【全文公開】苦難を乗り越え「自分が攻撃の起点になる!」中村敬斗 ″イケメンすぎるキーマン″の誓い

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待望のW杯出場

「いい形で崩せましたし、チャンスもありました。僕自身、決め切りたかったシーンがあったんですけど、シュートかパスかで迷って中途半端なシュートになってしまって……。最後の質のところはまだまだ。ただ、いま絶好調というより、本番にピークを持っていければいい」

W杯前最後の対外試合となったアイスランド戦に1-0で勝利した後、左ウイングバックで先発した中村敬斗(25)は課題と確かな手応えを口にした。

北中米大会は中村にとって初のW杯となる。メンバー入りは5月15日の記者会見のライブ配信で知ったという。前回のカタールW杯後にA代表デビューを果たして以降、コンスタントに招集されてきたが、それでも本人は「ドキドキしながら配信を見ていた」と振り返る。

「ここまでやってきたことに自信はありましたが、選ばれるまで何があるかわからないし。メンバーに入ったときのSNS等の反響は、これまでの代表活動のときとは比べものにならなかったですね」

W杯は幼き日から特別な舞台だった。幼稚園の年長で見た’06年ドイツ大会がその後の人生を決めた。

「ロナウジーニョが好きでした。当時のブラジルはカカとかロビーニョ、ロナウド、″ロベカル″らスター軍団。見ていて楽しかった。すっかりサッカーにハマって、小3から柏レイソルのサッカースクールに通い始めました」

22歳で迎えた前回のカタール大会は、画面越しに観戦した。

「視聴者的な感じで。ドイツやスペインに劇的な形で勝って、凄いなって(笑)」

そして今回、中村は日本代表のキーマンとして北中米大会を迎える。

左サイドで「コンビ復活」

中村への期待が高まっている背景には、左サイドを巡るチーム事情もある。昨年12月に左ひざ前十字靭帯断裂の大ケガを負った南野拓実(31)が離脱。5月上旬のリーグ戦で左ハムストリングを負傷した三笘薫(みとまかおる)(29)もW杯出場を断念せざるを得なくなったからだ。

3月の聖地ウェンブリーでのイングランド戦では中村が左ウイングバック、三笘が左シャドーで先発。二人はポジションを巧みに入れ替えながら見事な連係を見せ、中村のラストパスから三笘が決勝点を奪った。W杯本番でも二人の連係は大きな可能性を感じさせていただけに、三笘不在の痛手は大きい。

「本人がいちばん悔しいでしょうし、いない選手の話をしても仕方ない。自分自身、ウイングバックになるのか、シャドーで出るのかわからない部分もある。どういう形になっても、近いポジションの選手といい形で連係できたらと思います」

アイスランド戦の前半は、左シャドーに入った伊東純也(33)と左サイドでコンビを組んだ。二人はかつてスタッド・ランスで一緒にプレーした間柄だ。

「純也くんとはランスでも一緒にやっていましたし、連係の部分はすごくよかったと思います。何回かいい形で崩せたし、そこは本番でも出せると思う。練習を重ねていけば、もっとよくなるはず」

中村は強豪国相手に結果を残してきた。ブラジル戦でのゴール、ウェンブリーでの決勝アシスト--その裏には知られざる苦悩があった。

「スタッド・ランスは’25-’26シーズン、フランス2部でした。あまりこういうことは言いたくないですが、2部リーグで満足しているわけではない。それを証明したいという思いも強かった。W杯に出場するためにも、ブラジルやイングランドのような強豪相手に自分の存在を示すことが必要だと考えていました」

昨夏、スタッド・ランスが2部に降格した際、中村は移籍を望んだ。だが交渉はまとまらず、W杯前の大事なシーズンを2部で過ごすことになった。

「チームとして結果が出ず、サポーターやファンからいろいろ言われて、イライラすることも多かった。この1年は、めっちゃ長く感じましたね」

それでもシーズン終盤に得点を重ね、最終的に14ゴールを記録。チームは1部昇格を逃したが、2年連続2ケタ得点という結果は残した。

「正直、気持ちを維持するのに苦労したのは事実です。ただ、それを支えてくれたのが″シーズン後にW杯がある″というモチベーションでした」

難しい環境でプレーしたからこそ、得られたものもあった。

「守備の1対1の強度は、そこまで1部と変わらないですし、チームには個人でどんどん仕掛ける若手が多かったので、味方と連係して崩すのが難しいところもありました。攻撃で1対1を仕掛ける場面は1試合で5〜6回はありましたし、周囲のサポートが少ない分、チャンスでは自分でシュートまで持っていこうと意識していました。積極的に仕掛ける姿勢は、代表でも活きていると思います」

感情はプレーに影響する

日本はグループFでオランダ、チュニジア、スウェーデンの順に対戦する。

「予選で不調だったスウェーデンも、プレーオフを勝ち抜いて調子を上げているみたいですね。欧州2ヵ国が入ったグループは簡単ではないと思っています。ただ、W杯に出る国はみんな力がある。そういう意味ではどこが来ても一緒ですよ」

初戦の相手はオランダ。右サイドには攻撃力のあるデンゼル・ドゥンフリース(30)がおり、中村が左ウイングバックで出場するとなれば、守備面でも大きな役割を担うことになる。

「僕一人で対峙するわけではない。3バックの左の選手もフォローしてくれる。来た選手に対して体をぶつけ、競り負けないことが大事。集中してやるだけです」

代表きってのイケメンは老若男女に大人気だが、少しも浮ついたところがない。「試合前はノリノリの曲を聴きたいところですが、実はスローテンポなバラードを聴いています」と中村は明かした。

「感情はプレーに影響しますんで。サッカーはひとりでテンションを上げてもしょうがない。いかに冷静に、自分のやれることをやるか。それが大事です」

中村のやれることは何か。「ゴールやアシストに繋がるプレー」だと彼は答えた。

「チームの土台であるハードワークや守備をしっかりやったうえで、自分の色を出せればいい。自分が攻撃の起点になることでチームを助けられたら」

仏2部で味わった悔しさも、ウェンブリーで得た自信も、すべてを力に変えて、中村敬斗が初めてのW杯で日本の左サイドを自分の色に染めようとしている。

『FRIDAY』2026年6月26・7月3日合併号より

取材・文:栗原正夫