「メイクする時間や空間から秋を纏(まと)う」というテーマで、季節を先取りした売り場を展開(記者撮影)

壁一面に並ぶルームフレグランスに、リボンをあしらったベッドカバー。オレンジや黄色など秋を意識した配色の食器類――。インテリア・雑貨小売店「Francfranc(フランフラン)」青山店には、女性なら「自分の部屋にあったらどうか」と思わず手に取ってみたくなる商品があふれていた。

フランフランは20〜30代の女性を中心に人気で、強いブランド力を持つ。今年で32年目を迎える長寿の業態で、店舗数は国内で153店(今年8月末時点)だ。

同社は今年8月に調剤大手のアインホールディングス(HD)の完全子会社となり、新たな節目を迎えた。佐野一幸社長は「フランフランに集中して伸ばすことを考えられる体制になった。(アインHDとの)共同出店で、これまで来店していなかった顧客にもアプローチできる」と語る。

若年女性の人気をつかむ秘訣とは?


社内でインテリアコーディネーターも育成。店舗にもよるが、定期的にコーディネート相談会を実施する(記者撮影)

フランフランのいちばんの強みは売り場づくりだ。商品を並べるだけではなく、料理やメイク、お出かけ、睡眠などの場面で使うアイテムを、香りや色、素材など多方面から演出。独自の世界観で来店する多くの女性客を惹きつけてきた。ここはアインHDも高く評価しているポイントだ。

具体的には、商品を使うシーンを提案する展示に工夫を凝らす。今秋の新商品である、お酒をテーマにしたルームフレグランスは「メイクする時間や空間から秋を纏(まと)う」というテーマを打ち出した。

フレグランスと一緒にジュエリーボックスやメークアップ用のブラシセットも展示。日常に季節感を加えるアイテムを一緒に提案している。

定番商品だけでなく、飽きさせないような施策も打つ。売り場の鮮度を高めるため、月ごとに投入する新商品とは別に、春夏と秋冬の年に2回、一歩先のトレンドを打ち出す商品をコレクションとして発売する。

今年の秋冬はヨーロッパの田舎の家のイメージで、紫などパステルカラーを用いたデザインがテーマだ。キルトやタータンチェック柄のクッションや花の刺繍がデザインされた食器などの雑貨を展開している。

「その時に買ってもらえなくても『いつかこんなかわいい部屋に住んでみたい』と女性が憧れるような空間と商品で魅せていく」(佐野社長)。


今年の秋冬コレクションの一例。懐かしさを感じるような色使いが特徴だ(記者撮影)

このように、フランフランが重視してきたのがオリジナル商品の開発だ。家具の開発から始めて徐々に雑貨に広げ、現在は全体の9割以上を占める。中にはロングセラー商品も出ている。

夏の定番品となった小型扇風機はその最たる例だ。2018年に発売して以来、静音性など機能面の改良を重ねてきた。今夏は2種類の扇風機でビビッドなオレンジやグリーンなどを含め、16色も展開。自分の服や持ち物と合う色を見つけられることが強みになっている。

ブランドを守ってきた歴史

フランフランは家具メーカーの子会社から始まった。1992年に1号店を天王洲アイルに開店。「バルス」の社名で上場していたが、2012年には海外展開を視野にMBO(経営陣による買収)を実施。翌年に小売り大手のセブン&アイ・ホールディングス(HD)と資本業務提携した。

2016年にはフランフラン以外のブランドを終了し、フランフランに専念、翌年には社名もフランフランとした。また、創業者の郄島郁夫氏が2021年に退任すると、その後は投資ファンドの日本成長投資アライアンスが筆頭株主として今年8月まで経営を支援していた。

フランフランは大株主や経営体制が変わり続けても、ブランドのコンセプトを守り、若い女性から厚い支持を集めてきた歴史がある。

フランフランは主に1〜2人暮らしする女性がターゲットだ。自宅で好きなものに囲まれて、気分を上げられるような空間づくりを提案してきた。時代ごとに流行のデザインを取り入れながらも、こうしたコンセプトは一貫している。


クッションカバーの品数も多い。若年女性向けにこだわった商品が強みだ(記者撮影)

これは、ニトリなどの大手が手がけるような、1人暮らしからファミリーまで全方位で展開する戦略とは異なる発想だろう。

佐野社長は「商品の循環がうまくできた結果、顧客層は変わらなかった。ブランドに共感する人材も入社してきてくれた」と振り返る。トレンドを予測し、商品を開発できる人材を多く抱えていることで、年月が経っても若い女性の支持を獲得できているわけだ。

異業種とタッグ、シナジー発揮はいつ?

今後、フランフランはアインHDの美容・化粧品店「アインズ&トルぺ」と隣接した共同出店を加速する。両方とも若年女性が主要客で、集客効果が見込める。長期的には新業態の開発も視野に協業を進める考えだ。

フランフランは他社との協業の経験もある。かつての大株主、セブン&アイHDとは、2015年からイトーヨーカドー内に「BON BON HOME(ボンボンホーム)」という西海岸をテーマにしたインテリアショップを展開していた。セブン&アイHDからは主に店舗運営のノウハウを学んだが、シナジーは限定的だった。

また、足元のフランフランは利益面の改善が課題の一つとなっている。2021年8月期は売上高361億円、営業利益40億円だったが、2022年度は売上高372億円、営業利益34億円。2023年度は売上高394億円、営業利益25億円と減益基調だ。これは主に円安による仕入れ値の上昇と、出店による先行費用が影響している。

フランフランの独自性や強みを保ちながらも、異業種のアインHDと協力し、再び成長路線を描けるのか。シナジー発現が最大の焦点になる。

(井上 沙耶 : 東洋経済 記者)