「挨拶すら、鬱陶しい…」世帯年収1,500万円・30代パワーカップルが〈9,000万円のタワマン〉購入→半年後、コンシェルジュの前を“顔を伏せて”通るワケ
国土交通省の「令和6年度住宅市場動向調査」によると、分譲マンションなどの集合住宅取得世帯の約半数にあたる49.7%が、日常的に住宅ローンの返済に「負担感がある」と回答しています。夫婦の収入を合算する「ペアローン」は借入額を大幅に増やせる反面、高収入ゆえの「自分たちは大丈夫」という過信から、いざというときのセーフティネットが機能しなくなるリスクが潜んでいます。30代夫婦の事例をもとに、ペアローンに潜む危険性についてみていきましょう。
約半数がローン返済に「負担感」…国土交通省のデータが示す、ペアローンに潜むリスク
近年、共働きで世帯年収の高い「パワーカップル」が増加しており、夫婦の収入を合算して高額な物件を購入する「ペアローン」の利用も目立ちます。しかし、借入額を大幅に増やせる一方で、ペアローンには特有のリスクが潜んでいます。
それは、夫婦のどちらか一方が病気や休職などで就労不能になった瞬間、家計が急速に悪化する可能性があることです。生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査(令和6年)」によると、世帯主が長期間働けなくなった場合の生活資金について、全体の68.8%が「不安である(少し不安+非常に不安)」と回答しています。
この点、世帯年収「1,000万円以上」の高収入世帯に限るとその割合は逆転し、「不安である」と答えた人は32.2%にとどまり、実に67.8%が「安心(大丈夫・たぶん大丈夫)」と回答しており、リスクを低く見積もる傾向が浮き彫りになっています。
高収入ゆえに「自分たちは大丈夫」と過信し、現在の収入が永遠に続く前提でギリギリのローンを組んでしまうと、いざというときに貯蓄をはじめとしたセーフティネットが機能しません。実際に、国土交通省の「令和6年度住宅市場動向調査」によれば、分譲マンションなどの集合住宅取得世帯の約半数にあたる49.7%が、日常的に住宅ローンの返済に「負担感がある」と答えています。
住宅ローン返済は、一度歯車が狂うと家計破綻に直結しかねません。「自分たちは大丈夫」と信じペアローンでタワーマンションを購入した結果、“想定外の出来事”で家計破綻寸前となった30代パワーカップルの事例を紹介します。
ペアローンで「9,000万円のタワマン」を購入…背景にあった“強気”な見通し
「コンシェルジュの挨拶でさえ、今の私たちにはただ苦痛で……。よくない考えなのはわかっていますが、鬱陶しいとすら感じてしまいます……」
都内のタワーマンションで暮らすアヤさん(仮名・34歳)。自身はWebディレクターで年収700万円、夫のダイスケさん(仮名・37歳)は大手メーカーの営業職で年収800万円です。世帯年収は1,500万円に達しているいわゆる「パワーカップル」で、周囲から見れば経済的になんの不安もないように見えます。
「ペアローンなら手が届く。お互い順調にキャリアを積んでいるし、返済なんて余裕だろう」
そんな強気な見通しを立てた2人は、3年前に約9,000万円のタワーマンションを購入しました。毎月のローン返済額は約25万円です。
しかし、実際に住み始めてみると、ローン返済以外にも、高額な管理費や修繕積立金、駐車場代などが加わり、住居関連費だけで毎月約33万円が消えていくことがわかりました。それでも、当時は「自分たちの収入なら問題ない」と、特に気にしていませんでした。
夫の休職で、途端に家計が困窮…「タワマン破産」寸前に
コンシェルジュの丁寧な対応、豪華なラウンジ、万全なセキュリティ。そんな贅沢な日常が一変したのは、タワーマンション購入から半年ほどたった昨年の冬のこと。
ダイスケさんが激務によるストレスと慢性的な睡眠不足から心のバランスを崩し、休職を余儀なくされたのです。傷病手当金が支給されるとはいえ、給与収入がゼロとなりボーナスもカットされ、世帯収入は一気に激減しました。
途端に、それまで余裕のあった家計はまたたく間に苦しくなります。アヤさんの収入だけで月33万円という重い住居費を支払うと、手元には日々の食費や生活費すらまともに残りません。
「なんとか独身時代の貯金を取り崩してしのいでるけど、このペースだとあと数ヵ月で完全に底をつく……」
焦りを募らせたアヤさんは、マンションを手放そうと考え、取り急ぎ不動産会社に売却の査定を依頼しました。しかし、そこで告げられた結果に、アヤさんはさらにショックを受けます。
査定額は、購入時とほとんど変わらない約9,000万円だったものの、残債を差し引くと手元に現金はほとんど残りません。それどころか、売却にかかる仲介手数料などの諸費用で、数百万円の支払いが発生することが判明したのです。
また、アヤさんにとって「次の住まい」と「夫への報告」も大きな悩みの種でした。家を売ればローンからは解放されるものの、ダイスケさんが休職中では次に借りる物件の審査が厳しくなる可能性があります。なにより、精神的に参っているダイスケさんに「家を売ろう」となかなか話を切り出すことができません。
「かといって、このまま高い住居費を払い続ける貯金もありません……」
休職中のダイスケさんにはゆっくり休んでほしいと願う一方、アヤさんの心には「早く仕事に復帰してくれないと家計が破綻してしまう」という焦りが渦巻いています。高収入が老後まで続くと身の丈に合わないペアローンを組んでしまった代償はあまりにも大きく、アヤさんは今日も顔を伏せてコンシェルジュの前を通り抜けながら、見えないタイムリミットに怯える日々を送っています。
[参考資料]
・生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査(令和6年)」
・国土交通省「令和6年度 住宅市場動向調査」

