この記事をまとめると

■長野の青果を積み九州各地へ届ける3000kmの長距離輸送に密着

■豪雨や渋滞を乗り越え復路は長崎で鮮魚を積み名古屋市場へ直行

■愛車を「船」と呼ぶデコトラ乗りの誇りと物流の現場を追った

現役デコトラ「華麗丸」が駆け抜けた大航海

全国各地に旬の青果や鮮魚などの食材を運び、ニッポンの食卓を支えるトラックドライバーたち。そんな物流のプロフェッショナルの「現場」に密着! 長野で名産の果物を積み、遠く九州は福岡県まで激走。同県内各所でこれら積み荷を降ろしたあとは長崎県の松浦で鮮魚を積み、名古屋の市場まで運ぶという、総走行距離3000kmに及ぶデコトラ仕事車の「大航海」に密着してみた。

今回の主人公は長野県須坂市で運送会社「シンヨー急送」を営み、自らハンドルを握るデコトラ界の有名人、田幸 明さん。愛機の日野スーパードルフィン「華麗丸」は、かつてアオシマのプラモデルにもなった有名車だ。この取材から10年経ったいまでも現役の仕事車として活躍。「飾り」もさらに進化している。

このときの積み荷は長野から九州は福岡にかけての往路は、信州名産のリンゴやぶどうなどの青果。そして復路は長崎県の松浦港でハマチなどの鮮魚を積み、名古屋の中央卸売市場まで運ぶという、総走行距離3000kmの長距離便となった。ちなみにデコトラで仕事に携わるドライバーたちは、愛機を「船」になぞらえ、その仕事に誇りをもち「航海」と呼んでいる。

フルーツ王国として有名な長野県は中野市などの青果市場で、リンゴやぶどうなどの青果を積み込んだ田幸さん。取材時はまさにこれらの「旬」の時期で、これら新鮮な果物は、納品先の九州の人々にとっても文字どおり「垂涎モノ」の商品だ。すべての青果の積み込みを終えた華麗丸は、午後6時30分に須坂ICから上信越道に入り、長野道・中央道を経て名古屋方面へ向かった。

中央道に入ると、その先で交通事故が発生。中津川ICで降ろされ国道19号を走行、恵那ICからふたたび中央道に入るというアクシデントに見舞われた。その後東名・名神・山陽道を経て関門橋を渡り、翌朝7時に九州に上陸。北九州市の中央卸売市場に到着した。荷降ろしは午前9時30分からスタート。1時間足らずでリンゴとぶどうを降ろし、次の納品先の大分県中津市へと向かった。

トラブルもありながら時間厳守で航海を完了

中津市は福沢諭吉や「解体新書」の前野良沢の故郷としても知られる城下町。12時ちょうどに市場に到着して青果を納品。その後は麻生太郎氏の地盤としても有名な福岡県飯塚市と福岡市の市場で納品。すべての積み荷を降ろしたころには、すでに日が暮れていた。

復路の積み荷は長崎県の松浦港で水揚げされた鮮魚。青果をすべて降ろして空荷になった華麗丸と田幸さんは、翌朝の積み込みのために福岡市から一路長崎へ。この日は九州上陸前の未明から雨が降り続いていたが、高速に乗ったころには雨脚はさらに強くなり、西九州道では台風かと思うほどの豪雨に。長崎県では高速の一部区間が冠水して通行止めになるほどだった。松浦漁港に着いたのは夜の10時30分。ひと風呂浴びて2日間の汗を洗い落とした田幸さんは、愛機の寝台で深い眠りについた。

翌朝の積み込みは当初は午前10時の予定だったが、魚の競りの関係で少し押してのスタートになった。松浦の市場にある「おさかなドーム」という物流施設に華麗丸をバース付けした田幸さんは、その日に水揚げされたハマチやブリ、アジにサバ、ハガツオにメジマグロ、イカなど多種多彩な鮮魚を積み込んだ。アジとサバは松浦の名産で、「旬(とき)アジ」「旬サバ」というブランド魚にもなっている。

午後2時ごろに積み込みが完了。納品先は名古屋市の中央卸売市場本場だ。「中継の荷物(市場で降ろし、別のトラックに引き継ぐ荷物)もあるから急がなきゃ」。愛機のリヤ観音扉を閉じた田幸さんは、文字どおり「追っかけ」で名古屋へ向けて出発。名古屋の中央卸売市場には指定の15分前に現着。無事にすべての鮮魚を納品することができた。