年初から順調に推移してきた株価が、8月頭に大きく下落しました。新NISAを活用して資産運用を始めた人にとって、ショックは大きかったのではないでしょうか。

資産の状況をあわてて確認したり、資産運用をこのまま続けていいかと悩んだ人もいるかもしれません。

将来に向けた資産運用は、長く続けるのが基本です。相場が動いたからといって、むやみに売買するのは望ましくありません。とはいえ、今回のように相場が急変したときに不安になってしまうのは自然なことです。

今回の記事では、資産運用をやめてしまいがちな3つの場面をご紹介します。やめたくなるタイミングをあらかじめ知っておけば、資産運用を続けやすくなります。



○始めたばかりの頃は一喜一憂しやすい

資産運用を始めて半年から1年くらいの間は、リターンがゼロ近辺でプラスとマイナスを行き来することが続くでしょう。プラスになっていればうれしくなり、マイナスになっていれば落ち込むといった具合に、一喜一憂しやすくなります。一喜一憂しすぎて疲れてしまい、資産運用を続けたくなくなることがあります。

人間の脳は、リターンがゼロ近辺ではわずかなリターンの変化に一喜一憂しやすいと言われています。

元本に比べて資産がわずかに増えたり減ったりを繰り返すときには、投資の効果は実感しづらいものです。このため、資産が一時的に減ることによる不安が先行してしまいます。しかしリターンがゼロから遠ざかると、日々の増減には一喜一憂しなくて済むようになります。

株価の急落前に新NISAで資産運用を始めた人は、しばらくの間、リターンがマイナスになるかもしれません。ただし、全世界への幅広い分散投資を行っているならば、マイナスになったから資産運用に失敗したなどと思う必要はありません。

全世界への分散投資は短期的な成果を狙うものではなく、長期的に資産をじっくりと増やすものです。短期的なリターンだけを見て評価するのではなく、あきらめずに長く続けていただきたいと思います。

○株価急落のタイミングは動揺しやすい

次にやめたくなるのは、一度プラスになったリターンが大きく目減りするときです。特に金融危機の局面では、コツコツと積み上げてきたプラスのリターンが急激に減っていくことがあります。大切な資産が減るのを目の当たりにし、つい資産を売却したくなってしまうのです。

しかし株価が下落し資産が大きく目減りしたタイミングで、焦って資産を売ってしまうのはもったいないことです。

過去の金融危機では、株価が急激に下がった後、しばらくすると元の水準を超えて回復しました。一時的に相場が下がったからといって売ってしまうのではなく、淡々と資産運用を続けることが大切です。

金融危機は一度去ったからといって、もう起こらないということはありません。今後も金融危機が繰り返す前提で、長期的な成長を見据えて資産を持ち続けるのが合理的だと言えます。

○回復期は「やれやれ売り」に注意

最後に気を付けたいのが、大きく株価が下がった後、株価が上昇する時期です。

金融危機で相場が低迷しても、どこかのタイミングで相場は徐々に回復します。一度はマイナスになった資産でも、またプラスに転じるタイミングがやってくるはずです。

リターンがプラスになった時点で、「もう相場の急落は見たくない」と考えて資産を売ってしまうことがあります。これを「やれやれ売り」と言います。

プラスの状態で売っているのに、なぜ「やれやれ売り」をしてはいけないのでしょうか。それは「やれやれ売り」によって、将来のリターンを取り逃す可能性が高いからです。

マイナスからプラスに戻ったタイミングでやめてしまうと、わずかなリターンしか得られません。もし資産を持ち続けていれば、長期でリターンをさらに積み上げることが期待できます。過去のデータを見ると、長く続けることで大きなリターンを得るケースが多くありました。

○長い目で資産運用を続けよう

今回は、資産運用をあきらめてしまいたくなる3つの場面を紹介しました。長い目で資産運用をしようと思って始めても、相場が大きく動いたときに、やめてしまいたくなることはあるでしょう。3つの場面のとらえ方を知っておけば、長期的な資産運用を続けやすくなるのではないでしょうか。

牛山 史朗 ウェルスナビ 執行役員 リサーチ&クオンツ 働く世代の誰もが「長期・積立・分散」の資産運用を行えるようにしたいという想いから、2015年12月にウェルスナビに入社。金融工学の専門知識を活用し、自動の資産運用サービス「WealthNavi(ウェルスナビ)」の資産運用の仕組みを開発・リードしてきた。ウェルスナビ入社以前には、三菱UFJ信託銀行で個人向けの資産運用アドバイスなどを担当した後、野村證券にてグローバルな投資戦略の開発を行った。京都大学工学部で人工知能を研究、京都大学大学院情報学研究科で金融工学を専攻。 この著者の記事一覧はこちら