発作を起こして救急搬送されたが「異常なし」! パニック発作では死なない、その仕組み

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パニック症は、パニック発作をくり返す病気です。パニック発作は、身体的な原因はないにもかかわらず、さまざまな不快な症状が突然生じるもの。パニック症の本質は、「このまま死ぬかもしれない」という強い恐怖感・不安感にあります。恐怖や不安は、危険を避けて生き延びていくために必要なものですが、行きすぎれば生活に支障をきたします。発作を避けようとしてどんどん「できないこと」が増えていけば、自己否定感が強まり、うつ状態に陥ることもあります。そんな「パニック症」の最新情報や、正しい理解のための本『名医が答える! パニック症 治療大全』より一部抜粋してお届けします。

過呼吸の状態になるとなぜ苦しくなるのですか?

過呼吸はなぜ起こるのか、過呼吸の状態になると、なぜ苦しい症状が起こるのかは、次のように説明できます。

不安・緊張などによる呼吸数の増加呼吸は自律神経の働きにより、そのときどきの状態に合わせてコントロールされています。不安や緊張が強いときには、自律神経の働きにより呼吸が促進され、無意識のうちに浅い呼吸がくり返されます。

息苦しさから呼吸数がさらに増える呼吸は、意識的にコントロールすることも可能です。息苦しさを覚えたときは意識的に息を吸おうとします。

血液中の二酸化炭素(CO2)濃度が低くなり、血液の酸性度が変化する息を吸って十分な酸素を取り込めば、息苦しさは解消されるはずです。ところが呼吸数が増えすぎると吐く息の量も増えます。何回も激しく息を吸ったり吐いたりしていると、CO2が過剰に排出され、血液中のCO2濃度が通常より低下していきます。血液中のCO2濃度が低下すると、血液の酸性度( ㏗)は、アルカリ性に傾きます。

脳が呼吸を抑えようとする脳幹の延髄にある呼吸中枢が、CO2の排出を抑えるために呼吸を抑制しようとします。「息ができない」「窒息する」と感じられ、不安・恐怖がますます強まります。

血管の収縮・筋肉のけいれん血液㏗が急激にアルカリ性に傾くと血管が収縮しやすくなり、手足のしびれや筋肉のけいれんが起こりやすくなります。筋肉が硬直して体が思うように動かせなくなることで不安・恐怖はさらに増し、息苦しさからさらに呼吸数が増えるという悪循環に陥りやすくなります。

過呼吸の状態が続くと、ときに意識を失うこともありますが、心配することはありません。「もっと吸おう」としなくなるので、呼吸のペースが戻りやすくなります。

発作を起こして救急搬送されましたが「異常なし」。腑に落ちません

初めてパニック発作を起こしたとき、救急搬送されたという人も少なくないでしょう。パニック発作か、なにか重大な病気の症状か見ただけでわかるわけではないので、本人も周囲の人も「一刻も早く病院へ」と考えるのは当然です。しかし、パニック発作であれば、病院に到着する頃にはすっかり落ち着いているでしょう。その段階で診察や検査を受けても、後日さらに別の検査を受けても、なにも異常はみつからないのがパニック発作です。

隠れた身体的な病気による症状ではないことが確かめられていれば、どんなに苦しくても、心臓が口から飛び出しそうになろうとも、パニック発作そのもので命を落とすことはありません。激しい症状が起こるしくみを知り、適切に対応していくことが、パニック発作のくり返しを防ぐポイントです。

続きは<「パニック症」になりやすい人の特徴って? ストレスとの関連性、遺伝的な要素など、ウソホントを徹底解説!​>で公開中。

「パニック症」になりやすい人の特徴って? ストレスとの関連性、遺伝的な要素など、ウソホントを徹底解説!