【インタビュー:前編】黒夢、リテイクアルバム『Drug TReatment 2026』『CORKSCREW 2026』完成「人生の流れを確認することができるような作品」

黒夢が7月15日、自身初のセルフカバーアルバム『Drug TReatment 2026』『CORKSCREW 2026』を2作同時リリースした。オリジナルとなる『Drug TReatment』(1997年発表)と『CORKSCREW』(1998年発表)は、1997年から1998年にかけて約230本という圧倒的本数のライヴを敢行するなど、1999年1月に無期限活動停止した黒夢の最も剥き出しな攻撃性と破壊的で刹那的な疾走感を極めていた時期に産み落とされたアルバムでもある。代表作とも言える2作品が約30年の時を経てリテイク(再録)された『Drug TReatment 2026』『CORKSCREW 2026』は、当時の黒夢の最終形がさらなる進化を遂げて現代版にアップデートされたものだ。
そしてリリースされた『Drug TReatment 2026』『CORKSCREW 2026』はアルバムランキングで1位と2位を独占するなど、好リアクションを獲得。そのサウンドは、オリジナルの曲構成のまま、敢えてアレンジを加えずにリテイクされた楽曲の数々に、約30年という年月に培われた黒夢の今が浮かび上がった仕上がりだ。“原曲からキーが上がった” “テンポが上がった”など、もともと突進力の高いパンキッシュなナンバーがさらに研ぎ澄まされたことも話題だが、注目すべきは、当時を凌駕する現在の黒夢の精神性と音楽性の高さにある。BARKSでは前編と後編に分けて、清春と人時のロングインタビューをお届けしたい。前編では『Drug TReatment 2026』『CORKSCREW 2026』の深部に迫る。
◆ ◆ ◆
■バレーボールにたとえるなら
■球筋や威力、チームプレイの全部が奇跡
──『Drug TReatment 2026』と『CORKSCREW 2026』という2作のリテイクアルバムが完成したばかりの今の手応えはいかがですか?
清春:どうですか、人時さん。
人時:“ああ、よく頑張ったな”というのが率直な気持ちですね。いい思い出ができたという感じかな。最近やっとマスタリングが上がって納品した記憶があるので、本当にギリギリまで根を詰めて完成したアルバムです。トータルとして清春さんの歌がすごくいいなと思いながら、ミックスを聴いていました。
清春:あらら。
人時:冗談抜きの率直な感想です(笑)。

──清春さんはいかがですか?
清春:手応えはわからないけど、今回黒夢がリテイクアルバムをリリースするっていうことに気づいて、聴いてくれる人がいるわけじゃないですか。当時のファンの人たちもそうだし、これまで知らなかった人も。オリジナルのリリースから30年ぐらい経ってるので、時の流れをわかりやすく目印にできる作品になったという感じでしょうか。
──目印ですか。
清春:聴いてきた人たちの人生とか、大人になってしまったこととか。このリテイク作品を聴いてるってことは、今でも大人になりきれてない部分があるということですからね。当時聴いてたけど、今回の作品を聴かない人もいるでしょうし、逆に当時聴かなかったけど、今回新たに聴く人もいるでしょうから、そういう意味では、いろいろな人の人生の流れを確認できるようなアルバムなんでしょうね。
──なるほど。ユーザーにとってこの30年間を確認できると。黒夢自身にとってはいかがでしょうか。
清春:僕らには確かな30年前があって、若いアーティストには30年後がある…かもしれない。っていうことの違いが明確になったアルバムなのかな、という気がしています。20代とか30代ではこの類のアルバムは出せないし、僕らくらいの年齢の人でもこういう作品をリリースすることが可能ではないアーティストがたくさんいる。やれるかやれないかという状況やポテンシャルも含めて、いろいろなことがわかりやすく露呈するアルバムじゃないかな。その人がどういう人生を歩んでいるか。……っていうような総合的な話でまとめさせていただいて、今日の取材は終わりってことでいいですか(一同笑)?
人時:今の話で終わったら面白いな(笑)。

