福岡地裁=福岡市中央区で

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 無施錠のマンション居室に繰り返し侵入して金品を盗んだとして、窃盗住居侵入の罪に問われた福岡市の無職の男性(71)に対し、福岡地裁(加々美希裁判官)は11日、当時、心神喪失状態だったとして無罪判決(求刑・懲役10月)を言い渡した。

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 判決によると、男性は2023年7月15〜16日、福岡市のマンションの3室に侵入し、現金計約6万円やスマートフォンなど10点(時価計7万2050円)を盗んだとして起訴された。

 公判の争点は事件当時、統合失調症に罹患(りかん)していた男性に責任能力があるかだった。

 判決は、弁護側の請求で裁判所が実施した精神鑑定などに基づき、事件当時、統合失調症が悪化していたと認定。「(被害品を)持って帰りなさい」などという亡き母親の声の幻聴によって事件を起こしたとし「是非善悪を弁識する能力が欠けており、心神喪失の状態だった」と結論付けた。

 福岡地検の藤野晃俊次席検事は「判決内容を精査し、上級庁とも協議の上、適切に対応したい」とコメントした。

 弁護人の耵本信也弁護士は「検察側は捜査段階で精神鑑定をしなかった。精神疾患に対する理解を深め、もう少し男性の話を聞いてくれていれば不起訴になった可能性もあった事件だ」と話した。【志村一也】