飛鳥のお堂は極彩色…金箔の上から彩色、川原寺の板状仏像「塼仏」から色料元素を検出

写真拡大 (全2枚)

 飛鳥時代(7世紀)に創建された大寺院・川原寺(奈良県明日香村)の堂内を飾っていたとみられる板状の仏像「塼仏(せんぶつ)」が、金箔(きんぱく)の上から彩色されていたことが、奈良文化財研究所などの調査でわかった。

 科学分析で初めて色料の元素が検出された。堂内は金色と極彩色で彩られ、大寺院にふさわしい空間装飾だったとみられる。

 粘土を焼き固めた塼仏は、寺の内部を飾るため壁一面にはめ込まれた。各地の出土品には金箔が残り、表面の色合いの違いから彩色の可能性が指摘されていた。

 今回の調査では、1974年に川原寺跡の裏山から出土した「方形三尊塼仏」(縦23センチ、横18センチ)2点を蛍光X線で分析し、元素を特定した。表面全体を覆う金箔の上から、頭髪は群青で彩色していたと判明。唇などからは赤色顔料にもなる鉛成分が検出された。

 川原寺は、飛鳥寺、薬師寺、大官大寺と並んで飛鳥の四大寺に数えられた。謎が多い寺で、天智天皇が母の斉明天皇を弔うため、宮殿跡に建立したとの説がある。平安時代に火災に遭うなどし、現在は建物の礎石が残る。2026年の世界文化遺産登録を目指す「飛鳥・藤原の宮都」の構成資産に含まれている。

 清水昭博・帝塚山大教授(歴史考古学)の話「華やかな古代寺院の装飾が科学的に復元でき、塼仏のイメージが変わった。他の寺院の塼仏も彩色されていた可能性がある」