──すごくいいお話でしたけど、ここで終わらせるわけにはいきません(笑)。今回のリテイクアルバム2作品にはスタジオ盤であるにもかかわらず、ライヴ盤のような凄味が感じられて、“最高!”のひと言で簡単に表現できない密度の濃い内容になっていると思います。『Drug TReatment』と『CORKSCREW』には’90年代のオリジナル盤が存在するわけですが、2026年の今、録り直すにあたって、心がけたことはありましたか?
清春:まったく新しいバンドの新譜だとしても、カッコいい作品だと思うんですよね。でも、そこにリリースから30年という尾ひれがついてくる。オリジナル盤があるなか、今回僕らが何をやったかというと、基本的にはノーアレンジ。やろうと思えばイジることもできるんですけど、今回、曲の構成とかキメにおいてアレンジはしてない。
──当時の曲構成のままということですが、なぜそうしたのでしょうか。
清春:僕らは、黒夢以降もお互いに違う現場で休むことなくプレイしてきたので、結果、そのことがすごく出てるのかなって気がします。黒夢の10数年前の再始動とかその活動も含めて、今の我々がやるとこうなるってことが。黒夢の活動がない間に、人時さんが釣りしかしてなかったならこうならなかったでしょうし、僕もフラフラしてただけだったらこうならなかった。お互いのタフで強靭なところが出て、ソリッドな仕上がりになった。やっとまともなバンドサウンドになった感じはするかな。
──では、レコーディング自体はスムーズに?
清春:緻密に綿密に作った感じはしないけど、いろんなことを考えながら、制作の途中段階では“もうちょっと”と思ったりもしました。リリースに間に合うか間に合わないかしかなかったですからね、最後は(笑)。
──人時さんはいかがですか? サウンド的な突破力とか突進力を感じさせる仕上がりになっていると思うのですが。
人時:オリジナルアルバムとされている2枚は、当時の新曲としてレコーディングしたわけじゃないですか。清春さんが「こんなのができたよ」って作ったデモがあって、その譜面があって、それに対してどうバンドアレンジしていくかっていう作業をして、制作したのがオリジナルアルバムで。そこからライヴの場でその新曲の演奏を重ねていくわけですよね。『CORKSCREW』に関しては当時120本近くのツアーをやりましたし。そうすると、“ライヴを経てこうなっていった”という曲の形が出来上がっていくんです。そこから黒夢は活動休止に入るんですけど、10数年前の再始動時にもライヴでやったし、去年の再始動時のライヴでもやってきた曲だから、2026年に生まれた新曲とはわけが違う。当然、身体に染みついてて、剥ぎ取ろうと思っても剥ぎ取れないようなものにはなってるんです。サウンド的な突破力とか突進力という意味では、そこは大きいんじゃないかな。
──納得です。清春さんのおっしゃった30年という「時の流れ」ですね。
人時:リテイクという話が最初に出た時に、プレイヤーとしては“曲構成から構築し直す?” “プレイもリアレンジする?”とかってことが頭をよぎったんですよね。最初は“昔の音源と比べられたくない”みたいな気持ちもあったんですけど、清春さんがさっき話したように、そういことではなくて。曲はほぼオリジナルの状態で、細かな違いはあれども基本の骨組みは変えないっていうスタートになった。そうしたら、結果論かもしれないけど、ライヴで培ったものが形としては出たのかなって感じてます。

──今回リテイクするにあたって、オリジナル音源を振り返る機会もあったと思うのですが、当時の歌や演奏についてはいかがでしたか?
清春:シビれますね(笑)。本当にシビれます。
人時:ははははは!
──それはプラスorマイナス、どちらの意味なのでしょう?
清春:いやまあ、当時の自分は何度もこれをチェックしてOK出してたんでしょうからね。その事実にシビれます。シンプルに声も出てなければ、ピッチもリズムも滑舌も全部悪い。全部よくないですね。ただ何て言うんでしょう……嘘をつくのが上手かったんだな(笑)。歌えないんだから嘘をつくしかなかった。
──それもひとつの技だったわけですよね。
清春:そうだね。それは僕が今振り返って思うことで、当時はそう思ってなかったんだけど。それしか出来ないから、本当のことを言ってもなかなか信用してもらえないので嘘をつこうみたいな。嘘をつこうというアイデアはあったのかな、嘘をつけたっていうのはすごいなっていう。それが変に清春っていう人の歌のイメージになった。まぁ今の僕がみるとヘタな嘘なんですけどね。

──興味深い話です。それがリテイクアルバムでは?
清春:今はもう、バレーボールにたとえるなら、サーブ、レシーブ、トス、スパイク、その威力やスピードや球筋、チームプレイの全部が奇跡。こっそりネット越しに入れたりとか、そういう嘘はついてない。同じ人間とは思えないぐらい。“歌い方が変わった”なんていうレビューをたまに見かけるけど、“変わってるわけがないよ”とお伝えしたいですね。ちゃんと歌というものを知っただけだということですね(笑)。
人時:ふふふふ。
清春:ただ、聴いてる人の、昔のいい思い出には勝てない前提。でも、本人はヘタな嘘だったんだと思います(笑)。

