和楽器バンドが10月9日にリリースした『ALL TIME BEST ALBUM THANKS 〜八奏ノ音〜』、LIVE Blu-ray『和楽器バンド 大新年会2024 日本武道館 〜八重ノ翼〜』​がどちらも好調だ。

2024年末での無期限活動休止を発表している和楽器バンドにとって、この2作はファンへ向けた大きな感謝が込められた大切な作品。ぜひ和楽器バンドが10年の歴史の中で培ってきた実力を味わってほしい。

BARKSでは本作の魅力と、メンバーの想いを知るためにソロインタビューを実施。第4回目の今回は、冷静沈着で頭脳派、変幻自在なプレイで魅了する箏奏者・いぶくろ聖志の言葉をお届けする。

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   ◆   ◆   ◆


◼︎鮮明に見えてくるものを楽しんでもらうのがリレコーディング

──ベストアルバム『ALL TIME BEST ALBUM THANKS 〜八奏ノ音〜』は、活休前最後の記念すべき作品になりましたね。まず、初期曲「六兆年と一夜物語(Re-Recording)」「千本桜(Re-Recording)」「華火(Re-Recording)」について振り返っていきたいのですが。

いぶくろ聖志:リレコーディングした曲の中でも特にこの初期の3曲は、和楽器バンド10年間の成長が1番わかりやすい曲なんじゃないかと思うんですよね。「どういうものが和楽器バンドらしいか」っていうのを模索した答えっていうのがここで提示できてるんです。

──いぶくろさんが思う和楽器バンドらしさってなんですか?

いぶくろ聖志:“衝撃”ですね。僕は、和楽器バンドが荒削りだった頃も好きなんですよ。みんなががむしゃらに「僕たちこんなことができるぞ!」ってことを見せあってた頃。「黒流さんそんなことできんの!?」「大さん、これ吹けちゃうんだ!」とか新鮮な衝撃がたくさんあって、それをずっと覚えてるんですよね。アメリカツアーに行ったときもタイトルに<衝撃 -DEEP IMPACT->って掲げていましたけど、「初めて経験するものをリスナーの皆さんに届ける」ということが、僕たちにしかできない、僕たちらしさだったと思います。

──確かに。和楽器バンドは10年ずっと、いろんな驚きを与えてくれました。

いぶくろ聖志:みんながそれぞれ自分の持ってるカードを全部切って、ある程度成熟した今は、“綺麗に構築されたまとまった音を出せるようになった”ことが新しさだったり驚き、衝撃ってところになるんだと思います。

──いぶくろさんは、初めてみんなで音を合わせたとき、どのような衝撃を受けましたか?

いぶくろ聖志:あのときは初台にある普通のスタジオに入ったので、人が入るだけでいっぱいいっぱいだったし、みんなが自分のやるべきことをやるのに一生懸命みたいな感じで、多分俯瞰できてる状態の人はいなかったんじゃないかな(笑)。なので音を合わせたときじゃなくて、レコーディングっていう作業を通して初めて自分たちの音を認識できたというか。

──箏奏者としては、どうあろうと思っていましたか?

いぶくろ聖志:箏らしさをちゃんと出すようにしつつ、出し惜しみするってところが大事だと思ってて。箏の技法って色々あるんですけど、初期のレコーディングの時とかは、「グリスを入れて欲しい」って要望されることも結構多かったんですよ。(一音一音区切らずに滑らせるように弾くこと)

──あぁ、とてもわかりやすい“お箏っぽさ”が出ますもんね。

いぶくろ聖志:わかりやすいし、箏っぽいし、場面転換とかサビ前とかに入れると盛り上がるし。でもそれを全曲でやっちゃうと、箏=あの音ってなってしまうのが嫌で。奏者としての引き出しも増えないですし。なので、初期の頃は箏という楽器の良さを魅せつつ、イメージが偏らないようにしようといろんなことを試していました。


──初期のアルバム『八奏絵巻』を出したころの、いぶくろさんのお気持ちはどんな感じだったんでしょうか。

いぶくろ聖志:『ボカロ三昧』っていうカバーアルバムから、全曲オリジナルの『八奏絵巻』を出すことになったから、怖かったですね。カバー曲っていう人気の裏付けが取れている曲が入らないわけですし、僕たち自身も「千本桜」の編成の面白さが受けたのか、僕たちの音楽性が受けたのか、まだ判別ついてない段階なので。大所帯になればなるほど、1回こけるとそれで終わりになってしまうじゃないですか。だから「オリジナル曲を世に出したい」という思いはありつつも、どこか冷静に「今回オリジナル曲が受け入れられなかったら、会社から見放される可能性もあるかもしれない」と感じながらやってた気がします。

