米経済学者「テロ犯罪者と起業家は一緒」…元米経済学会会長が唱えた「日本人は知らない」両者の共通点とは

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近年注目が集まっているアントレプレナーシップ。「起業家精神」と訳され、高い創造意欲とリスクを恐れぬ姿勢を特徴とするこの考え方は、起業を志す人々のみならず、刻一刻と変化する現代社会を生きるすべてのビジネスパーソンにとって有益な道標である。

本連載では、米国の起業家教育ナンバーワン大学で現在も教鞭をとる著者が思考と経験を綴った『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』(山川恭弘著)より抜粋して、ビジネスパーソンに”必携”の思考法をお届けする。

『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』連載第58回

『自身の発明が“戦争”に使われ「生まれてきたことを後悔」…ダイナマイトを発明したノーベルから学ぶ「この世の本質」』より続く

起業家の質にこだわる

経営学者のウィリアム・ボーモル氏といえば「コスト病効果(ボーモル理論)」の提唱者として知られています。生産性の高い業界がコスト高になると、生産性の低い業界でも価格上昇が避けられなくなるという原理であり、現代の経営学の基礎とも言える内容です。

そしてボーモル氏が残したもう一つの経済学の古典とも言える論文があります。

“Entrepreneurship : Productive, Unproductive, and Destructive”です。アントレプレナーシップには種類がある。世の中を良くするために、単にアントレプレナーの数を増やすことではなく、その質にこだわることが大事である、という主旨を説いたものです。

基本的に多くの起業家は「より良い世の中」を志向しています。いまよりも良い世の中にしたいと願っているのです。これは「プロダクティブ(生産的)」なEntrepreneurshipだといえます。

テロ犯罪者と起業家の共通点とは

しかし、残念なことにプロダクティブではないものも存在します。その一つが、「アンプロダクティブ(非生産的)」なEntrepreneurshipです。脱税のためのトンネル会社をつくる。あるいは、補助金を得るために起業し、補助金を取り終えたら会社を解散する。新規事業を起こすと低利でお金を借りられるから、新規事業を立ち上げる。裏金や賄賂、詐欺行為など、ただお金を得るためだけに起業する、これらがその例です。もはや起業と呼びたくもありません。

もちろん、活用できる補助金や制度は最大限に活用するべきです。しかし、それはあくまでも手段の一つであって、目的とはなり得ません。もう一つ、「ディストラクティブ(破壊的)」なEntrepreneurshipにも触れなければなりません。これはたとえば、テロ組織、犯罪組織などの場合を指します。テロ組織などの中には「世界を変えたい」という夢があり、それを実行する行動があり、人を巻き込む力があります。要素だけを取り出せば、起業家と変わらないように見えます。

しかし、決定的に違うことがあります。それは「倫理観」です。どんな世界にしたいのか?そのためにしてもよいことは何で、何がだめなのか?

その判断は、その組織の倫理観によるのです。

『なぜ日本人は「お金儲け」を嫌うのか…目の敵にされる「お金儲けをする人」の正体とは』へ続く

なぜ日本人は「お金儲け」を嫌うのか…目の敵にされる「お金儲けをする人」の正体とは