(※写真はイメージです/PIXTA)

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「不倫」「浮気」「離婚」「セクハラ」……銀座さいとう法律事務所には、今日も有象無象のトラブルが舞い込みます。本連載では、齋藤健博弁護士が実際に寄せられた事例をもとに、男女の法律問題を解説していきます。

まるでファッションのように…商社マンが耳にしたシンガポールの“噂”

シンガポール在住のAさん(30歳)は、東大卒で、大手商社に勤務しています。マッチングアプリで知り合った妻と、シンガポールに移住してきました。妻との婚姻生活は今年で3年、子どもこそまだいないものの、すべてがうまくいっているように思っていました。

そんなとき、同僚からシンガポールの“怪しい噂”を耳にします。

シンガポールでは、日本と同様にマッチングアプリを通じた出会いが多く存在するようで、なかにはアプリでの出会いを通じて不貞行為がファッションのように行われているというのです。

しかし、仕事は真面目で誠実なAさんは、こうした状況に出会ったこともありません。「本当か?」と思いつつも、興味本位で、既婚者が多く集まるマッチングアプリに登録してみることにしました。

1ヵ月の火遊び→音信不通に

すると偶然、日本人の人妻・Zさん(35歳)と知り合いました。同じ日本人というだけあって、二人はすぐに意気投合。話しているうちに、Zさんは旦那とのレスが深刻だと悩みを打ち明けます。お酒の勢いもあって、二人はその日、家に帰ることはありませんでした。

そんな秘密の交際を続けて1ヵ月後。Aさんはしだいに本気になり、Zさんとの関係を真剣に考えるように。しかし突然、Zさんと連絡が取れなくなりました。

日本人コミュニティは狭いため、探そうと思えば必ず見つけ出せると、Aさんは不倫であったことを隠そうともせず、あらゆる手段を講じて周囲に助けを求めました。ですが、Zさんの消息はなかなか掴めません。

途方に暮れていたところ、半年ほど経って、Zさんから連絡がありました。聞けば、「旦那から浮気を疑われ修羅場になっている」「助けてほしい」といいます。

「責任を取らなければいけない」という思いとともに、「Zさんにいい顔をしたい」というよこしまな思いが膨らみ、AさんはZさん・Zさんの夫と3人で話し合いをすることに。

「日本ではなくシンガポールで行われた行為である以上、日本の法律はおよばないだろうから、本来は支払う義務がないだろう」と高を括り、「でも念のため」と日本円にして30万円程度をシンガポールドルで所持して、話し合いに向かいました。

話し合いの結果

Zさんの夫は、白髪の紳士(42歳)でした。Aさんは「とりあえず反省した表情で謝り倒そう」と考えていましたが、そんなことでは済まされない事態に。

話を聞くと、Zさんの不倫が発覚した背景は、Aさんが日本人コミュニティ内で聞き回ったことで噂が広まったことにあるようです。さらに、Aさんが予想していなかった、慰謝料も請求されました。その額、日本円にして1,000万円。Aさんは驚きを隠せません。

Aさんが協議の際に謝罪の気持ちがあると何度も強くいっていたことから、Zさんの夫もこれに乗じて、シンガポールの物価等も考慮して請求を強めたそうです。

日本の法律が適用されるのかどうかは、国際裁判管轄、準拠法といった法的問題が生じます。

もっとも、Aさんは妻にだけは知られるわけにいかないとも思っていたことから、現地の弁護士に相談をしましたが、現地の弁護士は「支払い義務は生じない」といって、相手にしてくれません。

「やばい、やばすぎる!」と八方塞がりになったAさんは、日本の弁護士に相談をしました。交渉の末、日本円で300万円程度の支払いをすることになりました。

Aさんは学生時代勉強ばかりで、異性とのふれあいがあまりなく、やっと生じたチャンスに胸を膨らませていました。

しかし、たった1ヵ月の火遊びでも、本気になってしまった代償が300万円とは、日本国内で協議していれば生じなかった結果といえます。
 

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容から変更している部分があります。