クルマが“自動で運転”事故は誰の責任? 岸田首相が「自動運転レベル4」実施を明言! 完全に自動な「特定条件下」とは

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「レベル4」の自動運転実施を岸田首相が明言

 岸田文雄首相が「2024年度内にレベル4の自動運転を国内10か所で実施する」と明言しました。

 2024年7月31日、視察先で記者団の質問に答えたものです。

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 また、同時に現在、約11か月かかっているレベル4の審査を2か月程度まで短縮するよう見直すことも明らかにしています。

「レベル4」の自動運転実施を岸田首相が明言! 気になるのはもしもの時の事故?(画像はイメージ)

 まず、自動運転のレベル0〜5はそれぞれ、どのような違いがあるのかも見てみましょう。

 これらの「レベル」は米自動車技術会(SAE)が定義しており、日本を含む各国が同じ基準を採用しています。

 このうち、レベル0は自動運転ではなく、旧来の人がすべてを判断しすべての操作を行うクルマです。

 そして、レベル1は「運転支援」、レベル2はレベル1の運転支援を組み合わせたものとなります。端的にいえば、レベル1・2の自動運転は近年、多くの車に採用されている安全支援・運転支援機能が搭載されたクルマです。

 そして、レベル0〜2は車を運転する主体がドライバーとなります。

 一方、レベル3以上は主体がシステムです。レベル3は「条件付き自動運転」と定義され、基本的にはシステムが運転をするものの、要所要所での判断をシステムからドライバーに求めるものです。

 国産車では、ホンダが台数限定ながらレベル3の自動運転が可能な「レジェンド」を2021年に販売しました。

 レベル4は後述する特定条件下で完全自動運転を行うもの。レベル5は真の完全自動運転となり、すべての操作がシステムによって行われます。

自動運転にはいくつかのレベルに分けられる(資料:国土交通省)

 なお、法律的にレベル4での自動運転は、2023年の道路交通法改正で解禁されています。

 レベル4の自動運転とはどのようなものなのでしょうか。国土交通省の資料には、「特定条件下における完全自動運転」「特定条件下においてシステムが全ての運転タスクを実施」と記されています。

 完全自動運転ですので、原則的に人を介さずシステムによって車の運転をするものです。そして、特定条件下、とは走行する地域を限定することを示します。

 前述の岸田首相の表明に先立つ同年6月6日、デジタル行財政改革会議でもレベル4の自動運転を進める方針が打ち出されていたのですが、その背景には地域によって交通サービスを持続させることが困難になっていることがありました。

 レベル4の自動運転は従来のバスなど移動サービスを代替するものとして期待されており、こうした地方部の交通手段維持のためスタートが決まったということです。

 さて、前述のようにレベル4の自動運転は、地域限定とはいえ完全自動運転です。

 もし、事故を起こしてしまったら、誰が責任を負うのでしょうか。

 レベル4解禁の法的根拠となっている道路交通法では、都道府県の公安委員会から許可を受けた「特定自動運行実施者」が、運行計画に従って自動運転を行うとしています。

 また特定自動運行実施者は、実際に遠隔で自動運転を監視する「特定自動運行主任者」を指定します。

 事故における民事面での責任は、これら特定自動運行実施者と特定自動運行主任者が負う形です。

 刑事面、行政処分の面では、個別事例によって判断するとしているものの、法令違反などがあれば都道府県公安委員会は特定自動運行実施者の許可を取り消せるため、ここでも自動運転を実施する側が大きな責任を負っています。

 自動運転とはいえ乗員がバスなどに同乗する場合がありますが、こちらは「特定自動運行主任者等」と呼ばれ、事故時には負傷者救護や道路上の安全確保といった義務が課されます。ただちに事故そのものの責任は問われません。

特定自動運行実施者などの定義とすべきこと(※警察庁、損害保険料率算出機構の資料より作成)

 では、システムに欠陥があった場合、メーカーには責任はないのでしょうか。

 2018年に政府がまとめた「自動運転に係る制度整備大綱」には、「保険会社等から自動車メーカー等に対する求償権行使の実効性確保のための仕組みを検討する。【自動車損害賠償保障法】」と記されています。

 メーカーなどに製造物責任(車の欠陥が事故の原因となった)が生じる場合は、損害保険会社が製造者に賠償を求められるということです。

 また、同じく自動運転に係る制度整備大綱では、ハッキングにより事故が起こった場合は「政府保障事業で対応することが妥当であると考えられる」としています。