■今回のリテイクはより生といえば生
■今の等身大に近いもので表現した
──人時さんはどうですか? 当時の黒夢サウンドに関しては。
人時:部分的に歌とかベースがどうとかっていうのはあるんだけど、それよりもトータル的に『Drug TReatment』も『CORKSCREW』も、音源になった時の質感が極端なんですよ。尖った部分をより尖らせたようなミックスをしてるから。
──当時、どうして尖らせたんでしょう?
人時:『Drug TReatment』だったら“より生々しく”というのがキーワードで。それは、ひとつ前のアルバム『FAKE STAR ~I’M JUST A JAPANESE FAKE ROCKER~』(1996年発表)みたいに打ち込みが多用されたデジタルサウンドの対極に行きたがっていた時にできたのが、『Drug TReatment』だったから。それで、より生になった『Drug TReatment』をさらに昇華させて、よりハードでアグレッシヴになったのが『CORKSCREW』だっていうのが僕の見解で。両方とも“音質・バランスのすべてが素晴らしい”というものではないと思うんです。“聴感上、エゲつないところにいきたいよね”っていうミックスの仕方だから。極端なことを言うと、『CORKSCREW』ではそれをさらに尖らせて“全部歪んでるじゃん”みたいな。だから今聴くと“なんじゃこりゃ”ってなる。
清春:うん、オーバーになってたよね。
人時:そう、とてもオーバーアクションな感じ。それが功を奏してる部分も当然あったと思うし、当時のひとつの手法ではあったんですね。だけど、「今、それをやりますか?」って聞かれたら「うーん?」って悩みますね。それをやることは現代の技術ではたやすいんですよ。だけど、さっき清春さんが嘘って表現したけど、今回はそういうものではない。今回のリテイクは、より生といえば生だし、今の等身大に近いもので表現することができたかな。

──まさに今の黒夢ですね。
清春:当時は虚言が多かったからさ。
人時:ははは!
清春:ただ、たしかにオーバーアクションだったけど、それが他のアーティストからすると“なんじゃこれ”って変わったものに見えてたと思うんですよ。“こんなに激しいことをするんだ!?”とか“ヴィジュアル系だったのに!?”とか、当時のメジャーシーンでの存在感も含めてね。サウンドに関して言うと、いろいろなものを表現するのが黒夢だった。僕は音楽的なことに関して自信がなかったので、自信がないなりに人と違う技を使いたいと思うことが多かったのと、自分がどういう歌を歌って、それがカッコいいかカッコ悪いかってことを見極める判断力が少なかった。一方でその判断力は、年を取ると鈍るという一般論もあるけど、出来なくなっていくんじゃなくて、判断が違うんですよね。
──なるほど。
清春:『Drug TReatment』も『CORKSCREW』も、僕らの20代当時に出しておくことができたということが素晴らしい。今の若いバンド、20代でもめちゃくちゃ上手いし、ちゃんとしてますね。……そう考えると、この2作品は何だったんだって思うんですけど(笑)。
──先ほど清春さんご自身がおっしゃったように、黒夢はいつもセンセーショナルで、存在としてもバンドサウンドとしても異質で刺激的でした。
清春:黒夢は違う部分でも刺さってたのかもしれないね。在り方というか。二人組なのにロックだとか、歌詞とか曲自体とかが刺さるような。今、普通に当時のオリジナル音源がSpotifyとかで流れてきたら、“なんじゃこれ! この音ヤバ!ヒド!”ってなると思う。時代だなっていう。

──当時のシーンは、耽美な世界観を追求するヴィジュアル系バンドが多いなか、黒夢は作品リリースのたびにカメレオンのようにコロコロと表現を変える人たちという印象でした。『Drug TReatment』と『CORKSCREW』には、パンク/ハードコアもやるんだ!?という驚きがあったんです。
清春:音楽がオリコンチャートに支配されていた’90年代のメジャーシーンって、“どうやったら売れるか”がすべてだったんだよね。たとえば、“どういう曲がシングルとして1位を獲るのか”とか“アルバムにはシングルが何曲入ってたら売れるのか”とか“どういうタイアップが効果的なのか”とか。他にも、“誰が先にアリーナでやるのか”とか“誰が雑誌の表紙になる”とか“誰が先にMステに出る”とか、そのくらいの競い合いでしかなかった。音楽ビジネスの中のバンド部門で誰が先頭に立って、そのバンドが他のジャンルと背比べできるか、そういう物差しの上でのせめぎ合いだったと思う。だからこそ、僕らのような当時のバンドたちも一般層に認知されたと思うんですよ。今のバンドよりも一般層に認知されているのはそういうことで。
──CDが何百万枚売れるとか、そういう時代でもありました。
清春:当時はいかにオリコンの中で上位に行けるか。いかにカラオケでたくさん歌われるか。僕ら世代の曲ってそういう世界にいた。だけど僕らは、そういう人気比べみたいなムーブメントからかなり早めに離脱しようとしていた。といっても、黒夢って当時メジャーで4~5年しかやってないので、最後の2枚で離脱した。『Drug TReatment』と『CORKSCREW』はそういうアルバムだったね。
──はい。人時さんの言葉を借りれば「尖った部分をより尖らせた」ようなアルバムです。
清春:『FAKE STAR ~I’M JUST A JAPANESE FAKE ROCKER~』はまだその途中にあったアルバムで、離脱しきったのが最後の『CORKSCREW』だったよね。で、黒夢はクラッシュした。今思えば、これを4~5年でやってたというのがすごい。年食った今だと、5年なんてめちゃくちゃ早く経つんですから(笑)。

