都内にラーメン店は数知れず。その中から、醤油・塩・味噌・豚骨、それぞれのおいしい店を調査。「東京のうまい「究極の醤油ラーメン」ベスト3…透き通るスープ、ダシ濃厚《亀戸・森下・梅屋敷》で覆面調査」に引き続き、新旧の三ツ星店を一挙にお届けします。五臓六腑にしみわたる一杯をどうぞご賞味あれ。

大山「おさだ」

『支那ソバ おさだ』ワンタンメン

てるてる坊主型のワンタンは、修業先『支那ソバ かづ屋』のトレードマーク。豚の赤身と長ねぎ、玉ねぎ、生姜、調味料を乳化するまで練り上げるところまでは本家譲りだが、「もっとなめらかな、チュルッとした食感にしたい」と、皮は店主好みの薄めに仕立てている。 半数以上がオーダーする一番人気で、ワンタンが5粒ものる。

店主の長田さんは自由が丘の名酒場「金田」出身だ。と聞けば確かな腕と納得だろう。うれしいのはそんな名店仕込みの旬肴はもちろん、家庭的なハムエッグご飯や焼きそばなど身近な味もしっかり揃うこと。

同じ素材でも味付けや調理を変え、なるべく多彩に楽しめるよう工夫しているとか。ちなみに料理を盛る器の多くは陶芸家の姉の作品。卓上での姉弟共演にニッコリ。酒も一段と旨くなる。

祐天寺「Ramen Break BeatS」

『Ramen Break BeatS(らーめん ぶれいく びーつ)』特上醤油らぁ麺

見よ、このシュッとした佇まい。箸を入れていいものかと一瞬ためらうも、グラマラスな醤油と鶏の香りの誘惑に、我慢の限界だ!舌の上にのしかかる力強い旨みは地鶏「天草大王」がもたらすもの。その後ろから、天然醸造醤油の芳醇な風味が追いかける。

パツンと歯切れのよい麺は香り豊かな北海道産小麦、チャーシュー用の豚ロースは「やまゆりポーク」、鶏ムネ肉は「大山どり」。コリコリのメンマは国産の糸島メンマ、ねぎは九条ネギと、脇を固める素材も国産ブランドを貫く。それも、フレンチやイタリアン、和食と各方面で腕を磨いた店主が腕によりをかけて。見かけ倒しなわけがない。

北綾瀬「Made in Tokyo らーめん 松」

『Made in Tokyo らーめん 松』らーめん鰹

丼から立ち上がるカツオの香りが食欲をそそる。ゴマ油で揚げた千住葱の香ばしさをアクセントに、すすり心地のいい平打ちに近い太麺で、あっという間に完食。動物系の脂に頼らず、豚の背骨・豚肉・鶏ガラ・鶏肉・香味野菜、15時間炊き上げた豚骨で構成する「らーめん鰹」のスープは濃密でもアッサリだからだ。

「らーめん醤油」は、すすると口の中で踊るちぢれ麺に驚く。こちらはスープにチャーシューダレと非加熱の醤油を使用した、昭和の東京ラーメンを彷彿させる味わい。どちらもラーメンの基本を丁寧になぞり、素材の持ち味を細かく重ねた食べ飽きない1杯だ。

木場「麺屋 ルリカケス」

『麺屋 ルリカケス』醤油そば

錦糸玉子や鶏のほぐし身といった具材は、奄美大島の郷土料理「鶏飯」から着想を得たもの。スープも鶏飯と同じ鶏とカツオ節を軸にした構成で、鶏飯の味を知っている人は、あまりにも似ていて笑っちゃうかも。

それでもラーメンとして成立しているのは、分厚い旨みの層のおかげ。「黒さつま鶏」や備長炭で燻した本枯れ節など、鹿児島産の高級食材を惜しげなく使い、重厚な醤油ダレにも負けないコクと余韻を体現している。

看板の「醤油そば」は、九州うどんのようにやさしい食感の手揉み麺と、蕎麦の如くのど越しのよい細麺を用意。同じ味なのに、麺でスープの印象が変わるのが不思議!

…つづく「東京の本当うまい「町中華のラーメン」ベスト6店…なんと一杯《600円》、スープ絶品《浅草・大森・人形町・大井町・千歳烏山・清澄白河》で覆面調査隊が発見」では、あまたひしめく町中華のなかから、おいしいラーメンの店を紹介します。

『おとなの週末』2023年2月号より(本内容は発売当時のものです)