──なるほど、結構シビアに自分たちのことを見ていたんですね。

いぶくろ聖志:みんな売れない時代が長かったので、楽観的じゃないというか。いろんなことを経験してきたメンバーが集まったバンドなので、「何もかもが順調に行く」とは誰も思っていなかったと思います。

──始動時点でそういった大人の視点をお持ちだったということも、和楽器バンドのひとつ面白い部分だったと思います。今回は、そんなバンド初期のアレンジを変えずにリレコーディングしたんですか?

いぶくろ聖志:ほぼ変えてないです。ライブをやってきた経験値の中で、ナチュラルに変わってるとこだけで、自覚してアレンジを変えたところはあまりないですね。

──実は、失礼ながらリレコーディングを聴いて「ここにもこんな箏のフレーズが入っていたんだ!」って思ったところが多くて。

いぶくろ聖志:音の聴こえ方が変わったからですね。かなり整理されましたよね。解像度が上がったというか。弾いてる自分には聴こえてきちゃうから客観的な目線で見れなかったんですけど、いろんな方にそう言われて逆に新鮮だったりするんですよね(笑)。じっくりヘッドホンでひとつひとつの楽器をパートごとに追ってもらうと、その度に見える景色が変わってくるはずです。多分前よりも鮮明に見えてくるものが多いと思うので、 それを楽しんでもらうのがこのリレコーディングじゃないかと思います。

──箏の聴きどころを教えてください。

いぶくろ聖志:「華火(Re-Recording)」の1Aは、実は超絶技巧なんですよ。原曲のレコーディング当時は、そのときの僕が精一杯調子がよくて弾ける、ちょっと背伸びしたフレーズだったんですけど、今回は背伸びせず弾けたので、自分でもうまくなったなって思いました。

──「起死回生(Re-Recording)」「雨のち感情論(Re-Recording)」「細雪(Re-Recording)」などは、和楽器バンドの歴史で中期ぐらいに当たるのかなって思うんですけど、この辺って和楽器バンドってどんなモードでしたか?

いぶくろ聖志:この辺は、みんなレコーディングで自己主張をするというよりは、自分が作った曲で自己主張をする時期に入ったかなっていう印象ですね。5thアルバム『オトノエ』ぐらいのときが、多分全員が一番積極的に作曲してたころかな。だから音楽的なジャンルとしても幅広く、実験的になりましたね。そのことでそれぞれの技法の引き出しも増えて、和楽器バンドができることが拡大していきました。

──そのころの箏の音色については、引き算が多くなってきたのかなっていう印象だったんですが。

いぶくろ聖志:そうですね、『四季彩-shikisai-』か『オトノエ』くらいでコード進行にすごいこだわる傾向が出てきたんですよ。さらにそのコードの中でのボーカルの立ち位置が、結構攻めたとこにいたりとか。そうなってくると、 余計なことをしない方が曲が映えるなって思うことが増えてきて。 箏としては技法云々というよりは、音色として存在はしつつも全体的なまとまりの方を優先してる時期かもしれないです。ボーカルや旋律をちゃんと聴かせることを重要視するというか。



──そんな中期曲のリレコーディングはいかがでしたか?

いぶくろ聖志:10年間やってきたライブで成長してきた曲を残す、という観点もあるので、このあたりの曲も基本的にはアレンジを変えてなくて。新曲のレコーディングだったら手探りの中やってくことが多いんですけど、リレコーディングに関しては自分の立ち位置がわかってるので、俯瞰して他のパートの音も聴きながら音を入れることができました。

──いぶくろさんは昔、歌詞から音のイメージを考えるとおっしゃっていましたが、まさに「雨のち感情論(Re-Recording)」はその表現力が活かされているなと感じました。《夜空》《一番星》といった歌詞の裏で箏のトレモロが入るから、星がキラキラ輝いてる様子が目に浮かぶんです。

いぶくろ聖志:僕が思う箏が得意とすることって風景描写だと思っているので、まさにそういうことです。あと、“その曲でこのフレーズを箏が弾く必然性”っていうのが欲しいんですよね。コードを弾くだけだったら他の楽器で十分だから、箏で入るからには自分が納得できないと嫌で。