──メジャーにいったバンドはマイルドになったりソフトになっていくのが通常でしたが、黒夢は尖り続けながらセールスを上げていたこともすごいです。
清春:世界レベルで見たら当時のせめぎ合いって、どうでもいいことだったと思うんですよ。でも、その時の僕らにとってはそれが大事だったし、今の日本の音楽シーンのある一部の人たちにとっても、大事なことだよね。今はフェスがあって、それが音楽番組とかセールスチャートと同じくらいの影響力を及ぼす世界もある。“あのフェスに出たほうがいい”とか“出るんだったらいい時間帯に大きなステージに出たほうがいい”とか。ツールが違うだけで、やってることは変わらない。そうだからこそ、どこにも属さないアーティストがいてもいいんじゃないかなって思うんです、どの時代にも。そういう黒夢を象徴した2枚を今、新たに録ったんだという感覚はありますね。それを俯瞰してみることもできているし。さっきも言ったように、成長した人たちがまた今回のアルバムを耳にしてくれているっていうことは、そういう人生を送ってきたということで。ということは、当時の僕らの影響力が強かったということなのかなって。だからヒット曲を録り直してるだけではない。
──おっしゃるとおり、’90年代は今では考えられないくらいにシングル曲がもてはやされていましたよね。アルバムも“このシングルが入っているから買う”みたいな飛びつき方をしていた人も多いはずで。今回のリテイクにあたって、シングルベスト的なものを1枚出そうということにはならなかったんですか?
清春:うん、それも考えましたね。
──ではなぜ、それをやらなかったのでしょう?
清春:いずれやってもいいと思ってるんですよ、やってないことのひとつとしては。活動歴が長くなると、やってないことって減っていくじゃないですか。昔のメーカーからベストアルバムが何枚かリリースされてたりもした。で、復活ライヴをやったり、復活ツアーをやったり、10数年前には2枚の新しいオリジナルアルバムを作ったし、ライヴDVDも出した。そして去年、また再集結ライヴをやった。で、今回は僕らの意思で2枚のリテイクアルバムを作った。今考えると、そういう手順の踏み方が大事なんです。
──順番ですか。
清春:普通だったら、10数年前、僕らが新譜(アルバム『Headache and Dub Reel Inch』とアルバム『黒と影』)を出したタイミングで、リテイクをやっててもおかしくないよね。なんなら、その時点でシングルベストみたいなアルバムをリテイクで出すことも、普通のバンドだったらあり得る。だから、気が付けば僕らは順番が逆なんです、先に新譜を出して、次にセルフカバーアルバムを出して、そして今後シングル曲を録り直すこともあるかもしれないっていう。普通は活動に勢いを出したいから逆の順番だよね。僕らは、そういうものすべての逆をいってる。

──たしかに。
清春:『Headache and Dub Reel Inch』と『黒と影』はいいアルバムですよ。「ミザリー」「アロン」「Heavenly」「ゲルニカ」とか、音楽的には『Drug TReatment』や『CORKSCREW』の頃よりも遥かにいい仕上がりだと思ってます。でも、そこから10年経って、体力が衰えた頃に、この2作品のリテイクを出すっていうのが、僕には面白い(笑)。
──リテイクの内容、だいぶ激しいですし。
清春:激しいですよ。オリジナルよりもテンポもキーも上がってる。でも、今の僕らにはそれができるんです。ただ、永遠にできるわけじゃないから、今やっておこうっていうのがある。新曲なんて要らないもんな、Guns N’ RosesもMötley Crüeも(笑)。

