決勝進出を決めた常葉大菊川・大村(左から2人目)の手には背番号3のユニホームがあった(カメラ・伊藤 明日香)

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◆秋季高校野球東海大会▽準決勝 常葉大菊川5―4至学館(26日・草薙球場)

 常葉大菊川が至学館(愛知)との県1位対決を5―4で制し2年ぶりの決勝進出。2023年以来となるセンバツ出場を“当確”とした。佐藤大加良(たから)二塁手(2年)が6回に口火を切って同点に追いつくと、7回には勝ち越しの適時二塁打を放った。切り込み隊長でチームの支柱でもある橘木千空主将(2年)ら主力2選手が不在の中、チームが一丸となって4点差を逆転した。27日の決勝は大垣日大(岐阜1位)と対戦する。

 右手を大きく振り下ろした。常葉大菊川・佐藤大加が、こん身のガッツポーズだ。同点で迎えた7回2死二塁。内角スライダーをさばくと、ライナー性の打球が左翼線で弾んだ。勝ち越しの適時二塁打に、主将代理を務めた副主将トリオの1人は「二塁に着いた時に仲間の喜ぶ姿を見て、うれしくなった」と喜びをかみ締めた。

 絶対に負けたくなかった。大一番を翌日に控えた25日の夜、体調不良で橘木が準決勝を欠場することを知った。県初戦から6試合で打率6割5分4厘の1番打者は、ベンチを鼓舞し続けた主将だった。さらに、2番の小川優人中堅手(2年)も負傷離脱。衝撃的なニュースに「戸惑ったが、全員でカバーするしかない」と誓い合った。

 試合前には、橘木から「絶対に勝てるから自信を持って」と伝言をもらった。主将のエールに、佐藤大加も応えた。3点を追う6回には同点の口火を切る左前打を放つなど3安打。石岡諒哉監督(35)は「橘木への思いを体現できてよかった」と労った。

 1点リードの9回は一死満塁のピンチも、無失点で切り抜けた。喜びは格別だった。ナインは試合後の整列で、ベンチ内に掛けていた背番号3のユニホームを掲げ、喜びを分かち合った。指揮官も「あいつのためにも負けられなかった。いい報告ができる」とうなずいた。先発した大村昂輝投手(2年)は2回までに4点を献上するも、3回以降は得点を許さず4失点完投。「ここで負けたら、橘木は全部背負ってしまう性格。負けちゃだめだと思っていた」と胸をなで下ろした。

 来春センバツの東海地区一般選考枠は「3」。決勝は17年ぶりの優勝を懸けて大垣日大と対戦する。橘木が出場できるかは微妙な状況だが「しっかりとした逆転勝ちは、秋では初めて。自信になった」と佐藤大加。仲間を思う気持ちを力に変え、チームの目標でもある明治神宮大会(11月20日開幕)切符を勝ち取る。(伊藤 明日香)