──インストゥルメンタルを聴きながら、「これってどういう意図でこの音なんだろう」と考えていくのも面白そうですね。

いぶくろ聖志:そうですね。そういう風に聴いてもらえるのも、結構嬉しいかもしれないです。

──「細雪(Re-Recording)」は大幅にアレンジが変わっていますね。

いぶくろ聖志:「細雪」が入ってる『オトノエ』の頃って、まっちー(町屋)がトランペットを吹いてたり、オーケストラに入ってもらったりと他の楽器の音も取り入れようとしていた時期で。「細雪」もオーケストラを入れていたんですが、今回こうして曲だけが持つエッセンスを再提示できたことが非常に面白いです。どこがその曲の芯なのかっていうことが、ここで明確に浮き彫りになりましたね。

──「細雪(Re-Recording)」みたいな和風バラードは、箏が似合いますよね。

いぶくろ聖志:合いますね。でも、これはまっちーが指定したフレーズが多くて。イントロの一番印象的なフレーズもそうですね。サビはそれを僕が発展させた形で、2Aは僕の自由に弾いています。2Aでは箏っぽいフレーズを入れることで、雪がひらひらと空気中をいろんな方向に舞う感じを出せたらいいなと思って。サビは元々イントロと同じ音域で入ってたんですけど、それをオクターブ上げて、さらに和声感をちょっと足すことで曲の立体感を出したいなと思ってフレーズを作りました。

◆インタビュー(2)へ


◼︎和を楽しみたい人たちに、いろんな機会を作る

──いぶくろさんはもともとバンドもしていましたし、コード感を理解している箏奏者であるということも、和楽器バンドの音楽性に一役買っていたと思うんですよね。神永さんが自由な奏者であるのと対照的に、計算された箏奏者というか。

いぶくろ聖志:それはあるかもしれないですね。レコーディングでも、迷ったときはフレーズを2パターン作って持っていったりしていました。できるだけ明確に、自分の思いを伝えるために。

──そういう感性がもっとも活かされたのが、ユニバーサルミュージック移籍後だったりするのではと。移籍一発目の「Ignite」はこれまでの印象を一変しましたし。

いぶくろ聖志:「Ignite」はかなり実験的だったと思うんですよね。僕も「一発目ここなんだ」っていう気持ちはありました。移籍一発目だからこそできる冒険というか、面白い提示だったと思います。このときはちょっと珍しいノイズ系の技法を入れたりしながら、疾走感を箏で出せるようにアレンジをしましたね。衣装もね、ガラッと変わった感じだったので、それも新しい再出発だからこそでしたよね。



──いぶくろさん自身は、“和楽器バンドのイメージを変えたい”と思うようなことはありましたか?

いぶくろ聖志:どうだったかな。僕自身の個人的な生き方としては、箏奏者っていうこともあるので、 日本っぽさとか和っぽさっていうところをすごく大事にしたい気持ちがあります。ただ、和っぽく見えすぎちゃダメっていうラインもあるんですよ。堅苦しくなったり、近寄り難くなるというか。和風すぎると敷居が高くなるし、古臭くてつまんなく見えてしまうことは往々にしてあって。なので和楽器バンドが始まる前からずっと、和と和じゃない要素のバランスは自分の中でずっと課題だったんです。和楽器バンドが始まる前なんかは、お客さんのアイキャッチになりたい思いで、あえてTシャツにジーンズで箏を弾いたりしてたし。そういう意味では、着物っぽさがない衣装で「Ignite」みたいな曲を和楽器を使ってやるっていうトライは、やってみて面白かったですね。

──そうですね。ユニバーサルミュージック移籍後の作品は、「そうそう、これ欲しいのよ」「わ!こんな感じを出してくるか」という両方を提示してくれていたような。

いぶくろ聖志:4枚もアルバムを出してくると、 期待通りのイメージと、新しいものを出してほしい感じと、せめぎ合ってくるじゃないですか。その中では、「Ignite」は面白い提示だったかなっていう気はしますね。

