大学1年女子がハマった「落とし穴」…「56万円」「32万円」高額の請求書が送られてきたワケ…漫画で描かれる「特殊詐欺被害者」の末路

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昨今、青少年の非行・犯罪をみて感じることは、我々の世代とは、ずいぶんと質が変わったことである。特殊詐欺の受け子や出し子、あるいは強盗という「闇バイト」はもとより、大麻、パパ活、スマホの代理購入や盗品売買などを見聞きすると、時代の変化を痛感する。

短ラン、ボンタンを身に着けて他校と喧嘩したり、DCブランド(デザイナーズ・キャラクターブランド)の高い服を、バイトの掛け持ちで購入してディスコに行ってナンパしていた我々世代とは隔世の感がある。

一瞬の判断の間違えから社会的廃人に

実際、非行や犯罪にはしった青少年と会ってみると、非行や犯罪とは縁の無さそうな風貌の若者が多い。イケイケの不良少年は、20〜30人に一人くらいの割合である。しかし、非行や犯罪の種類によっては、もはや一般社会に戻れないほど強烈な社会的制裁を受けるものもある。

筆者は、一瞬の判断を間違えたために人生を棒に振った若者を複数みてきた。彼らについては、敢えて強い言葉で「社会的廃人」と呼んでいる。そう呼ぶ理由は、銀行口座も作れず、携帯も持てず、家すらも借りられないからだ。そうなると就職することが困難となる。さらに、デジタルタトゥー等が残れば結婚すら危うくなる。たった一度の過ちで、彼らの社会的立場は暗転してしまったからである。

専門家が監修した「闇バイト」マンガ

青少年がなぜこれほど極端な犯罪にはしるのか。それは、スマホの普及により、犯罪や非行へのアクセシビリティが顕著になったからにほかならない。いつでも、どこでも、一瞬で非行少年や犯罪者になってしまう可能性がある。

日々、ネットニュースや新聞で、特殊詐欺を始めとする各種詐欺、大麻などの薬物で逮捕されたというニュースを目にするが、加害者として巻き込まれる青少年は後を絶たない。それは、彼らがニュースを見ないこと、義務教育などでリスクヘッジの方法を正しく学んでいないことなど、様々な理由が考えられる。

とはいえ、社会が傍観していても始まらない。そこで、筆者と、企業のリスク抽出・分析のエキスパートであるエス・ピー・ネットワークの芳賀恒人主席研究員との共同監修のもと、『あの時こうしなければ……本当に危ない闇バイトの話』というマンガを「金の星社」より上梓した。

先述したように、青少年の犯罪や非行は、特殊詐欺の受け子や出し子、あるいは強盗に止まらない。現代の若者が生きる社会には、実に様々な落とし穴がある。本書は、そうした落とし穴を周知し、その穴にハマらないよう、丁寧に教示している。

特殊詐欺や強盗に加えて、違法薬物の売買、銀行口座の転売、スマホの代理購入、パパ活、違法マルチ商法、年齢詐称し水商売、盗品の代理販売などのケースと、その末路を、漫画でリアルに紹介している。そして、それらが、一体、どのような法的問題があり、どのような罪に問われるのかを、挿図によって精緻に解説している。

以下、本書の第5話から、副業でスマホ転売した女子大生のケースを紹介する。

スマホを代理で購入した末路とは

高校で優等生だったマコは大学入学前の春休みに悶々とした日々を送っていた。同級生は高校の卒業旅行で青春を満喫していたからだ。

お小遣いに余裕がないマコは、大学入学前にアルバイトを決めたいと焦っていた。そんなマコが飛びついた仕事がある。それは東都国際ツーリズム合同会社のアルバイト急募求人である。

早速、オンライン説明会に申し込むと、感じのいい女性スタッフが、外国から来た旅行客へ携帯電話の貸し出しサービスをしている会社であると自社業務を紹介し、バイトの内容は、携帯電話の契約代行であると告げる。

