酷暑のお疲れが出てきていないだろうか。夏場はもちろん、これからの季節も積極的に摂りたいのが梅製品だ。2024年7月に東京・紀尾井町のホテルニューオータニで開催された「おいしい博覧会2024夏」では、梅の本場・和歌山県や梅…

酷暑のお疲れが出てきていないだろうか。夏場はもちろん、これからの季節も積極的に摂りたいのが梅製品だ。2024年7月に東京・紀尾井町のホテルニューオータニで開催された「おいしい博覧会2024夏」では、梅の本場・和歌山県や梅酒でおなじみのチョーヤ梅酒のブースに加え、この両者がタッグを組んだワークショップが行われ、梅の魅力を存分に感じられた。2024年は大凶作だったという梅。梅本来の魅力や置かれている現状についてお知らせする。

梅干しに「コロナウイルスの増殖を抑える効果」との研究成果

芳醇な香りとすっきりとした酸味が魅力の梅。個人的なことで恐縮だが、2024年6月頃、スーパーでタイミングよく高級品種の南高梅(なんこううめ)と出合い、ずっと憧れていた梅仕事に初挑戦した。梅と塩だけのシンプルな、いわゆる白干(しらぼ)しと呼ばれる梅干しは、なかなかしょっぱいがすこぶる美味しい。梅干し作りは難しそうと思っていたので意外と簡単で驚いてしまった。

初めて自分で漬けた南高梅の梅干し。かわいくて仕方がない

梅や梅干しについて、豊富に含まれるクエン酸効果でリフレッシュ&疲労回復できるよねとか、お弁当やおにぎりに入れると傷みづらいよねというくらいのイメージだった。しかし調べるほどに、梅と梅干しの持つパワーに驚愕した。

1965年以来、梅の生産量は連続日本一、国内収穫量の6割超を誇る和歌山県。「和歌山県果樹試験場 うめ研究所」を擁し、梅の新たな栽培技術や新品種の開発など、研究に取り組んでいる。

梅の名産地である同県みなべ町では大学などに委託し、梅についての研究が行われている。同町ホームページを見ると、梅のもつ様々な健康機能性効果について科学的に調査・研究し、取得した特許について示されている。例えば梅干しには「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する抗ウイルス作用を示す物質が含まれています」というものも。そのほかにもピロリ菌の活動を抑制する機能を発見するなど、いくつかの特許を取っている。さらに太りにくい、美肌効果など、我々現代人が欲する魅力的な効能があるとされている。

こんなすんごい情報を知らなかったのって私だけ? こういう情報はもっともっと大々的に教えてほしかった! 和歌山県の方、アピールが下手すぎないか!?

梅について、今後どんな研究結果が報告されるのかが楽しみだ。

和歌山県ブースに並ぶ、同県産梅干したちのごく一部

若者の梅離れを食い止めろ! 新たな梅製品の開発が進む

梅の名産地である和歌山県だが、約20年前と比べると、家庭での梅干しの消費量が約3割減少している。年配者の売上は安定しているが、特に若年層での梅離れが顕著なのだそう。

梅離れが進んでいる原因は食の多様化のほか、梅の独特の酸味が苦手という若者が少なくないのだとか。

海外の方に見直されている日本食だが、梅干しはどうなのだろうか。和歌山県庁の方に多くの外国人が抱きがちな梅干しへの印象を伺った。

「基本的にはどこに持っていっても、酸味が苦手という方が多いとか。梅干しは海外のセレブが健康を意識して摂取するといった、健康食品的な立ち位置のようです。しかし梅酒の甘くて爽やかで香り高い美味しさは広く受け入れられ人気です」と教えてくれた。

和歌山県のブースでは、東京・有楽町のアンテナショップ「わかやま紀州館」で購入できる商品がずらり。昔ながらの梅干しに加え、個包装になっているギフトにもぴったりなハチミツ梅干しや梅酒などが並んでいた。
20年ほど前に登場した酸味の少ないハチミツ梅干しは今や定番というか、梅干しの中では一番の主力商品だ。

現在は、梅離れを打破すべく、県内メーカーがいろいろな味の梅製品を作っている。デザート梅というジャンルも増えてきており、例えば塩を使わず、砂糖とリンゴ酢で漬け込んだ「デザート夢の梅」(864円)は、まるで梅のグラッセのような贅沢な逸品だ。

リフレッシュしたい時にも適している、ちょっとした差し入れなどにも使いたい梅製品
和歌山県が誇る最低糖度は8度というミニトマト「優糖星」を使ったデザート梅干しなども

豊富なラインナップの梅酒も試飲させていただいた。ブランデーや本格焼酎で漬け込んだものや、中には一般的な氷砂糖の代わりに高級な「和三盆」を使うなど贅沢な梅酒も。風味や甘さもそれぞれで魅力的な個性があるから、あれもこれも試したくなる。

一般的にイメージされるような甘いものばかりではないので、食中酒としても楽しめそう。もちろん、甘口のものは食前・食後酒としても活躍するだろう。何よりも筆者は梅酒の爽やかでやさしい味わいと、甘くて華やかな香りにとても癒された。