──「Starlight(I vs I ver. )」に関しては、個人的にはこれが一番箏の音飾が面白いと思うんです。

いぶくろ聖志:素朴な感じでポツポツずっといるみたいなね。これは、居場所が難しい曲だったんですよ。何やっても邪魔になる気がして。言ってしまえば、和楽器っていなくても成り立つ楽曲ばっかなんですよ。要は、もう完成してるものにどう邪魔をしていくかっていうのが、和楽器のポジションなので。でも「Starlight(I vs I ver. )」ぐらい整理されてると、邪魔の仕方が難しいって思ったんですよね。その中で、星の瞬きみたいにサビの裏でずっと箏が入っていたり、寄り添うように入れたAメロなどは聴いてほしいポイントですね。唯一箏っぽい技法を使ったのがイントロだけなんですけど、押し手というチョーキングのような技法を使って、他の楽器ではできない箏っぽさっていうのを出しながらアレンジを完成させていったんですけど、すごく難しかった。レコーディングが終わっても、「これで良かったかな」「もっと主張した方がよかったかな」「でも、それじゃ邪魔だよな」って悩みましたね。



──ユニバーサルミュージック移籍後の曲で、箏奏者として面白かった曲といえば?

いぶくろ聖志:ギターから箏や三味線へのソロの掛け合いが綺麗にハマった曲とか、和楽器がいることに意味がある楽曲は面白かったなと思います。「情景エフェクター」は、これも「Starlight(I vs I ver. )」と一緒で、いかに箏っぽくないことをするかみたいな感じでしたね。すごい細かい話になっちゃうんですけど、箏ってミュートが結構大変で、音を出すとずっと鳴りっぱなしなんですよ。「情景エフェクター」はどの音を選んでミュートするか、ということの調整をすごく考えて。前奏や間奏で、箏だけが伴奏をして浮くところがあるじゃないですか。そこで音がずっと重なりすぎないように、歯切れよく、でも箏っぽさを失わないようにっていう、箏奏者以外にはわからないようなこだわりが詰め込まれています。

──ちょっとEDMっぽい、シンセっぽいところを箏が担っていますもんね。その部分を表現するとなると、確かに箏の響きの部分は必要ないという。

いぶくろ聖志:そう。それをいかに生っぽさを損なわずに、打ち込みっぽさをを出していけるかみたいな、相反するところがありましたね。

──そもそも、そこが和楽器バンドの面白いところですよね。普通のバンドだったら、打ち込みにしますもん。それを和楽器という不自由な楽器でリアルに表現する。

いぶくろ聖志:それが、和楽器がバンドメンバーにいる理由ですからね。実は全曲の中で「情景エフェクター」が一番手が疲れる曲なんです。聴いている分にはすごく普通だと思うんですけど、この曲は合せ爪という技法でずっと手を動かしてる感じです。しかもライブのときは、前にイントロ弾きながら喋ることが多くて「1曲だけでも辛いのにさらに弾く時間伸びますか!?」ってなりますね。地味だから多分誰も大変だと気付いてくれないんですけど(笑)。

──へぇ! 実際にお話を聞いてみないとわからないものですね。ベストアルバムと同時発売された映像作品『和楽器バンド 大新年会 2024〜八重ノ翼〜』収録曲で面白いなと思う曲は?

いぶくろ聖志:『ボカロ三昧2』に入れた「いーあるふぁんくらぶ」と「ベノム」ってちょっと面白くて。「いーあるふぁんくらぶ」って、和楽器で中国っぽい音を表現するわけじゃないですか。中国っぽく聴こえるけど、実は和楽器っていうのが頭の中で矛盾なく入ってくる。すごくうまくいったなっていう感じなんですよね。「ベノム」も結構和楽器向きじゃないというか、1stアルバム『ボカロ三昧』と同じテンション感でチャレンジする曲でしたね。和楽器とか箏っていう枠組みを超えたところでアレンジできたので、すごく面白いと思っています。



──そして、最新の和楽器バンドが提示する新曲「GIFT」は、どんな楽曲になりましたか?

いぶくろ聖志:この10年という時間の中で皆さんからもらった“ギフト”に対する感謝であり、僕たちから皆様に贈る“ギフト”ですね。今だから出せる、10年間やってきたことの答えがこの曲なのかなと感じています。初期の頃にこれをやっても説得力がないし、当時の僕らだったらもっと色々音を詰め込んだ曲になってるだろうし。10年経って、このチーム8人それぞれがお互いのことを理解してきた中で、本当にいいタイミングで出せた曲かなっていう気はします。

