100年に一度の大規模再開発…いま大阪駅前の「大規模開発」に注目が集まるワケ

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「100年に一度」の大規模開発

「元々は(JRの)貨物ヤードですから、そういうところにゼロからまず緑豊かな都市公園を造り、どうやって都市機能を調和するのかという点で言うと、おそらく日本初ですし、海外でもそういう例はないと思うのですよ」(阪急阪神不動産・谷口丹彦取締役)

“100年に一度”とも言われる大規模再開発が大阪の梅田で完成を迎えつつある。1日の乗降客数が約250万人と西日本最大のターミナルの梅田地区では、JRをはじめ阪急、阪神、大阪メトロ(地下鉄)の7駅15路線が利用可能だ。

その梅田周辺では次々と大規模開発が続いているが、その目玉がJR大阪駅の北側(通称・うめきた)で9月6日に一部先行街びらきが行われる『グラングリーン大阪』だ。

大阪の都心に残された最後の一等地である“うめきた”は、旧梅田貨物駅の跡地で約24ヘクタールの広大な土地だ。2002年に都市再生緊急整備地域に指定され開発が始まった。

公民連携による都市再生のプロデューサー役を務めると共に、道路やライフラインなどの基盤整備も担当したUR都市機構の責任者に話を聞いた。

「うめきたプロジェクトは、行政はもとより、関西経済界、JR西日本、開発事業者、地権者などが計画段階から連携し、完成した都市基盤での賑わい創出の企画・運営までを公民連携で進めた稀有なプロジェクトだと思います」(UR都市機構うめきた都市再生事務所・西尾司所長)

2013年に、うめきた1期としてショップやレストラン、オフィス、ホテル、マンション、ナレッジキャピタル(知的創造・交流の場)などからなる『グランフロント大阪』が開業し、年間約5000万人が訪れている。

そしてそのすぐ横に2期として『グラングリーン大阪』が開発されて来たのだ。その『グラングリーン大阪』の最大の特徴が“みどり”だ。

「“みどり”と“イノベーション”の融合拠点がまちづくりの目標です。このまちに新たにできる公園は、大規模ターミナル駅に直結する都市公園としては世界最大級の規模(約4.5ヘクタール)を誇り、“みどり”の中でひらめきや創造的な発想が得られ、新たな国際競争力を獲得し世界をリードする“イノベーション”の拠点を創出します。

コンセプトの実現に向け計画段階から民間のアイデア・ノウハウを引き出し自由な発想を最大限発揮し、国際競争力強化、防災性向上、環境負荷低減、近未来技術の社会実装など、大阪の魅力を高める先進的なまちづくりを実現しています」(UR都市機構うめきた都市再生事務所・西尾司所長)

うめきた2期では、開発当初から“みどり”を中心に据えることの合意が出来ていた。商都・大阪には緑がとても少ないという共通の問題意識があったのだ。開発当時の大阪市長などからは、全体を芝生にする案やサッカー・スタジアムを建設する案なども出された。

しかし最終的には3つのホテルにショップ、レストラン、オフィス、マンションなどからなる南北のビル群の真ん中に、1万人規模のイベントも開催できる芝生広場や森からなる広大な都市公園『うめきた公園』を配置する街になった。

それに加えて防災施設や都市型スパ、ミュージアムやイノベーション支援施設も備えている。『グラングリーン大阪』には、塩野義製薬やクボタなどが本社を移転することも明らかになっている。

街づくりに“緑”を選んだワケ

阪急電鉄の担当者としてうめきた開発に関わってきた阪急阪神不動産・谷口丹彦取締役開発事業本部副本部長に『グラングリーン大阪』が目指すものを聞いた。

「緑をベースにした街づくりの中で、私たちが目指しているのは『Osaka MIDORI

LIFE』の実現です。MIDORI(緑)という意味合いを非常に広範に捉えて、緑の色々な解釈の局面をこの街づくりの色々な所で発動させていきたいです。

憩いのある公園づくりに、緑のサスティナビリティとか環境とか、それに関わる水の問題とかもこの街を通じて何らかの社会課題として捉えながら解決していけるような街でもありたい。

緑という中には新しく芽吹いて育っていくという意味もあり、新しい産業、スタートアップが生まれていくという世界もこの緑の中でやっていく。

こんな超一等地の9ヘクタールの開発の中で、半分の4.5ヘクタールを全部公園に惜しげもなく使ってしまうということ自体が、もう非常に画期的でなかなか類を見ないと思います」

