や「場末のスナック」、「安くてうまい立ち飲み、せんべろ、角打ち」や「行列のラーメン店」なども面白がられるもののようだ。

富裕層の心を射抜くアイデア(3) ターゲットを愛犬・愛猫に変更

 手土産のターゲットを、相手の愛するペットに変えるのも一つの手だ。

「例えば猫なら、本革と鳥の羽でできた3000円の『高級猫じゃらし』なんてのもいいですね。猫じゃらしってすぐに壊れてしまったり、飽きてしまったりすることもあるので、お金持ちでも高いものはなかなか買いませんから」

 例えば相手のペットの写真をもらって、ポーチやカレンダーなどのグッズを作るテクも喜ばれそうだ。

そもそも「富裕層と付き合う意味」とは

 最後に、有人さんが抱く「つられて散財しそう。無理して富裕層と付き合う意味はあるのか」という疑問に、山口さんは力強くこう答える。

「桁違いの金銭感覚に圧倒されるかもしれませんが、お金持ちならではのマインドには学ぶべきことがたくさんあります。彼らのビジネスの視座やスピード感、お金を貯めこもうとするのではなく活用し増やしていくセンス……。それらを肌で感じながら、『使った分、もっと稼がなきゃ!』と、自分の限界を突破する強いモチベーションとしてはいかがですか?」

 お返ししなくては、という感覚にさいなまれる必要もないという。

「お金持ちは頑張っている若手起業家を応援し、次の面白い人脈やビジネスチャンスを紹介するのが大好きなんです。気持ちよくご馳走になりながら、仕事で結果を出すことで恩返しすることを考えましょう。見栄を張って財布を空にするのではなく、知恵とセンスを絞って富裕層の懐に飛び込んでみて!」

※プライバシー保護のため、記事中の事例は、具体的な状況の一部を変更しています。

今回のアドバイザー/山口京子(やまぐち・きょうこ)さん
1966年名古屋生まれ。金城学院大学卒業。大学在学中から、テレビ・ラジオに出演。2000年にファイナンシャルプランナーの資格を取得。のべ2,500組以上の家計相談を受け、お金と人生の悩みを解決に向けてサポートしてきた。また、家計管理、貯蓄・資産運用のプロとして、金融庁、証券業協会、東京証券取引所の講演会にも出演。2024年には、「KOKUSAIには愛があるプロジェクト in あいち」のメインキャラクターに。『お金も人生も薔薇色!老後計画』(主婦と生活社)など著書多数。

取材・文/鷺島鈴香

デイリー新潮編集部