──本当にそうですね。もうひとつの新曲「八奏絵巻」の感想も聞かせてください。

いぶくろ聖志:頭の中で鳴った音のうしろに想像通りの次の音が続いて来ないじゃないですか。ジェットコースターに乗ってるというか、一気に10年間が目まぐるしく思い出される走馬灯のような感覚でした。レコーディングしてる時も、うっかり次のフレーズが違うのが浮かんじゃったりとかして。まだね、これバンドで合わせてないんですけど、「(ツアーの)リハーサルの時、結構大変かもな」って薄々思ってます(笑)。気持ちが入れば入るほど続きを弾きそうになるっていう理不尽な曲なので、「気持ち入れすぎちゃいけないけど、入っちゃうよね。どうしようかね」みたいな。

──この曲で、いったん10年間が締めくくられると思うと、こちらもどうしても気持ちが入ってしまいます……。活動休止については、いぶくろさんはどのようにお考えですか?

いぶくろ聖志:10年やってみて思うのが、和楽器バンドの音楽を必要としてくれてる人がまだいるのに、そこに届いてないという感覚があるんですよね。これを言ったら元も子もないんですけど、和楽器バンドはロックミュージックっていうジャンルにくくり分けされてしまうからこそ手が出ない人もいるだろうし、その逆で和楽器っていう要素が入ってるから手が出ない人もいるでしょうし。 本当だったら、和楽器バンドの音楽がすごい刺さってくれる人がまだまだいっぱいいると思うのに、届けられていない。それをどうクリアするかというと、8人がそれぞれ違うフィールドで活躍して、「この人って元々何やってたんだろう」と思わせる。そこで和楽器バンドに触れてくれる人が増える気がするんですよね。そういう意味でも、活休は意味があるというか。8人だと入っていけない隙間に、個人個人だったら入っていけるのかなと思っています。

──そのために、いぶくろさんはどのような活動をしていくのでしょうか。

いぶくろ聖志:僕は、より和に近いところ──箏の業界だったりとか、日本の文化が好きっていう人たちの中に入っていこうと思ってて。今、自分でも着物を着る機会を増やしてるんですよ。日本の文化が好きな人って、意外と正統派なものが好きなだけじゃなくて。これからの日本をより楽しくするために、日本の文化を使ってもっと楽しいことがしたいって思ってる人の方が多いように感じていて。継承だけじゃなくて、発展を視野に入れてる人の方が多いというか。そういうところに “個”という強みを生かして入り込んで色々と行動することで、「実はこんなに新しいことをやってたチームが10年前からありましたよ」ていうのを広めていけたら面白いなと思っています。

──その視点は面白いですね。箏を教えたりとかは?

いぶくろ聖志:僕は流派にも入っていないので、「いぶくろ流師範です」と言えないですし(笑)。でも、できるだけ楽しいことを提供したいので、箏の間口も広げたいですね。伝統楽器の悪いとこって、入口が狭すぎて、奥が深すぎてるところだと思っていて。それが息苦しくなってしまうことって結構あるので、ある程度経験値をつけた素人じゃない目線で、それを俯瞰できるような人をたくさん増やしたいです。あとは、和楽器バンドで改めて和に興味を持ってくれた人たちの入り口がないなと思っているので、そういう人たちにも入り口を準備してあげたいんですよね。それができたら、日本の着物の着方でもいいし、日本の伝統音楽でもいいし、和を楽しむゆとりが出ると思うんですよね。和を楽しみたい人たちに、いろんな機会が作れるといいなと思います。

──そういう意味では、和楽器バンドってすごく間口を広げてくれたと思います。純粋な和楽器界で言うと皆さん異端だったけれど、それがこんなに支持されたということは、やっぱりそこに魅力があったということですよね。和楽器バンドは、いぶくろさんにとってはどんなものでしたか?

いぶくろ聖志:遊び場だし、実験場って感じですね。今まで自分が積み重ねてきたものを遠慮なく出していい場所だし、やってみたいと思ったことをやっちゃって良い場所だったなって思います。他のところでは得られなかった、たくさんのことを経験させてもらいましたね。箏にいっぱいエフェクターのせてみたり、ループマシンを使ってみたこともあるし。<大新年会>で「胡蝶の夢」という曲で映像と合奏するとか、文化箏「白鷺」を使って前に出てソロを弾くとか。普通の箏弾きが絶対やらないことを、たくさんやらせてもらいました。それぞれみんなが「これ楽しいんじゃない?」って思いついたことを詰め込んだ、楽しい場でしたね。