■新しくしたいと思ったことがすごい
■それを聴いているあなたたちもすごい
──「永遠にできるわけじゃないから、今やっておこう」っていう清春さんの言葉がありましたが、人時さんはいかがですか。
人時:「体力があるうちに」っていうのは、まさしくそうだと思うし、今回僕がリテイクアルバムを作ってる途中で感じたことは、自分たちの意思で出すものとして考えた場合、“もしかしたら、これが黒夢としての最後の作品になるかもしれない”ってことで。たとえば仮に、僕がこの世から去るとしたら……もちろん、そういうことがないに越したことはないけど(笑)。仮にそうなった時に、僕の遺作となるだろうなって思っちゃったんです。
清春:うんうん、あり得るね。僕もそうだし。
人時:年齢的なことを言うのはあれだけど、あり得るなと。この先のヴィジョンとか、たとえば今から東京ドームを目指そうぜとか、黒夢はそういうことじゃないし。その都度その都度、ちゃんとやっていかないとダメだよなって、レコーディングの途中で思いました。
──そういう覚悟によって、これまでとは変わったことも?
人時:僕はいつも、ミックス作業にそこまで入り込まなかったんですよ。“録ったらおしまい”みたいな感覚でずっとやってきたけど、今回は違った。というのも、歌やミックスをチェックする時にめちゃくちゃ足掻くんですよ、清春さんは。“足掻く”って言い方は悪いですけど。
清春:はははは! そうですね。僕は最後まで足掻きますね。

──締切ギリギリまでやるという意味ですか?
人時:もはやギリギリという概念じゃない(笑)。当然だけど、とことんこだわるんですよ。そういう清春さんを昔から間近で見てきたはずなんですけど、今回は一層それを感じたんですね。そうなった時に、“録った。後は任せた”みたいな感覚で手を放すのがいつもの僕だけど、今回は“遺作になるかもしれない”という思いもあったので、メーカーさんには悪いけど、発売延期になってでも、最後の最後まで“本当にこれでいいのか”って自問自答しました。今さら勉強したってわけではないんですけど、個人的には“場の雰囲気を見ながら足掻くってことが大事”って感じた2作品なんです。それは今までの自分になかったものです。
清春:さすがにもう同じもの録れないからね。
人時:それぐらいの感覚にはなりましたね。
──人時さんが足掻いたのはどの部分ですか?
人時:僕自身のプレイじゃなくて、作品としてのトータル的なところですよね。各楽曲のミックスで「どうしようか?」ってなった時に、これまで僕はあまり口出ししなかったんだけど、細かいところが気になって。もちろん清春さんも「ああしたい、こうしたい」っていうのは当然あるんですね。今回僕は“リーダー”とか言われてますけど……。
清春:そう、リーダー。
人時:でも、そのさらに上にプロデューサーっていう存在もいますから。
──清春さんですね(笑)。
人時:まあ、それは冗談として(笑)。ミックスに立ち会ってエンジニアさんといろいろ話したり、キックの音色、空気感の奥行き、ローが溜まる/溜まらないとか、本当に細かいところまでチェックしていって、やっと完成した。最後の2~3日は本当に地獄のような日々でしたよ。だから足掻いたっていうよりも、真摯に向き合えたっていう充足感があります。

──素晴らしい作品が完成したことがひしひしと伝わってきます。このタイミングでぜひうかがいたいのですが、清春さんは人時さんのベースを、人時さんは清春さんの歌を、今回の再集結やレコーディングを通してどう思いましたか?
清春:僕はすごいと思いますね、人時さんのベースって。あの速さで、ピック弾きで、あれだけ動くことができる。それを普通と感じさせるところが、またすごいんでしょうね。YouTube動画(おきるねるきよはる)でも言いましたけど、実際、有名なバンドのベースの人も人時さんのベースは物理的に弾けないわけですから。もちろん素晴らしいのは速い曲だけじゃない。
──プレイヤーとして素晴らしいと。
清春:楽器プレイヤーで出来ないことが多いのって、ミュージシャンとしてダメだと思うんですよ。ロックベーシストなのにロックを弾けないとか、有名なバンドにもそういうベースの人っているじゃないですか。さっきも言いましたけど、昔の僕らはできないことがたくさんあったから嘘をつこうっていうのがあったと思う。でも今は、できることしかないなかで、さらに他よりも何ができるかっていうことをみている。人時さんは、しかもバンド全体もみてるし。ライヴではごまかしたりしてんのかなと思っても、ちゃんと弾いてますよ、人時さんは。
人時:ははは!
──たしかに。音源では16ビートのフレーズを、ライヴでは8ビートに端折ってるベーシストとかも実際にいますし(笑)。
清春:そうでしょ、僕だったらすぐごまかしちゃう(笑)。でも人時さんはそれをしないんです。それって、なかなかできないことなんですよ。ベースという楽器プレイヤーのスケールの大きさが明らかに違うのは、黒夢の強みだと思ってます。やってることがトリッキーとかじゃないんですよ。この速さ、このグルーヴ、この太さで、安定してフレーズを動かしながら弾くっていうのは難しい。
──アスリートの世界ですね。
清春:僕がわからないレベルのすごさですよ。ドラムのSATOKOちゃんにしても、サポートのギターにしても、一緒に音を出した人は、みんな人時さんにひれ伏すので。ちなみに今回は「Like@Angel」でギターも弾いてますからね。黒夢は二人しかいないけど、僕のような人間が二人いてもダメなんですよ。バンド演奏としての耐久性の部分でも。フェスなんかでも僕はほぼ歌ってないですからね(笑)。人時さんは、ちゃんと弾いてますよ。その違いだけを見ても、やっぱり彼はすごい。

