いまでは登録数52万人の人気YouTuberで一級建築士の資格を持ついけちゃん。グラビアアイドルにも挑戦し、注目を集めていますが、学生時代は学校になじめず、保健室登校をしていた時期がありました。そこからさらなる挫折を経験し── 。(全3回中の1回)

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高校の担任の先生から「精神科に行ったほうがいいよ」

成人式のときの貴重なショット(Instagramより)

── YouTubeでは明るい印象を受けますが、保健室登校をしていた時期があったそうですね。

いけちゃん:たぶんうつ病のせいで、通常の授業に出られなかったんだと思います。気がついたら保健室に行くしかない、っていう状況でした。私より先に保健室登校をしていた上級生がいたので、そういう選択肢があることは知っていたんです。

── ご家族はいけちゃんさんの学校に行きたくないという気持ちに、どのように寄り添われていたのでしょうか。

いけちゃん:最初はなかなかわかってくれなかった気がします。どうして教室に入れないのか、理解できない感じで。それでも、頑張って保健室登校を続けていましたね。

── 保健室登校になったきっかけはあったのですか。

いけちゃん:それが全然思い当たらないんです。いじめられていたわけでもないし、勉強もできるほうだったので…。自分でおかしいなって思い始めたのが高2のころ。高3になって担任が変わったのですが、その先生に「前から思っていたけれど、精神科に行ってみたほうがいいよ」って言われて。それで半年くらい精神科に通院しました。心理検査を受けて、うつ病とアスペルガーと診断され、「なるほどな」って納得しました。

── 先生から通院を勧められて、ショックではなかったのですか?

いけちゃん:もともと、自分自身「病院に行かなきゃ」って感じていたんです。でも、親に言い出せず、症状が長引いてしまっていて。先生のひと言が病院に行くきっかけになり、結果的に診断が出たことで、精神的にだいぶラクになりました。それくらい、学校での私は、病んでいることがわかる顔つきをしていたんだと思います。

── 診断内容を知って、ご両親はどんな反応でしたか?

いけちゃん:それまでは、なぜ保健室にしか行けないのか理解できなかったのが、診断が出たことで「無理に登校させなくてもいいかもしれない」とあきらめがついたんだと思います。

── 保健室登校を続けるなかで、大学進学の不安はなかったですか?

いけちゃん:勉強は嫌いじゃなかったし、大学進学率がほぼ100%の高校だったので、進学しないという選択肢は頭になかったですね。地元は秋田なのですが、当時はとにかく東京の大学に行きたくて。でも、親の期待に応えようとしすぎて、受験のときは特に思いつめて病んでましたね…。結局、現役では受験に失敗して、浪人しました。なかなか失敗したショックからは立ち直れなかったですね。

建築学科で学ぶもライバーに「建築士の資格は頭になかった」

初めてInstagramに投稿した一枚

── それはしんどかったでしょうね…。最初から理系志望だったのですか。

いけちゃん:そうです。物理が得意だったので、物理学科か物理が活かせる建築学科か、どちらかにしようと。進路選択の直前まで悩みましたが、美術もわりと得意だったので、結局建築を選びました。

── 理工系の学部だと、女性が少なかったのでは?

いけちゃん:そうですね、女子は1割ぐらいでした。結局、2度目の大学受験も思うようにいかなくて…。今はYouTuberが本業なので学歴は特に気になりませんが、建築の仕事だけでやっていくとなったら、やっぱり大学のレベルはスルーできない。だから、卒業後の進路として大学院進学を考えたこともありました。

── 大学のころから一級建築士の資格を取るための準備を?

いけちゃん:大学時代は何も考えていなかったです(笑)。アルバイトを辞めたくて、ライバー(※)をやったりもしました。初月から何十万も稼げると知って、これはやらなきゃ!と思って。ライブ配信は、大学であったことなどの雑談がメイン。話のおもしろさより、コンスタントに配信することが肝心なんです。今日も配信されているっていう安心感で来てくれる人が多かったですね。

※ライブ配信アプリを使って、ライブ配信を行うこと。視聴者は投げ銭形式で課金できる

── 建築関係の就職活動はしましたか?

