【長谷川 幸洋】3人に絞られた「総裁選有力候補」の名前…自民党が息を吹き返すにはこの中から選ぶしかない!

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自民党が「解散総選挙」で大敗北する可能性

自民党総裁選が事実上、スタートした。自民党ならではの「危機に瀕した際のサバイバル術」を基に考えれば、現時点では、高市早苗経済安保担当相と小泉進次郎元環境相、それに小林鷹之前経済安保担当相の3人を軸にした戦いになるのではないか。

最初に出馬を表明した小林氏に続いて、高市氏や石破茂元幹事長も近く出馬を表明する方向で調整している、という。

小泉氏も出馬の意向を固めている。出馬を目指す候補は、全部で11人とも12人とも言われ、これまでにない乱戦模様だ。

総裁選は言うまでもなく、自民党員と当所属の国会議員が選ぶ選挙であり、一般の国民には投票権がない。したがって、国民に人気のある候補が選ばれるとは限らず、あくまで自民党員が「この人」と思う候補が当選する。ときに、国民の民意とはズレた総裁が誕生するのは、そのためだ。

しかし、今回は事情が異なる。

岸田文雄政権の人気は地に落ちた状態で、このまま国民の意向とかけ離れた候補が総裁になれば、近く予想される解散・総選挙で国民の信頼を失い、下手をすれば、政権から転落する可能性さえ現実味を帯びている。「そんな事態にはならない」と考えるのは甘い。

暗殺された安倍晋三首相がよく口にしていた言葉だが、「自民党は3割の保守岩盤層に支えられている」と言われている。この3割さえ押さえていれば、左翼勢力が分裂している限り、絶対に選挙で負けることはない、という見立てだ。

自民党は「あっと驚く総裁候補」を選ぶ

ところが、LGBT(性的少数者)理解増進法の成立に象徴されるように、岸田政権のリベラリズム路線の下で、その保守岩盤層が自民党から離れてしまった。誰が選ばれようと、9月の総裁選の後、新政権の勢いが衰えないうちに、10月にも解散する見通しも強まっている。

「政権転落」「自民党王国の崩壊」は、いまや絵空事ではなくなってしまったのだ。

この危機感を自民党員が共有しているのであれば、支持をつなぎとめる秘策は1つしかない。すなわち、誰が見ても「あっと驚く候補」を総裁に選ぶのだ。「なるほど、これなら『増税メガネの岸田』とは違う」と国民に思ってもらえるような候補である。

それは、どんな候補なのか。

1つは「女性」である。

これまでは、女性の自民党総裁も首相もいない。したがって、女性というだけで相当なインパクトがあるのは間違いない。いま候補に挙げられているのは、高市氏のほか、上川陽子外相、野田聖子元総務相の3人だ。

このなかでは、高市氏が頭1つ以上リードしているのは、衆目が一致している。彼女には、失いつつある保守岩盤層に支持者が多い、という強みもある。いずれ総選挙になれば、自民党の救世主になるかもしれない。

もう1つは「若さ」である。

多くの候補者のなかで、ともに40代の小泉氏と小林氏は群を抜いて若い。もちろん、政治家は「若ければいい」という話ではないが、今回は別だ。多くの国民が既成の自民党政治家にウンザリしている。「政治とカネ」のスキャンダルは「自民党議員」のもっとも醜悪な面を見せつけてしまった。

そのあたりを総裁を選ぶ自民党員と国会議員は分かっているだろうか。私は「案外、分かっている」と思う。なぜなら、危機における常識感覚こそが、実は「自民党という政党のしぶとさ」であるからだ。

それは、これまでに何度も示されてきた。

3人に絞られた「総裁有力候補」

たとえば、岸田政権以上に内閣支持率が低かった森喜朗政権の後、小泉純一郎前首相は有名になった「自民党をぶっ壊せ」というスローガンを掲げて、一挙に人気を回復した。まさに瀕死の状態から「逆バネ」を効かせることによって、生き延びたのである。逆張りの手法と言ってもいい。

そうした視点で眺めると、残念ながら、茂木敏充幹事長や林芳正官房長官、石破茂元幹事長、加藤勝信元官房長官らは、いずれも「古い政治家」である。「刷新された感」がない。「河野太郎デジタル相は違う」と思われるかも知れないが、彼も要職を重ねている。普通の国民から見れば、十分に既成の政治家である。

というわけで、高市氏と小泉氏、小林氏の3人が有力候補として残る形になる。

以上は、あくまで「自民党が政権に残るためのサバイバル術」として、候補者の優劣を考えてみたにすぎない。個々の政治家の能力や実績に対する評価とは、まったく別の話だ。しかし、良しにつけ悪しきにつけ、自民党は「目先を変える」ことによって生き延びてきたのも、また現実である。

あえて、政治家の能力や掲げる政策という点で評価すれば、私は一躍、ライジング・スター扱いされている「コバホーク」こと、小林氏について、かなり懐疑的にみている。タカ派を名乗っているのはいいとしても、経済政策については、やはり財務省の財政再建路線べったりではないか。

財務省出身で「財政再建支持=増税派ではない」というのは、かなりの異端である。それほど異端なら、それらしい風評が聞こえてきてもおかしくないが、そんな話はこれまで、まったく耳にしたことがない。

読売新聞が一貫して、彼を好意的に扱っているのも気になる。読売は財政再建派だ。ちなみに、ナベツネこと読売のドンである渡邉恒雄氏は、自身が卒業した開成高校出身者を大事にすることで知られている。小林氏は開成出身だ。

消去法で見えてきた「最有力候補」

小泉氏に至っては、雲を掴むような感じで、まったく何を考えているのか分からない。

高市氏は比較的、明確だが、米国との関係をどう考えているのか、物足りなさも残る。私は「米国のポチ」という立場を脱して、将来の核武装も視野に、徐々に対米自立の道を歩むべきだ、と思っている。そのためには、憲法改正が必要なのは言うまでもない。

繰り返すが、以上は、私が「望ましいと思う自民党総裁=首相」を論じたわけではない。あくまで、政権に居座りたい自民党員の立場に立てば、もっとも可能性があるのは誰か、を消去法で考えたにすぎない。それでも、別の政治家が選ばれる可能性はもちろん、ある。

ただし、そうなれば、いよいよ自民党政治は終わりに向かっていくのでないか。

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