土居丈朗・慶應義塾大学経済学部教授

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「金利」が与える影響
 

 先日、日本銀行が利上げを行ったが、これには2つの目的があると考えられる。1つは物価高を抑制すること、もう1つの隠された目的として円安を止めたいということである。 

 為替レートの水準に関する権限や判断は財務省にあり、日銀は支援はできても最終決定権は持っていない。ただ、米国との金利差が開くと、金利の低い円が売られてドルが買われることで円安が進んでしまう。そこで政策金利を上げることで日米金利差を縮め、円安を止めようとしたという背景がある。 

 利上げは企業、個人どちらにも借り入れ金利の上昇という影響を与える。日銀が利上げをしなければ円安が進み、利上げをすれば円安は抑えられるかもしれないが金利が上昇し、企業への貸出金利や住宅ローン金利が上がってしまうという表裏一体の関係にある。 

 また、財政における大きな課題は国債の返済期間の問題。個人であれば住宅ローンを30年の固定金利で借りることもできるが、日本政府はそうはなっていない。 

 2020年からのコロナ禍で、政府は1人10万円の特別定額給付金や、持続化給付金など多くの資金を必要とした。その調達のために国債を大量に発行せざるを得なかった。金融機関はコロナの先行きが見通せない中で長期に貸すことができず、1年ないし2年という短い満期の国債を発行することになった。 

 今や、国債は返済期が来ては借り換えるという繰り返しで、まさに「自転車操業」状態になっている。そこに利上げが行われたわけだが、この金利は誰が払うかというと国民の税金。 

 まだ、そこまで至っていないが、金利負担が重くなれば社会保障や教育など行政サービスを削減しなければならなくなるという危険がある状態である。日本政府は多く借金をしてきた過去があるので、首が回らないような状態になりつつある。 

 一方、政治家からは借金の残高がGDP(国内総生産比)比率で下がり始めているという声がある。そのため、高市政権に近い人たちは財政健全化ではなく、経済成長で、この比率を下げていこうとおっしゃっている。 

 これはGDPが増加しているからだが、物価が上がっているから増えている状況である。これは別の表現をすると「インフレ税」という。物価が上がり、購買力が目減りしており、そこに国民の物価高に対する苦しい声がある。あたかも政府の借金を返すために家計の購買力を奪う事態になっている。これがインフレ税と言われている。 

 インフレをヘッジした人は負担しなくて済むが、できない人は実質賃金が下がるという形で負担させられることになる。
 

現役世代の負担軽減をどう図る
 

 今、社会保障国民会議では食品消費税1%や給付付き税額控除について議論されている。 

 消費税の特徴は、所得税と違って老いも若きも消費をするため世代間の負担の格差が小さいところにある。また、景気が悪くても消費をするため税収が安定しており、経済成長率を下げる効果が小さい。 

 国民からすれば増税より減税の方がいいのは当然だが、行政サービス提供のためには一定の税収を確保しなければならない。所得税、消費税、どちらで徴収する方が経済成長に悪影響を及ぼしにくいかというと、経済理論では消費税だと言われている。 

 今、議論されている食品消費税1%だが、2027年4月から実施されるのではないかと見る。しかも高市首相は赤字国債に頼ることなく行うとしている。 

 消費税を1%にすると4.3兆円の税収が失われ、低所得者向けには6000億円の給付を出すとしているが、5兆円近くを赤字国債に頼ることなく賄うのは、かなり難しいと思う。