死傷され亡くなったライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・最上あいさん(Xより)。右は高野健一被告の卒アル写真

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 東京都新宿区の路上で2024年3月、ライブ配信をしていた佐藤愛里さん(当時22)を刺殺したとして、殺人罪などで起訴されている高野健一被告(44)。その裁判員裁判が東京地裁(井戸俊一裁判長)で7月1日より開かれている。

【写真を見る】佐藤さんがメッタ刺しにされた高田馬場駅付近の現場。佐藤さんの着物姿の私服写真(友人提供)

 起訴状によると、犯行は3月11日の朝9時50分ごろ、JR高田馬場駅近くの路上で起きた。「最上あい」名義でライブ配信中だったため凶行も配信され、当時、事件は大きな衝撃を与えた。

 7月3日には、被告人質問が行われた。配信者だった佐藤さんに好意を持ち、佐藤さんの求めるままに250万円を超えるお金を貸す。返済がないままライブ配信を続ける佐藤さんに対する、高野被告の思いの変容が明らかになっていく--。【全3回の第3回。第1回から読む】

「顔を傷つける」

 2024年3月、事件の前日に「最上あい」名義のライブ配信で「山手線一周ライブ配信」の企画を説明する佐藤さんを見て、東京に行くことを決めたという高野被告。家族や、翌日仕事があったA型作業所にも、相談はなかったという。

 当時の佐藤さんへの心情として、「騙された、悲しい、この先不安だ」という気持ちが大きかったという。お金に余裕がなく、朝ごはんは食べず、昼は毎日決まってゆで卵とブロッコリー、夜はご飯と味噌汁のみ。食事の楽しみは、「月に一度行く精神科病院の帰りのマクドナルド」だったという。

 なぜ、事件を起こそうと考えたのか。高野被告は「殺すつもりはなかった」と主張する。友人とのLINEでは、「復讐だけ考えている」などと送信しているが、「借金のことをSNSで暴露するか、自殺して遺書に残す」ことを意味していた、などとした。ただ、ぼんやりと「顔出ししている配信者の顔を傷つける」との考えもあったが、現実的ではないと思っていた。

 しかし、事件前日に生配信のことを知る。そのぼんやりした考えが、可能になると思った。

「(佐藤さんに)襲いかかり傷害事件になって裁判になれば、佐藤のやったこと、無職の障がい者からだまし取ったことが知られたらいいのではと思った」(高野被告)

 当日はナイフを2本持ち、佐藤さんの元に向かったという。佐藤さんはリアルタイムで配信しており、どこを歩いているのかすぐにわかった。

 佐藤さんを見つけると、会話を交わすことはなく、ぶつかるようにお腹にナイフを刺したという。佐藤さんが倒れると、見下げるように刺したというが、「詳しいことは覚えていない」「無我夢中で刺した。感情はなかった」という。

「したことは間違ってた」

 何度か刺すとスマホが見えて、刺すのをやめ、佐藤さんを画面に写すなどした。その時の感情も「覚えていない」。警察は、現場で立ち尽くしていた高野被告をその場で逮捕した。

 司法解剖した医師によると、死因は多発刺切創による出血性ショック。頭部、頸部など、最低55か所を刺されていたという。致命傷になったのは、右総頚動脈が切断されたことだった。刺し傷は、頭部8か所、側頭部・顔面に7か所、頸部に8か所。他にも上半身に多数の傷があったという。

 佐藤さんに対する今の気持ちについては、次のように謝意を表した。

「したことは間違ってた。したことで恐い思い、痛い思いをさせ、命を奪い本当に申し訳なく思っている」「もっと警察に(金銭トラブルの)被害を訴えるとかすればよかった」「(佐藤さんを恨む気持ちは)今はない」

 どれだけ反省しても、失われた佐藤さんの命は戻らない。7月10日の公判で、検察は懲役20年を求刑した。高野被告の判決は15日に予定されている。

(了。第1回から読む)

傍聴取材/普通(裁判ライター)