──そして最後に、そんな楽しい遊び場のメンバーであった亜沙さんへの『THANKS』メッセージをください。

いぶくろ聖志:僕ね、亜沙さんが一番バンド想いだったと思うんです。亜沙さんは、バンド内のことを色々整えてくれたんです。バンドに専念できるように体制を整えてくれたり、やりたいことをちゃんと追求できる環境作りに気を遣ってくれたりしていました。そのためには自分が悪者になることもいとわないというか、 “俺が守るのはこの8人だ”っていう感じのスタンスでバンドの基準を守ることにすごい心を砕いてくれたことに感謝しています。和楽器バンドが始まった時に一番名前が出ていた亜沙さんが動いてくれたからこそ、ここまで続いたと思うんです。なんだかんだ言って、このバンドが10年間続いてこれたのって、僕は亜沙さんの力がすごく大きいと思ってます。

──あぁ、いいお話ですね。ずっと取材をしてきましたが、まだまだ知らないことがたくさん。次に集まるときには、また違う姿がたくさんみれるのでしょうね。

いぶくろ聖志:そうですね。みなさんにも、どうなるか楽しみに待っていただけたらと思います。

取材・文◎服部容子

『ALL TIME BEST ALBUM THANKS 〜八奏ノ音〜』

2024年10月9日(水)発売
詳細:https://wagakkiband.com/musics/15508
CD購入:https://wgb.lnk.to/2024_al_cd
配信リンク:https://wgb.lnk.to/thanks_digital

◆商品形態
初回限定LIVE盤(CD+Blu-ray)税込¥8,500/UMCK-7253
初回限定Document盤(CD+DVD)税込¥5,280/UMCK-7254
CD Only盤(2CD)税込¥4,290/UMCK-1778

◆収録曲(全18曲)
01. 六兆年と一夜物語(Re-Recording)
02. 千本桜(Re-Recording) ※TBS系バラエティ『ランク王国』エンディングテーマ
03. 華火(Re-Recording)
04. 起死回生(Re-Recording) ※テレビ東京系リオ五輪中継テーマソング
05. 雨のち感情論(Re-Recording)
06. 細雪(Re-Recording)※映画『恋のしずく』主題歌/テレビアニメ『京都寺町三条のホームズ』テーマソング
07. Ignite(Remastered 2024)
08. 情景エフェクター(Remastered 2024)
09. Singin’ for... (Remastered 2024)
10. 月下美人(Remastered 2024) ※NHK「みんなのうた」2020年10月・11月度放送曲
11. Sakura Rising with Amy Lee of EVANESCENCE (Remastered 2024)
12. 日輪(Remastered 2024)
13. 生命のアリア(Remastered 2024) ※TVアニメ「MARS RED」オープニングテーマ
14. Starlight(I vs I ver.)(Remastered 2024) ※フジテレビ系⽉9ドラマ「イチケイのカラス」主題歌  
15. ブルーデイジー (Remastered 2024)
16. The Beast(Remastered 2024) ※アニメ『範馬刃牙』2期オープニングテーマ
17. GIFT(新曲)
18. 八奏絵巻(新曲)

◆各形態収録詳細
【初回限定LIVE盤】(CD+Blu-ray)税込¥8,500/UMCK-7253
初回プレス封入特典:トレーディングカードVer.A 全9種類の内1枚ランダム封入
CD:ベストアルバム『ALL TIME BEST ALBUM THANKS 〜八奏ノ音〜』
Blu-ray:10th Anniversary Best Live Selection
※初商品化となるライブ映像を含む、10周年のライブから厳選された楽曲を収録
収録曲
1. 千本桜 from 2014.1.31 at clubasia   
2. 戦-ikusa- from 2015.5.23 METROCK2015  ※初商品化!
3. 反撃の刃 from 2015.9.10 NHK Eテレ 「Rの法則」  ※初商品化!
4. 起死回生from 2016.8.13 RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016  ※初商品化!
5. 雨のち感情論 from 2017.9.13 NHK 「シブヤノオト」  ※初商品化!
6. 千本桜 from 2018.9.22 イナズマロックフェス2018 ※初商品化!
7. 暁ノ糸 from 2019.11.23 和楽器バンド Japan Tour 2019 REACT〜新章〜 FINAL
8. 儚くも美しいのは from 2020.2.16 Premium Symphonic Night Vol.2〜ライブ&オーケストラ〜 in 大阪城ホール
9. Ignite from 2020.8.16 真夏の大新年会2020 横浜アリーナ〜天球の架け橋〜  
10. Starlight from 2021.5.14 NHK 「SONGS OF TOKYO」 ※初商品化!
11. 吉原ラメント from 2022.1.9和楽器バンド大新年会2022 日本武道館〜八奏見聞録〜
12. 生命のアリアfrom 2023.9.7 和楽器バンド Japan Tour 2023 I vs I  ※初映像化!!
13. 細雪 from 2023.9.7 和楽器バンド Japan Tour 2023 I vs I  ※初映像化!!
14. The Beast from 2024.1.07和楽器バンド大新年会2024 日本武道館 〜八重ノ翼〜