──ヴォーカリストとベーシストの役割の違いもありますよね。人時さんから見て、清春さんの歌は?
人時:今回のレコーディングでいえば、やっぱり追い込み方がすごい。ご自分のイメージと、そのイメージに到達させるためにどうすればいいかっていう考え方とかね。そういったこだわりの部分が、録った音として聴いた時に、僕の想像を軽く超えてくるんです。今回は一番最初に「LAST PLEASURE」を録ったんですけど、それを聴いて“うわっ! ここまで追い込んで、ここまですごい歌を歌うんだ!”って思いましたし、その1曲で安堵しました。
──やっぱり、ピッチもリズムも滑舌も声量もすべてがパーフェクトでしたか。
人時:そうですね。「LAST PLEASURE」1曲で、それがわかりました。
清春:同じ曲だから、違いがわかりやすいよね。しかも30年分の違いがあるわけだから。今回のレコーディングは、僕の中では8割がたやすかった。残り2割が、“昔のニュアンスを生かすか、どうしようかな”って考えたところで、“ファンの人はここが好きなんだろうな”っていう部分ですよね。ピッチを合わせると、昔のフックがなくなるというか。下手くそだったからカッコよかった、みたいな部分。歌なんか、上手くならないと続けてる意味がないですからね(笑)。
人時:ライヴでの清春さんの振り切れ方とかすごいんですよ。そういうのを観てきたうえで、今回録った音を聴いて、他の人とは迫力がやっぱり違う。
清春:今は僕は歌において“圧”を一番気にしている。繊細なトーンだろうがシャウトだろうが、圧がないと意味がない。そこに僕の場合は歌い方のクセとかが入ってくるんですけど、それはデフォルトなんです。そのデフォのまま、ピッチが合ってるとか、声の出し方が何種類もあるとか、その中でも大事にしていることの圧。それは黒夢でもソロでも関係なく、プレイに圧があることが観てる人にとって“この人、面白い”って感じる要素だと思うので。
──なるほど。
清春:頻繁にステージに立ってない人であれば、圧は必要ないんです。アニメの歌手の人とか、歌い手の人とか、別に圧はないけど、歌はめちゃくちゃ上手い。うまくレコーディングできればそれでいい。だけど、ロックだったりヒップホップもそうかもしれないけど、そういうジャンルの場合は圧がないとつまらなくなる。音源からも圧を感じさせることができないとメッセージが伝わらない。それは歌にしてもベースにしてもね。今回のリテイクアルバムで言うと、圧があるからこそ昔の歌詞が届く。でもパワーとは違うんだよな、圧っていうのは。だから僕自身、“黒夢の皆さん、圧はあったほうがいいんじゃないですか?”と客観的に思ってるんですよね。

──『Drug TReatment 2026』と『CORKSCREW 2026』も、30年後のリテイクで渋さや技を出すという類いのものとはまったく違うわけで。
清春:そうですね。オリジナルの『Drug TReatment』と『CORKSCREW』を好きになってもらうためにもリテイクがあるのかもしれないよね。だから、どうしてもオリジナルが好きな人は、そっちを聴いてもらえばいいんだよ。思い出もわかるから。でも、たとえばもし自分が10代のときに絵を書いていたとか、小説を書いていたとかでもいいんだけど、“今、同じものを作れますか?”っていうね。黒夢が『Drug TReatment』と『CORKSCREW』を新しくしたいと思ったことがすごいことで、それを聴いているあなたたちもすごいんです。
取材・文◎志村つくね
撮影◎森好弘/青木カズロー/上溝恭香
▶【インタビュー:後編】<THE PERFECT DAYS TO DIE>と怒涛のフェス出演へ