“みどり”ともう一つ、『グラングリーン大阪』の特徴は、三菱地所や阪急電鉄、オリックス不動産など9つもの民間事業者が街づくりに参画している点だ。さらに街びらき後の公園の運営管理についても、9社によって設立された一般社団法人が今後50年に亘ってエリアマネジメントをする予定だ。

「三菱地所の丸の内でのエリアマネジメントの知見やノウハウと、私たちが梅田で培ってきたエリアマネジメントの知見とノウハウをミックスしていいとこ取りで、今度は公園も含めてやろうと。

東京では大きな開発は大体一つのデベロッパーがされるのですけど、ここはみんなが持ち寄ってやるというところが面白くて。

最初はね『そんな船頭多くて街がぐちゃぐちゃになるのでは』と言われたのですけど、意外にみんな一つの目標に向かってやると、各社が色々知見を出しあって、当然、その中ではいろいろ想いのぶつかりはあるのですけど、結果的には非常にいいものができて、各社のノウハウがそれぞれうまく活かされた開発になっていると思います」

「Time Out Market Osaka」を誘致

長年、街づくりに携わって来た谷口さんは、都市開発を担当する時にはどういうことを大切にしているのだろうか。

「やっぱり、人が集まる場づくりとしてどう集まるか。都市というのは基本的に人が集まる場所なので、集まらないと意味がないのですよ。だからそれは公園といっても人が集まらないと意味がないので、だからどうやって人が集まるかです」

そのための仕掛けの一つとして、『グラングリーン大阪』では、食と文化を体験できる大規模フードマーケットである「Time Out Market Osaka」を誘致した。約3000平方メートルの広さに関西の有名レストラン15店舗と2つのバーが出店する。美味しくて気に入ったら本店に行ってもらおうという発想だ。

「(大阪滞在中に)時間がない中で、3つも4つも本店を回れないですよね。でも1か所にあれば3つぐらい回れる。大阪って本当においしい食べ物屋さんがいっぱいありますよね。

その中でB級もありますが、特にA級と言われるような大阪のシェフがクリエイティビティを思いっきり発揮して、これこそ食べてもらいたいというのを出しているお店がいっぱいあるんですけど、そういうお店こそ、そのエッセンスを食べてもらえて、かつそれがいくつか同時に食べられたら、それは旅行者にとってとても贅沢な喜びであると思うので」

谷口さんは、街づくりや都市開発にはストーリー(物語)が必要だと言う。

「街づくりにストーリーがないと、(街を)使う側に長いこと使っていただけないんですよね。面白いと思った瞬間はみんな来てくれるんですけど、やっぱり長期に亘って使っていただかないといけない。

使う側に局面、局面で見せると、それはそれでその瞬間は映えたりするのですけど、街を自分のツール(道具、手段)にしていただかないといけないので。

お客様にも何かストーリーがあるはずですから、その自分のストーリーと街が繋がる時に、街にもストーリーが無いとインタラクティブ(双方向)性が出ないですよね」

“うめきた”再開発に合わせてJR大阪駅は地下ホームを新設した。京都と関西空港を結ぶ特急『はるか』が大阪駅に停車出来るようになり、大阪駅から関西空港まではこれまでより約20分短縮され約47分で結ばれるようになった。

またJR西日本と南海電鉄は、大阪から新大阪や関西空港へのアクセスが向上する『なにわ筋線』を2031年に開業する予定だ。さらに阪急電鉄も新たに新大阪と関西空港へ乗り入れる新路線を構想しているなど、梅田エリアと各地を繋ぐ鉄道網の整備も進んでいる。

そして大阪では、いよいよ来年4月から大阪・関西万博が6か月間に亘って開催される。『グラングリーン大阪』を、万博や大阪の発展にどう繋げて行こうと思っているのだろうか。

「海外から来た人は京都にも行きますが、大阪、梅田経由のケースが結構多いと思うのです。彼らが万博に来たついでに、“うめきた”を観る。

その時は観光客ですけど、彼らは立場を変えればビジネスマンで、一度観たら次は愛着というか、あんな所があったよねと、次のインバウンドはビジネス・インバウンドに繋がる。お客さんも潜在的に獲得することができるチャンスだと思っています。

万博では世界中の国が基本的には自分たちの産業と文化を見せに、売り込みに来るわけですが、彼らなりの各国のビジネスに繋がる何かを模索する中で、大阪がいわゆるタッチポイントになる。

その中で私たちの関西、近畿がビジネスに繋がるパートナーになれるような世界というものを作れるじゃないですか。

“うめきた”が一番それを取り込めて、関西の産業の再発展に最高に繋がったよねというふうになればベストですよね」

9月6日に一部が先行街びらきする『グラングリーン大阪』の全体街びらきは、2027年度の予定だ。

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