北朝鮮外務省が11日晩に「重大声明」を出し、「大韓民国が共和国の首都平壌(ピョンヤン)に無人機を浸透させ『ビラ(対北朝鮮ビラ)』をばらまく軍事的挑発行為を敢行した」と主張した。これに対し韓国軍の合同参謀本部は「北の主張に対する事実について確認することはできない。最近の一連の事態に対するすべての責任は卑劣で低級な汚物風船挑発をしている北側にあることを警告する」と明らかにした。北朝鮮が今回の事件を口実に韓国に無人機の浸透など軍事報復を敢行する可能性があるという懸念が強まっている。

北朝鮮外務省はこの日午後8時25分ごろ、対外メディアの朝鮮中央通信を通じて「主権死守、安全守護の引き金は躊躇なく引かれる」と題した声明を発表した。

外務省は「共和国に反対する大韓民国の挑発策動が危険界線を越えている」とし「最も敵対的で悪意がある不良国家の大韓民国が共和国の首都平壌市に無人機を浸透させる厳重な政治軍事的挑発行為を敢行した」と明らかにした。続いて「10月3日と9日に続いて10日」と時間を特定し「(韓国が)深夜の時間を狙って無人機を平壌市中区域上空に侵犯させ、多くの政治謀略扇動ビラを散布する許されない蛮行を敢行した」と主張した。

朝鮮中央通信は黒い空に白い形態で写った無人機の写真も公開した。写真の右下には「10月9日午前1時13分46秒」という時間が表示されていた。集められた「ビラ」の束はぼかしていたが、金正恩(キム・ジョンウン)政権に対する批判内容が書かれていると推定される。

外務省は「国境地域で気球によるビラ散布行為を敢行するだけでは足りず、軍事的攻撃手段と見なされる無人機を首都上空にまで侵入させた事件は絶対に黙過することも許すこともできない重大挑発」と非難した。今回のビラ散布は「必ず代価を支払うべき厳重な軍事的攻撃行為」としながらだ。

◆北「領空侵犯事件、報復行動決行を準備」

北朝鮮外務省は今回の件を「領空侵犯事件」と規定し、「厳重な犯罪行為であり自衛権行使の明白な対象」と主張した。「首都圏の上空に敵国の無人機が飛び回るのに反応しない国家は世界にない」としながらだ。

続いて「敵の挑発行為は報復の行動決行に対する決定を緊迫に要求している」とし「国防省と総参謀部、軍隊の各級は事態発展の各場合に対応する準備に着手した」と伝えた。さらに「まず、南部国境線付近と大韓民国の軍事組織構造を崩壊するのに投入されるすべての攻撃手段は任意の時刻に即時活動を遂行できる体制を整えることになる」と説明した。

外務省は「我々は大韓民国に最後にもう一度最後通牒として厳重に警告する」とし「双方間の武力衝突、さらには戦争が勃発しかねない無責任で危険な挑発行為を直ちに中止するべきだ」と強調した。「引き金の安全装置は現在解除されている。攻撃の時期は我々が決めない」とも伝えた。

外務省の声明発表とほぼ同時に北朝鮮は境界地域でゴミ風船を飛ばし始めた。5月28日に開始して以降、今回が28回目となる。11日未明から午前まで約40個のゴミ風船(27回目)を飛ばした。

北側の主張が事実なら、南北間の緊張が急激に高まる状況が避けられない。実際、「報復行動」を北朝鮮が予告した以上、南側の領土に対する無人機浸透など軍事的突発行動をする可能性も排除できない。

◆韓国軍「そのようなことはない」→「事実関係を確認できない」

韓国国防当局は「軍の無人機浸透について確認することはできない」と明らかにした。

韓国軍の合同参謀本部はこの日午後9時45分、立場を表明し、「北の主張について事実関係を確認することはできない。最近の一連の事態に対するすべての責任は、卑劣かつ低級で国際的な恥である汚物およびゴミ風船などの挑発を行っている北にあることを警告する」とした。続いて「北が軽挙妄動せず自重することを強く促す」とし「いかなる形態であれ韓国国民の安全を脅かす場合、わが軍は断固かつ凄絶に懲らしめる」とも明らかにした。

ただ、北朝鮮外務省が声明を発表した当時、金竜顕(キム・ヨンヒョン)国防部長官はソウル竜山(ヨンサン)国防部庁舎で国会法制司法委員会の軍事裁判所に関する国政監査に出席していた。「韓国が北側に無人機を浸透させたという事実はあるのか」という鄭清来(チョン・チョンレ)法司委員長の質問に対し、金長官は「そのようなことはない」と答えた。金長官は国政監査が行われていた午後9時ごろ席を外し、約50分ほど経過して戻った後、「事実かどうか確認することはできない」という合同参謀本部の立場を再確認した。また事実関係を確認できないという趣旨で「北の内部の仕業かもしれない」という話もした。