子育ては、思いも寄らないことの連続。子どもに向き合う保護者の数だけ、多彩なストーリーがあります。誰かの経験が、別の誰かの背中をそっと押すこともあるかもしれません。

今回は、ゲーム三昧で反抗期の長男と何度もぶつかりながらも関係性を築き直したhideさん(ペンネーム)のエピソードを、ご本人がつづったnoteからご紹介します。

中高一貫の進学校に通うhideさんの長男は、コロナ禍をきっかけにゲームに没頭。次第に学校に行く日も減り、親子の衝突の頻度が増えていきました。悪化の一途をたどる親子関係は、学校での三者面談で思わぬ展開を見せます。

※以下、ご本人承諾のうえ、投稿内容をもとにご紹介いたします。

※画像はイメージです

この記事のポイント

コロナ休校でゲーム三昧に 「学校に行かない」に大爆発 自分の考えを押し付けるのをやめた 想像もしていなかった将来の夢 「持ってる力を出し切ったから後悔はない」

コロナ休校でゲーム三昧に

hideさんの長男がゲームに没頭しだしたのは、中学2年生の時。コロナ禍による自宅待機がきっかけでした。中高一貫校に入学して1年が過ぎ、これから本格的にさまざまな経験をしていけるはず……そう思っていた矢先の出来事。もやもやする気持ちのやり場が必要だったのかもしれません。

「私も仕事をしていたので、好きなだけゲームやスマホを使わせていました。楽しみが、ゲームや、YouTubeしかないならと、周りのママ友達も同じ感じでした」

(hideさんの投稿より *一部編集)

自宅待機でたまったイライラをぶつけるためか、オンラインで友達とゲームをする中で、汚い言葉も飛び交っていたといいます。

夜中までゲームをする習慣は、登校が再開した中学3年生になっても抜けませんでした。朝起こすのにも一苦労の毎日。同じような同級生の中には、学校に来なくなった子もちらほら出始め、登校せず1日中ゲームをする同級生をうらやましがる様子も見せていたといいます。

「学校に行かない」に大爆発

高校1年生になると、毎朝のように「学校に行かない」と言うようになった長男。勉強についていけず、つまらないと感じている様子でした。次第に、親子間の衝突も増えていきます。

「顔を見れば、注意や文句を言ってしまっていました。息子も常にイライラしていて、部屋で大きな物音がよくしました。毎朝、息子に学校に行かないって言われるのがストレスでした。お弁当を作って、朝起こして、結局行かないってなって、何度キレた事か、、、」

(hideさんの投稿より *一部編集)

怒りをホウキにぶつけ、何本か壊してしまうほどの心理状態だったとか。

勉強についていけないのなら……とさまざまな手を打ってもうまくいきませんでした。オンラインの塾は、わずか3か月で辞めたいと言ってきます。「やらなきゃいけない圧力が嫌」というのが理由でした。

説明会に出向いた進学塾は「説明してくれたスタッフのお兄さんの熱量が嫌」との理由で入塾を拒否。何をしても事態は好転せず、長男との関係が悪い方向に行っていることを感じたと振り返ります。

自分の考えを押し付けるのをやめた

関係性が悪化していることを痛感したhideさんは、自分の態度を見直すようになります。大学で学んだ心理学の本を読み直したり、瞑想(めいそう)をしたり、周りに助言を求めたりしながら、自分自身の心の持ち方をメンテナンス。勉強の遅れや、当初親として抱いていた大学進学へのこだわりを手放しました。

「色々諦めたら、不思議と、あまりイライラせずに、息子に対応が出来るようになりました。こちらが、穏やかに対応すると、息子も穏やかに返してきます。ボールを強く壁にぶつけたら、強く返ってくるみたいな関係だったのかなぁ〜とちょっと反省しました」

(hideさんの投稿より *一部編集)

