60〜80代の「非正規」で年収100万円を稼げるか
長い長い老後、どう働きますか?
〈年収は300万円以下、本当に稼ぐべきは月10万円、50代で仕事の意義を見失う、60代管理職はごく少数、70歳男性の就業率は45%、80代就業者の約9割が自宅近くで働く――。〉
〈定年後の仕事の実態を丹念に調べていくと浮かび上がってくるのは、定年後の「小さな仕事」を通じて豊かな暮らしを手に入れている人々の姿である。
さらに明らかになるのは、このような定年後の「小さな仕事」が必要不可欠なものとして人々の日々の暮らしの中に埋め込まれており、かつそれが実際に日本経済を支えているという事実である。〉
10万部突破のベストセラー『ほんとうの定年後 「小さな仕事」が日本社会を救う』では、多数の統計データから知られざる「定年後の実態」を明らかにしている。
定年後、どのような仕事に就くことが多いのだろうか。
想像の通り、大多数は非正規やフリーランスになる。
〈非正規雇用者が占める割合は50代前半時点では数%にすぎないが、60代後半にはパート・アルバイトで13.6%、契約社員等で12.9%と、定年後の最も一般的な働き方に変わる。〉
〈フリーランスは実は定年後の現実的な働き方の一つの形態である。
ここでは、自営(雇人なし)を広くフリーランスとみなすと、フリーランスの働き方は50代前半では6.4%と少数派であったが、50代後半で7.4%、60代前半で8.4%、60代後半で10.9%まで増える。
そして、70代前半では就業者のうちフリーランスの人は約2割で、最も多い働き方になる。〉(『ほんとうの定年後』より)
70代でフリーランスが一番メジャーな働き方になるというのは少し意外かもしれない。
60代では年収が200〜300万円、70代では100〜200万円を稼ぐ人が多い。非正規やフリーランスでそれくらいの収入を得ることができるのか、早いうちから考えておくに越したことはない。
フリーランスは本当に自由なのか
現在、若い世代を中心に自由さを求めてフリーランスになる人は増えている。
社会保険の問題や高齢期の厚生年金保険の給付を受けることができないことを考えると、現役世代をフリーランスで過ごす人にとってこの点はよく考えておかなければいけないポイントである。
〈厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると国民年金受給者の老齢年金の平均年金月額は2020年時点で5万6358円。この程度の金額では、老後に豊かな暮らしを送ることはできない。
現役時代をフリーランスで過ごすのであれば私的年金で多額の積み立てをする必要があるが、そういった事情を理解している人はそこまで多くないのではないか。〉(『ほんとうの定年後』より)
若者と定年後の方々では、フリーランスで働くことの意味合いも大きく変わってくるようだ。
〈フリーランスという働き方は、若い人にとっては厳しい働き方になる。しかし、これもやはり高齢期の働き方となれば話は別である。
定年後はそもそも年金を受け取れる年齢に差し掛かっていることから、年金を受け取りながらフリーランスとして少額の金銭を稼ぐという働き方は十分ありうる。また、そもそも収入水準が低いことから国保保険料も大きな問題とはなりにくい。
組織に縛られずに自由に働けるというメリットを感じながらフリーランスとして働くことは、定年後の現実的な選択肢となるだろう。〉(『ほんとうの定年後』より)
「定年後フリーランス」として「小さな仕事」をおこない、それぞれのサイズの、豊かで幸せな生活を送っていく――というのが、これからの定年後のスタンダードになっていくのだろう。
つづく「多くの人が意外と知らない、ここへきて日本経済に起きていた「大変化」の正体」では、失われた30年を経て日本経済はどう激変したのか、人手不足が何をもたらしているのか、深く掘り下げる。