梅酒をひと通りいただいた結果、私がいちばん気に入ったのがみなべ町の生産者「マルリョウナガオカ」の「紀州 萌(もえ)」。みなべ町産の「露茜(つゆあかね)」という果肉が紅色の梅をメインに南高梅と氷砂糖で漬け込んだ梅酒だ。色みも美しくて素敵だが、すっきりしつつも梅の甘みと酸み、風味のバランスが絶妙だった。
思わず、他の参加者にも大きな声でオススメしまくってしまった。

惚れ込んだ「紀州 萌」。この日は「わかやま紀州館」に並んでいない46種類の梅酒が試せた

梅酒の特徴である甘さ・香り・酸味を図式化した梅酒マッピング図(和歌山県内の酒造メーカー・梅干しメーカー・梅農家が作る46種類の本格梅酒が対象)=和歌山県HPより(https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/071700/d00201192_d/fil/mapping.pdf)

ちなみに以前、「おとなの週末」本誌でお酒の取材をしていた時に気に入ったのが、梅酒をホッピーで割ること。このレベルの梅酒だともったいないが、美味しい梅酒で作ればもちろんその分とても美味しいだろう。買った梅酒が甘すぎる、なんて時にもおすすめだ。気になる方はぜひやってみてほしい。

梅が置かれている課題とは

2024年は気候変動による育成の悪さに加え、3月下旬には雹(ひょう)の被害により、せっかくなっていた梅の実が傷ついてしまった。さらにカメムシが大量発生し、残念ながら商品にならない梅の実がたくさん出て、収穫量が大きく落ちた。

チョーヤと和歌山県による、おいしい博覧会ワークショップ

そもそも、梅農家さんの高齢化が進んでいることも大きな課題であり、和歌山県では、新規就農者や天候による被害、高騰する肥料への補助といった様々な支援・対策に取り組んでいる。

梅酒といえば思い浮かぶ企業がチョーヤ梅酒。メーカー名と主力商品の「紀州」がパッとつながるのって本当にすごいこと。同社は「農家さんに支えていただかないと商品が作れない」とのことで、梅生産者との良い関係性が垣間見える。

チョーヤのブース。紀州南高梅を使った商品などが並ぶ

梅の魅力を体感できるのはここ!

2024年6月7日にリニューアルオープンした「わかやま紀州館」(東京・有楽町)。新たに生まれたイートインコーナーでは、梅酒や日本酒の飲み比べ、和歌山県産の梅やみかん、桃を使ったジェラートなども楽しめる。
和歌山が誇る梅干しは常時80種類以上並んでいたり、産直コーナーがあったり、加工品など700超のアイテムが並ぶ。個人的に熱いのは、同県白浜町のテーマパーク「アドベンチャーワールド」のオリジナルグッズが販売されていること。アドベンチャーワールドといえば、パンダの飼育で有名。はぁ、パンダに会いたい!

なんと「わかやま紀州館」では、毎月第1&第3金曜日に1日2回(17時〜17時45分、18時〜18時45分)、参加費660円で「梅酒お試し飲み放題」を開催している。これは予約して駆けつけなければ。
美味しい和歌山の梅酒を飲み比べて、お気に入りを見つけてほしい。

チョーヤは、京都と鎌倉に「梅体験専門店 蝶矢」という店舗を構えている。ここは予約制で梅シロップや梅酒を、手作りできるお店だ。その様子がSNS映えするとしてヤング層に大人気なのだそう。累計販売数24万本を超えるヒットとなっているのが今回、体験させていただいた「蝶矢梅キット」。完熟の南高梅と、こんぺい糖を合わせた一番人気の商品で、梅と砂糖の様々な組み合わせで100通りもの梅体験ができるというもの。季節を問わず年間を通じて梅仕事に挑戦できるのも魅力的だ。

梅シロップ作りを体験。完熟南高梅を冷凍させてあるので梅エキスがたっぷり出る

「梅体験専門店 蝶矢」は、8月21日(水)から27日(火)まで、日本橋三越で開催される【フードコレクション】に期間限定で出店する。今回体験した「蝶矢梅キット」(Mサイズ:2901円)も発売予定なのでぜひお試しあれ。

日本を代表するフルーツの一つ、梅。ここで触れたのは梅の魅力のほんのひと握り。もっと日々に取り入れて、美味しく健康に過ごしていきましょう!

■わかやま紀州館
住所:東京都千代田区有楽町2-10-1 東京交通会館地下1階
営業時間:10:00〜19:00 (日曜・祝日は10:00〜18:00)
電話番号:03-6269-9434
ホームページ:https://kishukan.com/

■梅体験専門店 蝶矢
ホームページ:https://choyaume.jp/

文・写真/市村幸妙

いちむら・ゆきえ。フリーランスのライター・編集者。地元・東京の農家さんとコミュニケーションを取ったり、手前味噌作りを友人たちと毎年共に行ったり、野菜類と発酵食品をこよなく愛する。中学受験業界にも強い雑食系。バンドの推し活も熱心にしている。落語家の夫と二人暮らし。