いけちゃん:大学卒業するまでは、建築士の資格を取ることは考えていなくて。建築業界に就職するつもりもなかったんです。就活では1社だけ受けたのですが、それもSNS関係の企業でした。しかも、普通に面接で落ちてしまって…。だからもう就職はいいかなって(苦笑)。新卒というカードは捨てました。

ライバーもYouTubeもコロナ前に始めたのですが、2020年にコロナ禍になって在宅が増えた流れで、YouTubeの再生回数が伸びたんです。ちょうど大学生YouTuberがはやり始めていたこともあり、大学を卒業するころには登録者数が20万人くらいいて。収益化できるようになったので、就活はあきらめ、当面はYouTubeで生活しようと決めました。

最近のYouTubeでは「だいたいどこかに行って何か食べてる」のだそう(Instagramより)

── YouTubeを始めた当初は、どのような動画を配信されていたのですか?

いけちゃん:最初はメイク動画や美容系をアップしていたのですが、自分には合わないと思ってやめちゃって。今はぼっち旅やグルメの配信が多いですね。動画配信は、男性ファンがつくスピードが速い傾向にあって、最初は特に男性ファンのほうが多かったです。

専業YouTuberになるも「何のために大学に」と一念発起

── 登録者数が増えて、今は専業YouTuberになったのですね。

いけちゃん:でも、大学卒業の年の11月ごろに、「このままずっと配信で稼げるのだろうか…」っていう不安に襲われて。「何のために大学に進学したんだろう」なんて考えて、悶々とする日々でした。それで、まずは一級建築士の資格を取ってから、YouTuberを続けるかどうかを考えようと思ったんです。

一級建築士を目指して勉強を始めたころ(いけちゃん)

── 一級建築士は試験合格率がわずか1割というほどの難関と聞きます。どのように勉強を進めたのですか? 

いけちゃん:YouTuberってわりと、勉強する時間を確保しやすいんです。だから、大学に通いながらとか、設計事務所で働きながら資格試験を目指す人のほうが断然すごいと思います。私の場合は、1年目からけっこう自信があって一次試験は合格したんですが、二次試験の直前に舞台に出演することになって。セリフを覚える日々で、試験勉強の内容をすべて忘れそうなくらい忙しかったんです。それでも、他の受験生と比べたら勉強する時間は多かったと思うんですが、結局、二次試験で落ちてしまって…。翌年もう一度受けて、合格しました。その後、今在籍している設計事務所から声をかけていただいて、就職することになりました。

── 学生時代は就職に興味がなかったのに、どうして決意できたのでしょうか。

いけちゃん:絶対に普通の就職はできないと思っていたんですよ。 学校生活で苦労したので、企業で規律を守って大勢の人と一緒に働くのも苦手だろうなと想像していて。だからやるなら大学の研究職か、起業したいと思っていました。でも縁があって、声をかけていただいた設計事務所に就職しました。今の事務所は東京と秋田に拠点があるんです。私は地元が秋田ですし、事務所が秋田の羽後町で町おこしのプロジェクトをやっていたのも決め手になりました。

── 地元とも縁がある事務所だったのですね。ちなみに職場はフルリモートだとか。

いけちゃん:そうなんです。ほかの社員も、みんなそれぞれの県の事業所で働いていたりします。私はふだんから県外移動が多いので、フルリモートで働かせてもらっていますが、かなり特例ではありますね。

── ほかにも副業している社員はいたりするのですか。

いけちゃん:私が働いているのは、アトリエと呼ばれるデザイン性の高い建築を手がける分類なのですが、社員の平均年齢が若く、みんな建築一本でやっていますね。就職してよかったのは、試験用に勉強していただけで実務経験がなかったので、現場に行って実務が学べること。あとCAD(※)も会社の人に教えてもらっていて、まだ慣れていないので、時間があるときに家で練習しています。

※「設計をデジタルで行うソフトウェア」のこと

PROFILE いけちゃん

1997年、秋田県生まれ。登録者数 52万人、動画の総再生回数1億630万回の人気YouTuber。グラドルとしても活動しながら一級建築士の資格を取得し、建築事務所にも勤務している。

取材・文/池守りぜね 写真提供/いけちゃん