朝から「仕事の質とスピード」が爆上がりする…ドイツ人の同僚から学んだ「2つのメモ」習慣
日本に比べて約1.5倍高い労働生産性、年間266時間短い労働時間、約40%多い平均賃金、GDPは日本を抜き世界第3位……。限られた時間で最高の効率を発揮し、結果を出すドイツのビジネスパーソン。『ドイツ人のすごい働き方』の著者で、商社駐在員としてドイツ在住17年の西村栄基氏によれば、彼らは毎日欠かさず「2種類のメモ」をとるという。日本人もマネしたい、仕事の質とスピードを高めるドイツ流・メモ術を教えてくれた。
「帰宅前メモ」が明日の航海図となる
ドイツ人のビジネスパーソンに共通する習慣に帰宅直前と出社直後にメモをとることがあります。私も真似してみると、朝にスタートダッシュがかけられ、生産性が爆上がりする実感がありました。
帰宅前に何をメモするかといえば、「翌日行うべきタスクのリスト」です。
このリストは翌日の業務の「航海図」として機能し、朝の業務開始時に、何から手をつけるべきかを明確にしてくれます。
タスクは緊急度や重要度に基づいて作成しますが、「やることが多過ぎて、明日何から手をつければいいのかわからない!」というときもあることでしょう。
そんなときは、プロジェクトをパズルのように捉えることです。
(1) プロジェクトの目的と最終的な成果を明確にする=パズルの全体像
(2) それを達成するための主なマイルストーンをいくつも設定する=ピースの塊
(3) 各マイルストーンを達成するために必要なタスクを洗い出す=ピース
(4) それぞれのタスクに期限を設定する=ピースをどこにはめるか
ドイツ人の同僚たちが、どんなに巨大で複雑なプロジェクトが始まっても決して動揺することがなかったのは、このようにパズルの全体像を把握し、それを形作るピースの塊をひとつひとつのピースに分け、それぞれに優先順位と期限を設定する習慣があったからでした。
このプロセスを踏めば、翌日何をやるべきか明確になってくるはずです。
メモは青色で手書きしたほうがいい理由
メモは自分さえ読めればいいので、キーワードだけの走り書きで十分です。
パソコンやスマートフォンのテキストメモでもいいのですが、手書きをおすすめします。両方試してみたのですが、手書きの方が、完了したタスクを横線で消していくときの感触に、なんともいえない「達成感」があるのです。
ちなみに、同僚のドイツ人たちは、青色インクのボールペンを好んで使っていました。
理由には諸説あるのですが、青で書かれていると見やすいのは確かです。
早稲田塾創業者の相川秀希氏著『頭がよくなる 青ペン書きなぐり勉強法』(KADOKAWA)によると、青色には「ストレスを軽減し、集中力を高める効果がある」ということです。
日本では黒色インクのボールペンが一般的ですが、私はドイツで働き始めてからは、青色しか使っていません。青色で書かれたタスクリストを、赤色ボールペンで横線を引いて消していくと心地よいのでぜひ試してみてください。
スタートダッシュを助ける「資料準備」
「帰宅前メモ」をつけたら、そこに書かれたタスクを進めるために必要な資料やツールも準備しておきます。
例えば翌朝からプレゼンテーション資料を作成するタスクが入っていれば、タイトルや基本構成だけを作ったPowerPointのファイルをつくって、保存しておくのです。
翌朝、重要な会議の議事録係を任されているのであれば議事録用テンプレートや参考資料を、顧客訪問の予定があるなら訪問先の情報や移動ルート、交通手段、所要時間の把握をしておきます。
これらはものの数分でできる作業ですが、準備しておくだけで翌日はタスクの大枠に従えば良く、午前中のスタートダッシュに貢献すること間違いなしです。
さて、翌日出社すると、机の上には青色でタスクが書かれた「帰宅前メモ」と、その助けとなる資料が準備されています。
すぐに仕事にとりかかりたくなりますが、ここでも書き出すべきメモがあります。
それが「朝の15分ロードマップ」です。
これでスケジュールがよりスムーズに進む
「帰宅前メモ」には、翌日やるべきタスクは書いてあっても、その優先順位や順番は書かれていません。そこまで追求していると、資料準備などに割く時間がなくなるからです。
そこで出社直後には、「帰宅前メモ」にあるタスクの所要時間を見積もり、重要度と緊急度も考慮して、スケジュールに組み込んでいくのです。現実的な時間配分と順番が決まったことで、1日のスケジュールはよりスムーズに進行していきます。
このように帰宅直前・出社直後のわずかな時間を使うだけで、翌日の仕事の質は格段に高まり、「今日は何から始めようか……」と朝から悩むムダな時間を削減することができます。
また、この習慣が身についてくると、仕事とプライベートを区切る儀式として機能し始めます。
「帰宅前メモ」で明日の準備を終えたことで、業務から意識が解放され、退社後のプライベートの時間を楽しむ「オフへのパスポート」を手に入れた気持ちになれるのです。
ぜひ日々の業務に、このドイツ流の朝夕のルーティンを取り入れてみてください。