宇宙論や超弦理論と関係している「結び目理論」とは何か。「円周を結んだ」不思議な図形が宇宙の謎をほどく!?

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宇宙はどんな形をしているのか? その謎に迫るために取り入れられているのが「トポロジー:位相幾何学」と呼ばれる数学です。このトポロジーの中でも、超弦理論との関係から近年注目されている「結び目理論」や、宇宙空間を考えるうえで重要になる「高次元幾何学」を中心に、この不思議な世界を紹介する新刊『宇宙が見える数学』。その中から、この記事では本書のテーマである「結び目理論」について紹介します。

*本記事は『宇宙が見える数学』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。

結び目とはなにか?

円周1個を3次元空間に自己接触なく置いたものを「結び目」と言います。ここで、おさらいをしましょう。

長方形を1回(360度)捻って同一視した(貼り合わせた)図形は「アニュラス」でした。このアニュラスを真ん中で切ってできる図形の中心線が「2本の絡んだアニュラス」です(図1上)。これは柔らかな紙などを使って実際に作ってみるとわかりやすいです。

次に、長方形を1回半(540度)捻って同一視した(貼り合わせた)図形は「メビウスの帯」でした。これを同様に、真ん中で切ってできる図形の中心線は「結び目」です。

結び目というと、日常では線分を(曲げていって)結んだものを考えることが多いのですが、数学用語では「円周を結んだもの」です。この結び目は、数学だけでなく物理、宇宙論、化学、生物学などさまざまな研究のなかに応用されています。

円周n個を3次元空間に自己接触なく置いたものを、「n成分絡み目」と言います(nは自然数)。結び目と「1成分絡み目」は同物異名です。

図1の下図の1回半捻りして作ったメビウスの帯を中心線で切った時にできる「絡んだアニュラス」の中心線2 本は「2成分絡み目」を形成しています。

結び目理論は宇宙論や超弦理論と関係している!

では、どのような結び目や絡み目があるのでしょうか? また、結び目や絡み目にはどのような性質があるのでしょうか? このような研究する数学の分野を「結び目理論」といいます。

偉大な理論物理学者のエドワード・ウィッテンは、結び目理論が宇宙論や超弦理論と非常に関係が深いということを発見しました。

彼は超弦理論を専門とする物理学博士ですが、ノーベル物理学賞ではなくて数学の賞であるフィールズ賞を受賞しています。

もっと捻って図形を作ったらどうなる?

この記事の最後に、捻る回数をさらに増やした場合について見ていきましょう。

2回捻った状態のアニュラス(図3上)を中心線に沿って一周切りきるとどうなるでしょう。どのようなものが得られるでしょうか?

答えは、図3の下のように2個のアニュラスが絡んでいます。

ただし、絡み方がさきほどの1回捻ったアニュラスを切ったときの絡み目とは違うことに注意してください。また、それぞれのアニュラスは捻られています。その捻られ方も異なります。

nをなんでもいいので整数とします。n回捻られているアニュラスを中心線に沿って切った工作の結果、できたものの中心線を「(2,2n)トーラス絡み目」と言います。

また、(n+2分の1)回捻られているメビウスの帯を、中心線に沿って切ったときに、できたものの中心線を「(2,2n+1)トーラス結び目」と言います。

中心線で切る工作では作れない「8の字結び目」

ところで、下の図4を見てください。

この結び目は「8の字結び目」(figure eight knot)と言います。8の字結び目は、「アニュラスもしくはメビウスの帯を中心線で切る工作」ではできません。これは、古くから知られています。

結び目の性質の研究は現在も発展しています。宇宙や高次元空間の研究にも「結び目理論」は欠かせないものです。

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