電気代を節約するためには、どこから手を付ければいいのか。東京電力エナジーパートナー社員で、家電・住宅設備に詳しい「家電王」こと中村剛さんは「最近の冷蔵庫やエアコンの省エネ機能はめざましい。抜本的な電気代削減には家電以外での対応を考える必要がある」という。ライターの市岡ひかりさんが聞いた――。(第3回)

※原稿内の電気料金試算は31円/kWhで行っている(全国家庭電気製品公正取引協議会が定める電気料金目安単価)

写真=iStock.com/Yusuke Ide
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yusuke Ide

■夏の「電気代対策」を家電王に聞いてみた

1万8997円――。

何を隠そう、昨年8月の筆者宅の電気代である。資源エネルギー庁によると、2025年の1世帯の電気代の平均額は1万3219円とのことなので、実に平均の約1.4倍の額を支払っていることになる。

家族4人、中古の一軒家に暮らす我が家。筆者は在宅メインのフリーランスだが、冷房を極力使わないよう、日中はせっせと喫茶店図書館に通って作業するという節電策を講じている。しかし、夏休みとなると子どもの在宅機会が増えるため、どうしたってエアコンはつけっぱなしになる。

電気料金も高騰している中、今夏の電気代請求に恐々としているのは筆者だけではないだろう。なんとかできないものか。東京電力エナジーパートナーに在籍し、テレビ東京の「TVチャンピオン」のスーパー家電通選手権で優勝した「家電王」の中村剛さんに話を聞いた。

プレジデントオンライン編集部撮影
家電王」としてYouTubeの他、SNSでも情報発信を行っている中村さん。 - プレジデントオンライン編集部撮影

まず、そもそも電気料金はなぜ上がっているのか。資源エネルギー庁の調査によると、家庭用電気料金の平均価格は、2010年度は21.39円/KWhに対し、2024年度は32.80/KWhと実に約53%も上昇している。中村さんは、理由を以下のように語る。

家電買い替えの目安

「家庭用の電気料金は、儲けるための『値上げ』というより、燃料費調整額などの影響があり、どうしても『値上がり』が避けられません。

特に最近大きいのが、再エネ賦課金です。再エネ賦課金は、再生可能エネルギー普及のために国が課しており、今後も太陽光の普及促進が続く限り負担が続く見込みです」(中村さん、以下同)

国際情勢も不安定で化石燃料の価格は先が見通せない。円安も続いている。しばらくは電気料金の値上がりが避けられなさそうだ。となると、早期に電気代対策を打ちたいが、具体的にどうすればよいのか。まず目を向けたいのが、夏に使う機会が増えるエアコンや冷蔵庫だ。

もちろん、「エアコンの設定温度を1℃高く設定する」「冷蔵庫を詰め込み過ぎない」といった定番の節約もチリツモ的に効果はある。しかし、中村さんはそれ以上に、家電そのものの性能向上にも目を向けるべきだと指摘する。

中村さんによると、エアコンや冷蔵庫などは性能の向上が目覚ましく、購入から10年以上経過しているのであれば、省エネ家電に買い替えることで大きな効果が得られるという。

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■家計を最も助ける冷蔵庫の節約術

「例えば、エアコンも10年前と最新の省エネタイプを比較すると約13%省エネで、電気代は年3630円ほど安くなります(※1)。冷蔵庫であれば、10年前と比較すると15〜24%近く省エネとなり、年1490〜2730 円程度電気代が抑えられます(※2)。

特に冷蔵庫は真空断熱材などの性能が向上し、極限まで省エネ化されていますので、むしろ『最新の冷蔵庫を買えば、節電策は完了』と言っていいほどです」

※1 家電製品協会 2026年度版スマートライフおすすめBOOKより
※2 家電製品協会 2026年度版スマートライフおすすめBOOKより

つまり、今の省エネは「頑張る」ものではなく、「家電に頑張ってもらう」時代なのだ。我々はむしろ家電の省エネ性能をムダにすることなく、十分に生かすことが重要だという。

例えば、冷蔵庫では長年「開け閉めする回数を極力減らす」「冷気を逃さないためにビニールカーテンを付ける」といった節電対策が語られてきた。しかし、高い断熱性を兼ね備えている冷蔵庫なら、少し開ける時間がのびたところでそれほど大きな影響はない。むしろ、ゆっくりでも庫内を整理整頓し、フードロスを防ぐほうがよほど家計によほど優しい。

■エアコンより先に手を付けるべき場所

「家族全員が1日に冷蔵庫を開けている時間をすべて足し合わせても、多く見積もってもせいぜい10分間程度。その割合は、24時間のうちのわずか0.7%ほどに過ぎません。残りの99%以上の時間は、閉まっているわけです。冷蔵庫が完璧に省エネ運転をしてくれています。

最近は野菜も高騰していますし、使い切れずにしなびさせて捨ててしまえば、それだけでロスになります。冷蔵庫の節電効果で浮く電気代はせいぜい年間数百円程度ですから、電気代だけにフォーカスするのはナンセンスです。また、冷気が逃げるのを防ぐビニールカーテンの設置も、冷気循環や各種センサーの働きを邪魔し、雑菌の温床にもなるためやめた方がいいですね」

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エアコンも同様だ。高い省エネ性能を十分に生かすため、しっかりメンテナンスしたい。環境省のデータによれば、フィルターの掃除を怠った場合とそうでない場合とでは、冷房時で約4%、暖房時で約6%もの消費電力に差が出るという。