時給換算「3万円」の“バイト”

マコの心を動かしたのは、携帯電話を1台契約すると3万円の手数料がもらえるという報酬体系であった。「3台契約すれば9万円じゃん!」マコの心は決まった。

女性スタッフは、「ご購入いただいた携帯電話は、端末のみの利用で、契約者に使用料金はいっさい発生しません」と続け、マコを安心させる。

早速、携帯電話会社の窓口に走るマコ。たったの1時間の契約事務で3万円。「ってことは、時給3万円!」とマコのテンションは上がった。

報酬未納は「悲劇の序章」に過ぎなかった

契約した携帯電話を東都国際ツーリズム合同会社に送ったが、3日経っても入金がなく、会社にコンタクトを取ったところ……

「はじめてのお取引ですと、新規登録にお時間を要することになりまして……今しばらくお待ちください。送料のご連絡は受け取っておりますので、登録が完了次第、報酬と合わせて一括で支払わせていただきます」と丁寧な回答があった。

マコが「登録の完了前に、新たにお仕事をするのは大丈夫ですか」と質問したところ、「もちろんでございます」と言われて安堵する。春休みの間にできるだけたくさん契約して稼ぎたかったからだ。

結局、報酬の入金が為されぬまま一か月が過ぎた。東都国際ツーリズム合同会社のアカウントは削除されており、騙されたことを知り、落胆するマコ。「送料は痛いけど、勉強代と思えばいいか」と自分を慰めた。

しかし、これは悲劇の序章に過ぎなかった。

大学生活が始まりマコは充実した新生活をスタートさせた。ある日、帰宅したマコを待っていたのは携帯会社からの請求書の山。320,000円、560,000円と、高額な電話使用料の督促状も含まれていた。

警察に相談しても…

慌てて警察に相談したところ、携帯電話の解約をしたとしても、通話料の支払いには応じなければならないこと。そして、携帯電話の代理購入は「携帯電話不正利用防止法違反」という犯罪になると告げられる。

携帯電話の代理購入の闇バイトでは、「(1)携帯電話が犯行に使われて被害者を生みだす。(2)闇バイトの報酬が支払われない。(3)携帯電話の代金を負担する。(4)携帯電話の通信費を負担する。(5)自分の携帯電話の契約を解除され、新規契約ができなくなる」というような最悪のシナリオが想定される。

さらに、闇バイトに利用された本人は、騙された被害者ではなく、携帯電話不正利用防止法違反による加害者=犯罪者となるのである。

携帯電話不正利用防止法は、契約者本人確認を身分証明書などに基づいて行うことを義務付けた法律。契約者が虚偽の申告をした場合や、携帯電話事業者に無断で他人に譲渡した場合は違法行為となる。他人名義を譲り受けた場合も同様だ。

ちなみに、携帯電話不正利用防止法違反は、2年以下の懲役または300万円以下の罰金となる。

闇バイトの首謀者は落とし穴づくりの名人

闇バイトの首謀者であるトクリュウ(匿名流動型犯罪グループ)は、あの手この手を使って落とし穴をつくり続けるプロである。

青少年の場合、リスクヘッジとして重要になるのが、考える時間があるかどうかである。会社が実際に存在しているか、仕事の内容などをインターネットで調べたり、大人に相談したりすることが大事である。個人情報を渡しさえしなければ、闇組織は遠ざかっていく。

本書では、読者の皆様に、様々な事例を知ってもらうことで、闇バイトの罠に気付く力を養ってもらいたいという願いから書かれたものである。

巻末には、「危険察知チャート」や、犯罪に巻き込まれそうになったときの相談先も紹介している。青少年読者や保護者の方々に、ぜひ一読してもらいたい。

変幻自在の「トクリュウ」の犯罪手口…「貯蓄から投資へ」の時代だからこそ個人が警戒しなければならないこと