■黒夢セルフカバーアルバム『Drug TReatment 2026』
2026年7月15日発売
【初回限定盤(CD+Blu-ray)】
YCCW‐10433/B 7,700円(税抜7,000円)
※スリーブ仕様
詳細:https://www.yamahamusic.co.jp/s/ymc/discography/1218
【通常盤(CD)】
YCCW‐10434 3,850円(税抜3,500円)
詳細:https://www.yamahamusic.co.jp/s/ymc/discography/1219
▼Disc-1(CD) 全12曲収録 ※初回限定盤・通常盤共通
01.MIND BREAKER
02.DRIVE
03.C.Y.HEAD
04.CAN’T SEE YARD
05.DISTRACTION
06.Spray
07.NITE & DAY
08.Sick
09.NEEDLESS
10.Like@Angel
11.BAD SPEED PLAY
12.13 new ache 2026 mix〔bonus track〕
▼Disc-2(Blu-ray)収録内容 ※初回限定盤
01.「NEEDLESS」Music Video
02.「NEEDLESS」Music Video Making Movie
03.黒夢Zepp TOUR CORKSCREW 2025 DOCUMENT Part.1


■黒夢セルフカバーアルバム『CORKSCREW 2026』
2026年7月15日発売
【初回限定盤(CD+Blu-ray)】
YCCW‐10435/B 7,700円(税抜7,000円)
※スリーブ仕様
詳細:https://www.yamahamusic.co.jp/s/ymc/discography/1220
【通常盤(CD)】
YCCW‐10436 3,850円(税抜3,500円)
詳細:https://www.yamahamusic.co.jp/s/ymc/discography/1221
▼Disc-1(CD) 全12曲収録 ※初回限定盤・通常盤共通
01.MASTURBATING SMILE
02.FASTER BEAT
03.SPOON & CAFFEINE
04.後遺症 -aftereffect-
05.CANDY
06.少年
07.ROCK’N’ROLL
08.HELLO, CP ISOLATION
09.YA-YA-YA!
10.MARIA
11.LAST PLEASURE
12.I HATE YOUR POPSTAR LIFE 2026 mix〔bonus track〕
▼Disc-2(Blu-ray)収録内容 ※初回限定盤
01.「少年」Music Video
02.「少年」Music Video Making Movie
03.黒夢Zepp TOUR CORKSCREW 2025 ドキュメント Part.2
●黒夢セルフカバーアルバム先着特典/記念企画 情報
詳細:https://www.yamahamusic.co.jp/s/ymc/news/detail/1632
①タワーレコード(先着特典+限定特典)
1.先着特典:『CORKSCREW 2026』『Drug TReatment 2026』オリジナル缶バッジ
2.『CORKSCREW 2026』と『Drug TReatment 2026』の初回限定盤2枚同時予約 / 購入対象 限定特典:「ラバー・キーホルダー」*完全数量限定
▼対象店舗
全国のタワーレコード、タワーレコードオンライン(EC)
詳細:https://tower.jp/article/feature_item/2026/05/11/0701
②Amazon (W特典)
1.限定特典:『CORKSCREW 2026』『Drug TReatment 2026』メガジャケット
2.『CORKSCREW 2026』『Drug TReatment 2026』クリアファイル(A4サイズ)
③全国CDショップ共通特典
『CORKSCREW 2026』『Drug TReatment 2026』クリアファイル(A4サイズ)
▼対象店舗
HMV&BOOKS、新星堂などの全国のCDショップ、楽天BOOKS、セブンネットショッピングなどのWEBサイト、ヨドバシカメラなどCDや音楽映像ソフトを販売する家電量販店や書籍店、ライブ会場CD販売など。
●リリース記念企画
①「タワラブ!」コラボ・ポスター掲出&プレゼント企画
タワーレコード限定の特別な写真を使用した「タワラブ!」コラボ・ポスター(B1サイズ)を全国のタワーレコードで掲出。また、応募された購入者の中から抽選で10名に「タワラブ!」コラボポスターをプレゼント。
掲出期間:2026年7月14日(火)~2026年7月27日(月)
※終了日は店舗によって異なる場合がございます。
掲出店舗:タワーレコードおよびTOWER RECORDS mini全店
詳細:https://www.yamahamusic.co.jp/s/ymc/news/detail/1638
②パネル展の開催とプレゼント企画
パネル展を全国のCDショップで開催決定。『森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス』麻布台ヒルズ東京にて、世界的フォトグラファー・RKによって撮影された貴重なショットをパネル展示。抽選で貴重な展示パネルのプレゼントも。
詳細:https://www.yamahamusic.co.jp/s/ymc/news/detail/1641

■<THE PERFECT DAYS TO DIE -ザ パーフェクト デイズ トゥ ダイ->
7月17日(金) 東京・TOYOTA ARENA TOKYO
7月18日(土) 東京・TOYOTA ARENA TOKYO
7月19日(日) 東京・TOYOTA ARENA TOKYO
9月06日(日) 東京・GARDEN THEATER