しかし、どれほど高性能なエアコンでも、本来の性能を発揮できないケースがある。その大きな原因が窓だ。

「どれだけ省エネ性能が高い最新のエアコンを導入しても、家自体がスカスカで熱をキープできない構造であれば、エネルギーは逃げていく一方です。住宅において最も熱の出入りが激しい最大の弱点、それが窓なのです」

■家計を最も圧迫する最大の要因

夏の冷房時、室内に侵入してくる熱の約7割は窓から入ってくる。これを防がない限り、エアコンは常にフルパワーで働き続けなければならない。

「家全体のリフォームは高額ですが、既存の窓の内側にもう一枚窓をつける内窓であれば、比較的ローコストかつ短期間で施工可能ですし、現在は補助金制度もあります。窓断熱リフォームは、その建物が建っている限り永続的に電気代を下げ続けてくれます」

窓断熱を勧める理由も、結局は熱の出入りを抑えるためだ。そして、この「熱」という視点から電気代を見直すと、多くの人が抱く「夏のエアコンこそ電気代の元凶」というイメージが覆される。

「夏の電気代が高いと、真っ先にエアコンを悪者にしがちですが、家庭のエネルギー消費において『冷房』が占める割合は、年間でわずか4.6%に過ぎません。半分以上を占めているのは『暖房(24.9%)』と『給湯(27.0%)』です(※3)。つまり、直接『熱』に変える需要こそが、家計を圧迫している大きな要因のひとつなのです」

※3 資源エネルギーエネルギー動向(2026年7月13日更新)

資源エネルギー庁資料より筆者作成。

■敵は夏場のエアコンではなかった

夏場であっても、この「熱需要」に無自覚なままでいると、思わぬところで電気代を浪費することになる。その代表格が、梅雨時にはありがたい浴室乾燥機だ。

「一般的な電気ヒーター式の浴室乾燥機を、夜間に5時間運転させたとします。1日あたりの電気代は約185円。これを1年間続けると、約6万7000円という莫大な金額になります。浴室という広く、密閉性もさほど高くない空間を、電気ヒーターで丸ごと温めるわけですからロスが大きいのは当然です」

もし浴室乾燥をやめヒートポンプ技術を持つ最新のドラム式洗濯乾燥機に変えれば、1回あたりの電気代は25円程度。浴室乾燥機と比べると、年間で約5万8000円の節約になる。

写真=iStock.com/years
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/years

中村さんによると、最近はニトリや中国ハイアールグループのAQUAなど、コスパが良い高機能なヒートポンプ式ドラム式洗濯乾燥機が増えてきたという。洗濯物を干して取り込むという労働時間のカットも含めれば、十分に投資する価値があると言えそうだ。

電気代がよりかさむのは「熱需要」。これはすなわち、年間を通してみれば、夏よりも圧倒的に冬の方が、電気代がかさむということだ。

筆者も今回の取材に当たり、過去の電気料金の支払い履歴を確認して改めて気づかされたことがある。夏の1万8000円ごえもなかなかの衝撃だったが、数カ月前、今年の2月の電気代は、あっさりと2万8000円を超えていたのだ。

わが家の夏の電気代は、断熱性が低い一軒家ゆえのエアコンフル稼働と思われるが、データで見れば冬が本丸であることは明らかだ。この点に関しては、中村さんも常々警鐘を鳴らしているそうだ。

■夏よりも冬のほうが本番

「本当に気を付けるべきは冬なんですよね。つくり出す温度差が倍近く違うんです。夏場、外気温35℃を28℃に冷やす場合、その温度差は7℃度です。しかし冬場、外気温5℃を20℃に温めようとすれば、温度差は15度にもなり、圧倒的にエネルギーが必要です。さらに、冬は在宅時間も長く、暖房を使う期間そのものも長引きます」

しかも、今年は秋以降、さらなる電気代高騰が待ち受けている。原油価格は電気料金に数カ月遅れて反映される。つまり、今年3月以降の中東情勢の緊迫化で高騰した原油価格上昇が電気料金に反映されるのは、今秋以降だ。政府の電気代補助は9月で終了するタイミングとも重なり、大幅な電気代負担増が予想される。

夏の節電対策として始めた断熱や省エネ家電への投資は、実は冬の電気代を大きく左右する。夏対策というだけでなく、1年を通じた熱への対策という視点こそ、待ち受ける今冬の電気代ショックへの最大の防御となるのだ。

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市岡 ひかり(いちおか ひかり)
フリーライター
時事通信社記者、宣伝会議「広報会議」編集部(編集兼ライター)、朝日新聞出版AERA編集部を経てフリーに。AERA、CHANTOWEB、文春オンライン、東洋経済オンラインなどで執筆。2児の母。
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中村 剛 (なかむら・つよし)
東京電力エナジーパートナーお客さま営業部副部長
2002年に『TVチャンピオン』のスーパー家電通選手権で優勝し、銀座にて体験型ショールーム「くらしのラボ」の開設と運営にあたった。現在は家電王として動画『くらしのラボ』をYouTubeとFacebookで毎週配信している他、テレビ雑誌、新聞などのさまざまなメディアで暮らしに役立つ家電情報を発信中。
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(フリーライター 市岡 ひかり、東京電力エナジーパートナーお客さま営業部副部長 中村 剛 )