「もう疲れました…」年金月11万円・75歳女性、物価高でも「安いスーパー」より「高いコンビニ」に通う〈切実な理由〉
総務省の「消費者物価指数(令和8年5月分)」によると、「食料」は前年同月比3.5%の上昇率を記録しています。こうした状況では節約が欠かせませんが、終わりの見えない値上げラッシュのなかで「節約疲れ」に陥る高齢者も少なくないようです。夫と死別し、一人暮らしで生活するヨシコさん(仮名・75歳)も、その「節約疲れ」に苦しむ一人です。事例を通して、高齢者が直面する物価高の影響をみていきます。
高齢者の7割超が物価高を懸念…終わりの見えない値上げラッシュと「節約疲れ」の実態
総務省の「消費者物価指数(令和8年5月分)」によると、2026年5月の消費者物価指数(総合)は前年同月比で1.5%上昇しました。なかでも、日々の生活に直結する「食料」は前年同月比で3.5%の上昇率を記録しており、終わりの見えない値上げラッシュが家計を圧迫し続けています。
こうした状況下で、年金など限られた収入で暮らすシニア層の不安は深刻です。内閣府の「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」によれば、高齢者が今後の経済生活において不安に思うこととして、「物価が上昇すること」が74.5%に達し、他の不安要素を大きく引き離してトップとなっています。
年金生活で生活防衛を図るためには、少しでも安い店を探して特売品を買うなどの「節約」が不可欠です。しかし、どれだけ努力して遠くの店へ足を運んでも物価高の波に飲み込まれてしまう徒労感に加え、加齢による体力の低下が重なることで、しだいに気力を失い「節約疲れ」に陥ってしまうケースは珍しくありません。
一人暮らしのヨシコさん(仮名・75歳)も、そんな「節約疲れ」にいたったうちの一人でした。
年金月11万円・75歳女性、遠くの「安いスーパー」通いをやめた〈切実な理由〉
「少し前までは、チラシを見比べて、特売日に合わせて少し遠くのスーパーで食材を買うのが日課でした。でも最近は、あそこまで行く気力がどうしても湧いてこないんです」
夫と死別し、ローン完済済みの一軒家で一人暮らしをしているヨシコさん。毎月11万円ほどの年金でやりくりするため、「いかに食費や日用品を安く抑えるか」を日々の目標にして生活してきました。
そんなヨシコさんの習慣が崩れ始めたのは、2026年に入り、食品や日用品の価格がさらに一段と跳ね上がってからでした。どれだけ苦労して安い店を探して買いに行っても、結局は前よりも高い金額を支払わなければなりません。終わりの見えない値上げラッシュに、ヨシコさんは「自分の努力はもう無駄なのではないか」と徒労感を覚えるようになりました。
「どんなに苦労して安い店に行っても、結局あんまり変わりません。数十円のために頑張るのが、なんだか虚しくなってしまって……」
そんな諦めの気持ちと、年々衰える体力から、ヨシコさんが向かうようになったのは、歩いて数分の場所にある近所のコンビニでした。
コンビニで「楽」を手にするも…減っていく資産と募る自己嫌悪
家のすぐ近くにあるコンビニでの買い物は、重い荷物を持って歩く距離も短く、体力的にはとても楽になりました。しかし、食パンと牛乳、小さな惣菜だけで、レジでの支払い額はスーパーの2倍近くになります。「もう節約しても意味がない」という投げやりな心境で始めたコンビニ通い。口座残高が減っていくのを見るたびに、ヨシコさんは気が重くなります。
「またこんなに無駄遣いしてしまったと情けなくなります。でも、重い荷物を持って、あの坂道を上って帰ってくる体力は、もう私には残っていないんです……」
少しでも安く抑えるためにスーパーをハシゴすることが、ヨシコさんにとって生活の張り合いでもありました。しかし、体力の低下には抗うことができません。
かつてはチラシを見ながら献立を考え、スーパーを回るルートを考えるなど楽しみのひとつだったヨシコさんの買い物の時間は、いまではただ「少しでも歩かずに済ませるための苦痛な散歩」へと変わってしまいました。超高齢社会と物価高が重なる現代において、気力と体力を奪われた高齢者の「節約疲れ」は、決して見過ごせない問題となっています。
[参考資料]
総務省「消費者物価指数(令和8年5月分)」
内閣府「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」