■黒夢 ワンマン公演
10月30日(金) 東京・LINE CUBE SHIBUYA
■<KUROYUME 2027 ZEPP TOUR「2027」>
2月08日(月) 神奈川・KT Zepp Yokohama
2月09日(火) 神奈川・KT Zepp Yokohama
2月12日(金) 福岡・Zepp Fukuoka
2月14日(日) 福岡・Zepp Fukuoka
2月21日(日) 北海道・Zepp Sapporo
2月26日(金) 大阪・Zepp Osaka Bayside
2月27日(土) 大阪・Zepp Osaka Bayside
3月05日(金) 愛知・Zepp Nagoya
3月06日(土) 愛知・Zepp Nagoya
3月11日(木) 東京・Zepp Haneda
3月12日(金) 東京・Zepp Haneda
3月13日(土) 東京・Zepp Haneda
■フェス/ライヴイベント出演情報
▼<LuckyFes’26>
8月11日(火祝) 茨城・国営ひたち海浜公園
▼<RISING SUN ROCK FESTIVAL 2026 in EZO>
8月15日(土) 北海道・石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ
▼<MONSTER baSH 2026>
8月23日(日) 香川・国営讃岐まんのう公園
▼<中津川 WILD WOOD 2026>
9月19日(土) 岐阜・中津川公園内 特設ステージ
▼<Karatsu Drop Festival 2026>
9月26日(土)-27(日) 佐賀・虹の松原海水浴場 東の浜
▼<マグロック & ポップ 2026>
10月4日(日) 静岡・清水マリンパーク
■『黒夢 最新アリーナ公演オンエア記念特集!黒夢/SADS/清春7番組集中放送』

▼『黒夢<THE PERFECT DAYS TO DIE-ザ パーフェクト デイズ トゥ ダイ->』
9月放送・配信予定
放送・配信終了後~アーカイブ配信あり
※7月17日~19日にTOYOTA ARENA TOKYOで開催するアリーナ3DAYS公演より、2日目のライブの模様を独占放送・配信。“死”という言葉を含んだタイトルは、逆説的に、ロックミュージシャンとしての生きざまを体現したライブになることを予感させる。
出演:黒夢
収録日:2026年7月18日
収録場所:東京 TOYOTA ARENA TOKYO

▼『黒夢 2025.02.09 CORKSCREW A GO GO! SAINT MY FAKE STAR』
9月放送・配信予定
放送・配信終了後~1カ月間アーカイブ配信あり
※黒夢デビュー30周年を記念し、2025年、10年ぶりに復活。デビュー日に東京ガーデンシアターで開催した熱狂のライブを独占放送・配信。
収録日:2025年2月9日
収録場所:東京 東京ガーデンシアター

▼『黒夢 Music Video Collection』
9月放送・配信予定
※黒夢デビュー30周年を記念し軌跡をたどるMV集を、清春と人時の撮り下ろしインタビューも交え一挙放送・配信。

▼『清春 debut 30th anniversary year TOUR 天使ノ詩「NEVER END EXTRA」The Birthday』
9月放送・配信予定
放送・配信終了後~1カ月間アーカイブ配信あり
※ロックボーカリストとして多大な影響を与えてきた清春が、黒夢でのデビューから30周年を記念し60本超の全国ツアーを開催。2024年の誕生日公演を独占放送・配信。
収録日:2024年10月27日
収録場所:東京 恵比寿ガーデンプレイス ザ・ガーデンホール

▼『清春 Music Video Collection』
9月放送・配信予定
※黒夢でのメジャーデビューから30周年、ソロデビュー20周年のダブルアニバーサリーを記念したMV集を、清春のセレクトで本人インタビューと合わせてお送りする。

▼『SADS 1999-2003「SAD ASIAN DEAD STAR」』
9月放送・配信予定
放送・配信終了後~1カ月間アーカイブ配信あり
※清春率いるロックバンドSADSが、2024年、約20年ぶりに初期メンバーで復活。初期の5枚のアルバムからの楽曲を披露した2日間限定公演を独占放送・配信。
収録日:2024年6月29日、30日
収録場所:東京 Zepp Haneda(TOKYO)

▼『SADS Music Video Collection』
9月放送・配信予定
※SADS限定復活、最新ライブ独占放送を記念し、清春セレクトのMV集を本人インタビューと合わせて一挙放送・配信!
WOWOW 黒夢特集番組サイト:https://www.wowow.co.jp/music/kuroyume2026/
関連リンク
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