〈旭川・江別…2つの全裸集団暴行死〉「オトコ好きの肉食系、中学で孤立、共犯は年下…」記者が見た“主犯のオンナ”の共通点と相違点「江別事件は自首、旭川のリコ被告は逮捕すらネタに…」
北海道旭川市と江別市で今年、相次いで起きた男女グループによる集団暴行死事件。20歳そこそこの女が主導的立場を握った共通点はあるが、前編で紹介した旭川の「リコ」が「陽キャのワル」で知られる一方、江別の「ハオト」は無理してイキがる「陰キャ」だった。両事件の取材で靴底をすり減らした記者が事件の現場をリポートする。
〈写真〉“サンロクのリコ”こと内田被告と共犯の小西被告の写真、川村容疑者と共犯の彼氏Aの2ショット写真
川村容疑者は「フツーの子」“狭い”交友関係、いっぽう“リコ”は…
江別市の公園で長谷知哉さん(20)を男女6人グループで暴行・死亡させ傷害致死容疑で逮捕された同市の大学生、川村葉音容疑者(20)は釧路市の出身だ。実家周辺を取材すると、さまざまなことがわかってきた。
川村容疑者は2~3ヶ月前にも実家にいるところを目撃されていた。家族は両親と男兄弟が1人のようだ。
父親については「職人」「タクシー運転手」などの情報があったが、実際の職業は不明。しかし、近隣住民の印象は「ごく普通の家庭」であり、川村容疑者自身も中学、高校時代までは「ごく普通の子」だったという認識だった。
しかし、1ブロックも外れると『川村さんを知らない』とそもそも知られていなかった。要するに、「旭川のリコ」と比べると、目立つ存在ではなかったということだ。
また、中学、高校時代はバスケなどスポーツも得意で成績優秀な優等生ではあるが、学校では「目立たずどちらかというと陰キャで、友人も少なかった」という証言が多い。
しかし、一方でチャラい男子には自分から交際を申し込みに行く「肉食系」だったという証言も多数あり、恋愛には積極的だったようだ。
高校卒業後は江別市内の大学に進学するためアパートを借り、コンビニでアルバイトを始めた。ここで知り合った17歳のA容疑者と交際をスタートさせ、バイトのシフトが被ると『幸せ』と自身のSNSで発信していた。
交友関係も、このバイトを中心とした輪の中にとどまっており、基本的には「狭い」。旭川の夜の街では知らない者がいなかった「リコ」と比べ、川村容疑者がアウトローだったという印象は取材から受けない。
ただ周囲に避けられ続けた少女時代を過ごし、大学に行き、少しずつ自身の周囲の環境が変化していく最中、調子に乗って羽目を外しすぎたという印象を受ける。
「何見てんだよ」二人とも他者に対し攻撃的な部分があった
こんな相違点が多い内田被告と川村容疑者だが、両者が率いた事件の共通点は、年下の少年らが関与し、被害者を裸にさせたということ。
内田被告も川村容疑者も、性欲が強く男に対して積極的だという証言が多数あり、これが少年たちが犯行に加わったこととどう関係していたのかも調べが進めば明らかになるだろう。
そして両者とも中学、高校時代はともに周囲から距離を置かれた存在だった。内田被告の場合は『関わり合いになりたくない』という理由が多く、そこにはワルだった内田被告に対する恐怖心もあると思われる。
川村容疑者の場合は男子にも女子にも嫌われていたという理由だが、これについては「カエルに似ている」など容姿いじりに端を発する「いじめ」の延長ではないかと思われる。
また二人とも、他者に対し攻撃的な部分があった。大学入学後の川村容疑者は、講義の際に自分が座りたかった席が埋まっていると、あからさまに「邪魔くさいなー」とその学生に聞えるように声を上げていたという。
内田被告は中学生時代から暴力的なエピソードには事欠かず、事件の直近も旭川の繁華街・サンロク街で「何見てんだよ」と通行人に絡んでいた姿を見られていた。
先ほどもふれたが、両者の交友関係には圧倒的な違いがある。内田被告は旭川一の歓楽街であるサンロク街をはじめ、地元一帯の年代や男女を問わず知られていて、その層も様々だ。クラブなどのストリート系の人間や、ヤクザ関連、ギャル。旭川に限らず札幌市や九州にも友人がいたと言われる。
一方、川村容疑者は基本的にはコンビニ回りと同じ大学の人間にしか知られていないという印象を受ける。内田被告は陽キャで、川村容疑者は陰キャという証言通り、交友関係もまったく異なっているのだ。
これはあくまで取材した所感でしかないが、内田被告は幼少時から繁華街に出入りし、アウトロー慣れしていたという印象だ。ヤンキーや不良とも繋がりがあり、「暴力」に親和性があったと思われる。
一方で川村容疑者に関しては、半グレや不良などが用いる暴力とは異質の、例えば物に当たるとか、不快な思いをさせるなどの暴力性がある印象を受ける。
川村容疑者に関しては自身も高校時代、「カエル」と呼ばれるなど、周囲から言葉の暴力を受けている。内田被告は昔から体格がよかったこともあり、自身が暴力の被害には遭わずに育ったとみられる。
共犯として従えた小西被告のことは「舎弟」扱い
違いといえば、江別の事件は発覚から2日で容疑者逮捕にこぎつけているが、旭川は事件後2ヶ月近く経ってようやく強制捜査に着手している点が大きく異なる。
内田被告は事件後も旭川のナイトライフを満喫していて、4月下旬に女子高生を恐喝していた容疑がかけられた際には、自宅に警察が来たことをインスタのストーリーにあげていたと文春オンラインが報じていた。
自身の逮捕ですらネタにする強心臓の持ち主とも言え、共犯として従えた小西被告のことは「舎弟」扱いしていたことも知られている。
一方の川村容疑者は10月28日午後、『事件に関わっている』と2人の少年とともに出頭している。友人であり被害者の交際相手でもある八木原亜麻容疑者(20)が26日夕方に自ら警察に通報したことからも、事件を起こしてしまったことに慌てているという印象を受ける。
キャラの陰陽、交友関係の広さや狭さなど対照的な「リーダー」2人が起こした凶悪な北海道の“リンチ事件”は、関係者のみならず全国に衝撃を与えた。加担した人間がそれぞれどう自覚していようがいまいが、被害者が生き返ることはない。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班