【初回限定Document盤】(CD+DVD)税込¥5,280/UMCK-7254
初回プレス封入特典:トレーディングカードVer.B 全9種類の内1枚ランダム封入
CD:ベストアルバム『ALL TIME BEST ALBUM THANKS 〜八奏ノ音〜』
DVD:本作品レコーディングのBEHIND THE SCENEを収録したドキュメンタリー映像

【CD Only盤】(2CD)税込¥3,850/UMCK-1778
初回プレス封入特典:トレーディングカードVer.C 全9種類の内1枚ランダム封入
CD:ベストアルバム『ALL TIME BEST ALBUM THANKS 〜八奏ノ音〜』
CD DISC2: このアルバムのためにレコーディングされた新曲を含む全8曲のInstrumental をDisc 2に収録
※Instrumental収録はCD Only盤のみ

◆チェーンオリジナル特典
・UNIVERSAL MUSIC STORE:B5クリアカード(絵柄A)
・Amazon.co.jp:B5クリアカード(絵柄B)
・楽天:B5クリアカード(絵柄C)
・TSUTAYA:B5クリアカード(絵柄D)
・タワーレコード:B5クリアカード(絵柄E)
・HMV:B5クリアカード(絵柄F)
・アニメイト:B5クリアカード(絵柄G)
・その他一般店共通:B5クリアカード(絵柄H)

LIVE Blu-ray『和楽器バンド 大新年会2024 日本武道館 〜八重ノ翼〜』​

2024年10月9日(水)発売
詳細:https://wagakkiband.com/musics/15545
購入:https://wgb.lnk.to/2024_bd_dvd

■初回限定盤 Blu-ray(本編 DVD 付き)
¥12,100(税込) / UMXK-9042
ライブCD (2枚組み)+60P フォトブック

■通常盤Blu-ray(本編DVD付き)
¥8,800(税込)/ UMXK-1117

『和楽器バンド 大新年会2024 日本武道館 〜八重ノ翼〜』
[Blu-ray/DVD収録内容]※Blu-ray/DVDは、内容共通
Overture〜八重ノ翼〜
愛に誉れ
雨のち感情論
天樂
フォニイ
いーあるふぁんくらぶ
月下美人
細雪
雪よ舞い散れ其方に向けて
生命のアリア
虚夢
破邪の儀

吉原ラメント
オキノタユウ
The Beast
ドラム和太鼓バトル〜対決武闘館〜
ベノム
星の如く
暁ノ糸
<Encore>
BRAVE
千本桜

※特典映像
BEHIND THE SCENE of 和楽器バンド 大新年会2024 日本武道館 〜八重ノ翼〜

<和楽器バンド Japan Tour 2024 THANKS 〜八奏ノ音〜>

11/22(金) 東京・LINE CUBE SHIBUYA ※SOLD OUT
11/23(土祝) 東京・LINE CUBE SHIBUYA ※SOLD OUT
11/28(木) 大阪・オリックス劇場 ※SOLD OUT
12/8(日) 愛知・日本特殊陶業市民会館 フォレストホール ※SOLD OUT
12/10(火) 東京・東京ガーデンシアター

【チケット料金】
VIP指定席:前売 \15,000 当日 \16,000(税込/VIP席専用オリジナルグッズ付き)  ※SOLD OUT
VIP着席指定席:前売 \15,000 当日 \16,000(税込/VIP席専用オリジナルグッズ付き)  ※SOLD OUT
一般指定席/着席指定席:前売 \10,000 当日 \11,000(税込)

【企画/制作】イグナイトマネージメント/LIFE

ツアー詳細はこちら:https://wagakkiband.com/contents/765648


関連リンク

◆和楽器バンド オフィシャルサイト
◆和楽器バンド 10周年特設サイト