東京拘置所で犯人と面会しようとした宇津木さんは「目は言葉以上に物を語る。だから犯人の目を見て話してみたかった」と語る。だが犯人は一言も発せず、視線を逸らしたままだった。事件直後に両親を訪ね「とにかく罪を償ってほしい」という言葉を直接聞いたが、遺族への謝罪はいまだにないという。

その後、彼を前へと押し出したのはYouTubeだった。裁判も終わり、犯人の無期懲役が確定していた2020年。取材を続けていた記者に「YouTubeでも思いを語ってみませんか」と声をかけられたのがきっかけだった。当時は深く考えられなかったが、今では「役者に戻るきっかけを作ろうとしてくれていたのだ」と理解しているという。

「最初は名前も顔も伏せ、“Tゾウ”として語り始めました」と振り返る。恋人との思い出や事件当日の記憶を少しずつ語るうちに、視聴者から共感や励ましの声が届くようになった。「気がつけば、チャンネル登録者は5000人を超えていたんです」と驚きを隠さない。さらにカメラマンから「これだけ応援されているんですから、もう一度やりましょうよ」と背中を押され、事件から6年が経った頃、再び役者に戻る決意を固めた。遺族にもその思いを伝え、墓前の彼女にも「オレ頑張る」と報告したという。

役者に戻ってからの宇津木さんは、動画に積極的に出演することはなかった。「日影のこえ」ではナレーションを担当し、画面に立つのは控えてきた。ユーチューバーではなく、“役者”として生きる道を選んだからだ。今回の動画は、実にほぼ4年ぶりに本人がカメラの前に登場したものとなる。

その間の4年間についても語った。オーディションを受けて芸能事務所に所属し、若手とともに稽古に励み、舞台に立ち続けた。「まだ大きな役は掴めていない。でも、やっぱり舞台に立つのが好きなんだと再確認しています」と話す。

そして今回、10年の節目を迎えて再びカメラの前に立った宇津木さんは、遺族と連絡を取り合っていることにも触れた。遺族と「10年はあっという間だった」と言葉を交わしたことを明かし、その思いを胸に「まずは彼女との夢だった“食える役者”になること。そしていつかアカデミー賞の舞台に立つことを叶えたい」と未来を見据える。最後に「応援してくれた方のおかげです。これからも頑張ります」と感謝を述べ、動画を締めくくった。

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