※写真はイメージ(写真: siro46 / PIXTA)

学校でも、仕事場でも求められる「読解力」。どのように身に付ければよいのでしょうか。『小学生が5日でできる 東大式 超速!読解ドリル』を上梓した、東大カルペ・ディエムの西岡壱誠さんが具体例を紹介しながら、読解力の身に付け方のコツをお話しします。

国語の文章、どうしたら速く読める?

「国語の文章を読むのが遅いです!どうすればいいですか?」

私は最近よくこんな相談を受けます。

入試が近づく中で、受験生は志望校の過去問や、大学入学共通テストの予想問題を解いて受験に備えています。

国語の入試に関していえば、最近の問題は文章が長く、時間との戦いになりがちです。文章を読むのが遅い人にとっては、とてもつらいことでしょう。

そこで、今回の記事では「どうすれば文章を読むのが速くなるのか」についてお話ししたいと思います。

文章を読むのが速い人は、1文1文を読むスピードが速いわけではありません。例えば、「走れメロス」の冒頭を見てみましょう。

「メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此このシラクスの市にやって来た。」

この文章を読んだときに、「なるほど。メロスは村の牧人なんだな。笛を吹くんだな。羊と遊んで暮らしているんだな」と考えても、あまり内容を理解しきれませんよね。

ここで大事なのは、「メロスという男がいる。正義感がある人物だ。村から市にやって来てなんらかの理由で王様に対して怒っている」というくらいの大雑把な情報です。

村の名前や、どこにあるのか、などは文章の本筋とは関係がない具体的な情報なので、忘れてもいいのです。

人間は「山田太郎くん」の顔を覚えているのではなく、「男性で、20代で、眼鏡をかけている、日本人」という大きなイメージを頭に入れたうえで、「鼻が高い」「色黒」といった個別の特徴と連携させることで、事柄を記憶していると言われています。

同じように、文章を読むのが得意な人は、中身ではなく、大枠から理解しています。中身を細かく読むのではなく、展開や論理の流れを把握することで、「だいたい何が書いてあるのかわかる」ようになるのです。

読まなくていい部分が明確に存在する

このことを応用すると、10秒ほどで次の文章のだいたいの内容を把握することができます。

ある夜、師匠は弟子に、「お前が来てから1年が経つが、お前は全く修行の成果が出ていない。なぜそんなに怠惰なのだ」と言って怒った。それに対して弟子の男は、「自分はこの1年間、一生懸命修行に打ち込んできた。真面目にやっているのに、そんなことを言うなんてあんまりだ。自分は怠惰なのではない」と言って泣いたのであった。

なぜこの文章を速く読めるのかというと、読まなくていい部分が明確に存在するからです。

どこだかわかりますか?「」の中です。

ある夜、師匠は弟子に、「1」と言って怒った。それに対して弟子の男は、「2」と言って泣いたのであった。

これであれば、10秒で読めますよね。そのうえで、「1」の内容と「2」の内容は、すぐ後ろを見れば推測できます。「1」と言って怒った、ということは「1」には師匠が弟子を怒っている内容が書いてあるはずです。

詳しい中身のことはわかりませんし、弟子のどんな部分を叱責したのかもわかりません。それでも、「なにかに対して怒っているんだな」というのは理解できます。

「2」も同様です。「2」と言って泣いた、ということは「2」は弟子が師匠の怒りを受けて泣いたということがわかります。きっと怒られたことに対して、何かを返答しているのだとわかります。

このように、「」の中はしっかり読む必要がなく、その前後の文脈を見るだけで、だいたい何を言っているのかわかるのです。これは小説だけでなく、古文や漢文でも同じことが言えます。

例えば2024年の共通テストの古文では、こんな一節がありました。

「さるはいみじき出で消えにこそ」と、人々死に返り妬がるを、「げにあへなく口惜し」と思せど、「さて引き返さむも人目悪かめり。なほ法輪の八講にことよせて」と思しなりて、ひたやりに急がせ給ふほど、

注:死に返り=とても強く

これも、先ほどと同じく「」の中をスキップできます。

「1」と、人々はとても強く嫌がるのを、「2」と思うけれど、「3」と思い直して、ひたすらにお急ぎになるとき、

この場合も、中身を読まなくても、だいたい状況がわかるはずです。「1」は人々が嫌がっていること、「2」はそれに対して主人公が最初に感じたことで、それを「3」と考え直したわけですね。

これも文章をすべて読まなくても内容を大雑把に把握できるわけです。

文章を全部読もうとすると時間がかかる


国語の文章を読むのが遅い人は、基本的に「文章を全部読もうとしてしまう人」です。実際はそうしなくても、文章の全容をつかむことは簡単です。

校長先生の話を最初から最後まで一言一句聞き逃さないようにしようと考える人は少ないですよね。

それと同じで「重要なポイント」以外は読み飛ばしてもいいわけです。その練習として、今回はいくつかの例を紹介しました。ぜひ参考にしてみてください。

(西岡 壱誠 : 現役東大生・ドラゴン桜2編集担当)