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「圧をかけられると何もしたくなくなる」という長男の考えを聞いて、自分の考えを押し付けることもやめました。「高校を辞めることになっても、違う道があるから、今を一緒に楽しもう」との覚悟が決まったといいます。家族で楽しむ時間を増やしたことで、なぜか長男は学校にも少しは行くようになったといいます。

想像もしていなかった将来の夢

高校3年生になると「卒業できないかもしれない事態」が明らかに。出席日数や点数が足りないためでした。卒業や進路の話し合いのために三者面談に臨んだhideさんが耳にしたのは、我が子の意外な夢でした。

「物語を書く仕事を将来したいと話してきました」

(hideさんの投稿より *一部編集)

hideさんは驚きつつも、小さいころから本が好きで、お話をよく書いていた長男の姿を思い出しました。「素敵な夢! いいじゃん!」と声をかけたといいます。

息子の夢を応援したい。そんな思いから、小説家になるための勉強ができる道を探す中で、ぴったりの進路を見つけます。それは、これまで考えたこともなかった、芸術系の大学への進学でした。

「学校から、ダラダラと帰って来た息子に、芸術系大学の話をしてみました。息子、即答で受けたい!!!と。それには、学校行って、定期テストでちゃんと点数とって、卒業しなきゃいけないと話しました。大学名を教えて、自分でもリサーチするように言いました。息子は色々自分でも調べて、大学の説明会や、模擬試験もあるから行きたいと言うので、応援しよう!と思いました」

(hideさんの投稿より *一部編集)

hideさんと共に説明会に出向きやる気に火がついた長男は、模擬試験も受験。「上には上の子たちが何人もいて、自分を出し切れなかった……。物語を書くのも甘くみていた」と反省する姿に、hideさんは感動を覚えたといいます。

模擬試験での悔しい思いをバネにした長男は、入試本番までの間、毎日小説を読んで、ショートストーリーを作成。hideさんも毎日読んでは感想を伝えていたといいます。

「結構面白い内容で、素質あるかも!と親バカモードしていました」

(hideさんの投稿より *一部編集)

「持ってる力を出し切ったから後悔はない」

ついに迎えた入試本番。前泊のため自宅を出発するものの、台風の影響で交通機関は乱れていました。不安に押しつぶされそうになるhideさんを横目に、長男は「大丈夫だよ!」とのんきな様子を見せていたといいます。
ホテルの部屋に着くと、ずっと面接の練習をくり返していたそう。

「熱心にやっているのをみて、心が暖かくなるのを感じました。目標が出来ると人間ってやるもんだなぁ〜と感動してました」

(hideさんの投稿より *一部編集)

試験当日「がんばってくるね」と笑顔で会場に向かう我が子の後ろ姿は、やる気に満ち、思わず涙腺が緩んだといいます。試験が終わるのを待つ間は、近隣のあらゆる神様にお願いに回りました。

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試験を終えた長男は、疲れた様子を見せながらもスッキリとした顔でこう言ったといいます。

「『今、考えると、もう少しああやればとか、こうやればって思うけど、持ってる力出し切ったから後悔はない』」

(hideさんの投稿より *一部編集)

やり切った達成感に満ちた様子に「受かるかも」と思ったhideさんの予想どおり、無事合格。現在は、高校も卒業して、芸術系大学の学生として充実した日々を送っているといいます。

hideさんのエピソードからは、葛藤(かっとう)を覚えながらも、子どもの思いを尊重し、信じることで開かれる道があることを実感させられます。「子どもを信じる」ことは、簡単なようで難しいもの。ぶつかったり、言い合ったりするプロセスを経るからこそ、「ここまできたら信じてみよう」という思いが生まれるのかもしれません。

●ご紹介した記事
「進学校に入った息子がコロナ禍で学校に行かなくなり、反抗期と更年期がぶつかり合って、何とか息子が大学受験しました。」
https://note.com/hide5345/n/n3de449da5cb9

●元記事の著者プロフィール

hide

大学生の長男、中学生の長女の母。