ブラジル戦、誤審で消された幻の先制弾…主審が異例の“HT謝罪” 主将が残した伝説の名言
W杯を彩る事件簿 今回は2002年日韓大会で生まれた「美しすぎる敗者の振る舞い」にフォーカス
1930年の創設から、これまで数々のドラマを生み出してきたFIFAワールドカップ(W杯)。
4年に一度の祭典で起きた印象的な出来事を振り返る「W杯事件簿」。今回は、2002年日韓大会の決勝トーナメントで起きた世紀の大誤審と、それに対するベルギー代表キャプテンのあまりにも立派な“神対応”にスポットライトを当てる。
舞台となったのは、決勝トーナメント1回戦の大一番。グループリーグで日本代表と同組だったベルギー代表が、優勝候補の大本命ブラジル代表に挑んだ一戦だ。
0-0の緊迫したスコアのまま迎えた前半36分、ベルギーに歓喜となるはずだった瞬間が訪れる。右サイドからのクロスに対し、キャプテンのMFマルク・ウィルモッツが打点の高い強烈なヘディングシュートを叩き込み、見事にゴールネットを揺らしたのだ。
金星を手繰り寄せる先制弾――誰もがそう確信したが、主審はシュートの前にファウルがあったとして、まさかのノーゴール判定を下す。リプレイ映像を見る限り、相手DFとの接触はほとんどなく、反則を取られる理由が全く見当たらないクリーンなゴールだった。
当然、この不可解な判定に納得がいかないウィルモッツは、ハーフタイムを迎えるとすぐさま主審の元へ向かい、判定の理由を問いただした。すると、主審の口から信じられない言葉が飛び出す。
「映像を見たが、ファウルはなかった」
なんと、試合中にもかかわらず、主審自らが誤審を認めて謝罪するという異例の事態に発展したのだ。しかし、一度下された判定が覆ることはない。絶好のチャンスを不条理な形で潰されたベルギーは、後半にブラジルの分厚い攻撃を浴びて2失点。0-2で敗北を喫し、ベスト16で無念の敗退となった。
この信じがたいジャッジは、のちに国際サッカー連盟(FIFA)が設立100周年を記念して制作したDVD『FIFA FEVER』の中で、「サッカーW杯における世界10大誤審」の第3位に堂々ランクイン。公式に“歴史的大誤審”として認定されることとなった。
本来であれば、怒り狂って主審を痛烈に批判してもおかしくない状況である。しかし、当事者であるキャプテンのウィルモッツは、試合後に決して言い訳をせず、こう語った。
「私は審判を非難しない。これが人生であり、これがサッカーだ。他のいかなるリーグでも起こり得ることさ」
理不尽な運命を受け入れ、相手をリスペクトする誇り高き振る舞い。W杯という極限の舞台でウィルモッツが残したこの名言は、“幻のゴール”への未練を断ち切る真のスポーツマンシップの象徴として、今もなお世界中のサッカーファンの胸に刻まれている。(FOOTBALL ZONE編集部)

