4月から海外移住していたフワちゃん。今回の騒動で日本での活躍の場は完全になくなってしまうのか……(画像:本人の公式Xより)

YouTuberのフワちゃんが、お笑いタレントのやす子さんに対するX(旧Twitter)での暴言で大炎上しています。

8月6日には、出演する「Google Pixel」のCMが公開停止、ラジオ番組「オールナイトニッポン0」も放送中止になるなど、深刻な影響が出ています。

同日、やす子さん本人に直接謝罪したと報道されていますが、その“謝罪”によって、コロナ禍で一気にメディアの女王となった地位は守れるのか、検証してみたいと思います。

“時代の寵児”的ポジションは脆弱

YouTube、テレビ、CM、そしてついにはプロレスデビューと、メディアで見ない日はないほどだったフワちゃんですが、そのメディア露出の高さと比べ、好感度の低さもたびたび話題に出ていました。

タメ口に代表される馴れ馴れしさ、ネタにされている礼儀知らずぶり、さらには関係者などから漏れてくる遅刻癖。インターネットニュースに登場すると、批判的なコメントが多くつくなど、アンチも多い存在でした。

違和感や抵抗感を覚える人は一定数いただろうと思いますが、時代を先取ったYouTuberという立ち位置や、エキセントリックな言動やファッションなど、受け入れないと自分の器の大きさが問われ、時代に乗り遅れているのではという空気感も漂っていました。

当初は、“キワモノ”として露出していたはずが、何だかわからないうちに大物芸能人との共演が広がり、メディアを占拠するほどの存在になっていったように思います。

こうした“時代の寵児”的ポジションは常にあります。ただ、その地位が盤石であることはまずなく、一時の猛烈な露出はさまざまな理由から長持ちはしません。単純に露出過多で飽きられてしまうだけでなく、スキャンダル一発でその地位は他の人に変わられてしまう脆弱なものでもあります。

やはり一時期バラエティ番組を中心に高い露出を誇ったタレントのゆきぽよさんも、友人のトラブルを契機に一気に出番を失いました。ゆきぽよさんが属していたギャルタレント枠は、すでに何人もの後輩タレントがそのポジションを占めています。

何となく時流に乗った「タレント」と呼ばれる立場は、きわめて脆い存在と言えます。

謝罪で何とかなるのか

改めて、事の経緯を振り返るとこうです。

8月2日、やす子さんがオリンピックに絡めてXに《やす子オリンピック 生きてるだけで偉いので皆 優勝でーす》という投稿をしました。これに対し、フワちゃんが《おまえは偉くないので、 死んでくださーい 予選敗退でーす》と書き込んだというもの。

直後、やす子さんが「とっても悲しい」と投稿したことで、事態の重大さを理解したのか、フワちゃんの対応は迅速でした。即座に投稿を削除し、Xで謝罪。いつものおふざけではなく、真摯に反省した様子でやす子さんへのお詫びを述べています。


フワちゃんからの“暴言”を受けてポストしたやす子さん(画像:本人の公式Xより)


やす子さんの投稿の直後にポストされたフワちゃんのX(画像:本人の公式Xより)

自己を正当化するような言い訳や経緯説明ではなく、もちろん無視して逃げ回るのでもなく、いつもの芸風には似合わない、まじめでストレートな謝罪姿勢は間違っていないでしょう。

こうしたトラブルでは、「やす子さん本人に直接会ってお詫びすべき」的な意見が必ず上がるのですが、実は謝罪において本人に直接面会するのは正しいとは言い切れません。

トラブルの被害を受けた側は、「相手の顔も見たくない、不快、怖い」といった感情を持つことが少なくありません。誠意の押し売りの如く、とにかく本人のところに押しかける謝罪は、相手の気持ちよりも自己満足を優先しているととられるリスクが低くないのです。

少なくとも、まずは原因となったX上で真摯な謝罪をしたところまでは、間違っていないと思います。そして冒頭にも書いたように、6日にはやす子さんに直接の謝罪もしたと報道されています。

しかし、炎上状態は収まるどころか延焼を続け、どんどん拡大中です。

まずは冒頭に書いたように、自身がパーソナリティを務めるラジオは事件を受けて休止となりました。さらに出演CMが公開停止となるなど、事態は悪化しています。

絶体絶命の事態を切り抜けるには

これまでもBCP(事業継続計画)視点でトラブルを語ってきました。この絶体絶命の事態を、無理にでも切り抜けるとしたらどうすればいいのでしょうか。

芸能活動で大きな影響力を持つのはCMスポンサーです。Googleという巨大企業のCM出演が継続できたら、この苦境を抜け出せる可能性がありました。

俳優の香川照之さんがスキャンダルに見舞われたときも、やはり巨大スポンサーであるトヨタのCMに出演しており、私は当時、トヨタがCM継続をしていたらスキャンダルは終息に向かう可能性があると予想しました。

結局、豊田社長と共演していたCMなどがすべて打ち切りとなり、香川さんは表舞台から消えました。

今回についても、GoogleのCM公開停止によって、フワちゃんの活路を断ったと言えます。


Google PixelのCMで使われていた「消しゴムマジック」を自身のXでも披露していたフワちゃん(画像:本人の公式Xより)

もう一つの可能性は、被害者との関係改善です。

たとえば不倫問題が起きたとき、その最大の被害者である配偶者が表に出て和解をアピールするという手があります。世間が不倫の被害を受けたわけではなく、直接の被害を受けたのは家族です。その家族が「許している」というメッセージを出すことで、過去にも炎上が鎮火した例があります。

今回は被害者のやす子さんが、フワちゃんと共演するなどして、和解した映像を出すことで、一定の鎮火が期待できる可能性があります。

ただ、やす子さんは謝罪を受けたとはいえ、フワちゃんの発言で傷ついたのは確かで、そこまでして協力する義理もないでしょう。ご本人は顔も見たくないかもしれません。


「オールナイトニッポン0」の休止が決まり、フワちゃんらしからぬ真面目な様子で謝罪(画像:本人の公式Xより)

容易ではない復帰と「危機の雪崩化」

これまでの露出の多さと、それに比例して出ていた反発や反感の大きさからして、事態の鎮静化はかなり難しいと思います。

特に自身の出演する「オールナイトニッポン0」が中止になったことは大きな不安材料です。直接番組で謝罪や経緯の説明、釈明をする機会をつぶしたことになり、ある意味、メディア側がフワちゃんを切ったとも考えられる判断だからです。

リスナーとの距離感の近さや、自分のファンを中心にホームだったはずのラジオが、真っ先に断を下したことで、追従するメディアが雪崩のようにつながるかもしれません。雪崩になればもう止めようがなくなります。

やはりアンチのエネルギーが強い存在の場合、一度足を滑らせれば一気にすべてを失うリスクはきわめて高いと考えなければなりません。

私はこれまでも芸能人や政治家など、有名人が、直接SNSで意見・発信するリスクを語ってきました。あくまで本人が書くにしても、少なくとも投稿は所属プロダクションのマネージャーが行うなど、安全装置をかませる必要があります。

大火となった炎上状態は、もはや消火活動で何とかするのはきわめて難しいでしょう。日頃からの用心に勝る防火はありません。

(増沢 隆太 : 東北大学特任教授/危機管理コミュニケーション専門家)