※画像は生成AIによるイメージです

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 移動に欠かせない交通手段のひとつである電車。しかし、通勤や通学の時間帯は混雑するため、殺伐とした雰囲気がある。車内では譲り合いの精神を持って、お互い気持ちよく過ごしたいものだ。
 今回は、電車内でのマナーや思いやりについて考えさせられたという2人のエピソードを紹介する。

◆荷物で座席を占領…高齢男性への態度に車内が凍りつく

 佐々木美穂さん(仮名・30代)は、比較的空いている電車に乗っていた。座席の端には30代くらいの女性が座り、大きな荷物を隣の座席へ置いていたという。

「その女性は一人で二人分のスペースを使っていました。乗客が増え始め、立っている人も目立つようになってきてからも、その女性はスマートフォンを見続け、荷物をどけようとしなかったんです。周りをチラッと見ることはあったんですが、誰かと目が合うと、またスマホへ視線を戻して、気づかないふりをしているように見えました」

 次の駅で、杖をついた高齢男性が乗車。男性は車内を見渡し、女性の隣しか空いていないことに気づくと、遠慮がちに声をかけたという。

「その男性が『すみません、こちらよろしいですか?』と言ったんですが、女性は反応しなくて……。女性は聞こえていないかのようにスマートフォンを眺めて、車内には何とも言えない空気が流れました」

 男性がもう一度、「すみません、座っていいですか?」と少し大きな声で伝えると、女性は舌打ちをしながら荷物を膝へ移したという。

「嫌々どけたという態度が伝わってきましたね。周りの人も引いていたと思います」

◆女性がピンチも「誰も助けない空気」に…

 その数分後、女性は降車駅が近づいたことに気づき、慌てて立ち上がった。その拍子に、手に持っていたスマートフォンが座席の隙間へ落ちたという。

 女性は必死に手を伸ばしたが、スマートフォンはなかなか取れない。その間に発車ベルが鳴り、ドアが閉まる時間が迫ってきた。

「さっきまでの態度を見ていたので、誰一人として『助けよう』という雰囲気にはなりませんでしたね」

 車内では、小さく苦笑する乗客の姿もあった。結局、その女性はスマートフォンを取れた時にはドアが閉まっており、恥ずかしそうにしながら次の駅まで乗っていったという。

「日頃の振る舞いって、こういうときに表れるんだなと思いました。まさに因果応報ですね」

◆「うるさいんだよ!」突然の怒声に車内が静まり返る

 田中翔太さん(仮名・30代)は、友人との旅行へ向かう途中、思いがけない出来事に遭遇した。

 春先で花粉の飛散が多い時期だったこともあり、マスクを着けて乗車していたものの、しばらくすると花粉症の症状が出始めたという。

「できるだけ我慢していたんですが、くしゃみが止まらなくなってしまいました」

 周囲へ迷惑をかけないよう、小さくくしゃみをするように心がけていた。しかし、何度が続いたそのとき、「うるさいんだよ!」と、近くに座っていた男性が突然大きな声で怒鳴ったという。

「最初は何が起きたのかわかりませんでした。本当にびっくりしました」

 田中さんは申し訳ない気持ちもあり、「すみません、花粉症で……」と説明した。

◆「花粉症なら仕方ないですよ」救われた乗客の一言

 そのとき、近くにいた別の乗客が、「花粉症なら仕方ないですよ。わざとやっているわけじゃないですし、マスクもしていますから」と、穏やかな口調で声をかけた。

 そのひと言で、張り詰めていた空気が少し和らいだという。怒鳴っていた男性は田中さんをちらりと見たものの、それ以上何も言わずに目を逸らしたそうだ。

「私を責めるような雰囲気ではなくなったので、本当に救われました。これからも迷惑をかけないように気をつけたいと思っています。でも、体調不良やアレルギーなど、自分ではどうにもできない事情を抱えている人がいることも理解してほしいです」

 電車では周囲への配慮が欠かせない。それは、田中さん自身も十分に理解している。そして、田中さんは最後にこう振り返った。

「怒鳴られたときは、イヤな気持ちになりました。でも、『わかってくれる人もいるんだ』と思えたことが、一番うれしかったですね」

 電車では個人のマナーが大いに問われる。だが、不快に感じても声をあげにくい空気があるのは事実だ。自分の何気ない行動が周囲の迷惑になっていないか、あらためて意識する必要があるだろう。

<取材・文/chimi86>

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。