岡本:もちろん、ただただ面白さだけを追求しているわけではない。大前提として真摯に取り組んでいるベースがあるからこそ、フードロスラのようなクリエイティブが「味の素は面白い取り組みをやっている」という感情につなげられる。実際、フードロス削減への取り組みは、味の素では「TOO GOOD TO WASTE」としてグループの直接の事業活動で発生するフードロスを2025年度で半減させ、グループが関わるフード・サプライチェーン全体では、2050年度までに半減させる目標を掲げ、2年ほど前から果敢にチャレンジしている。「面白い」と感じてくれた消費者に提示できる、いわば「真面目」な素地があるからこそ、面白さがより意味を持つ。DD:クリエイティブの面白さとブランドの取り組みや価値をバランスよく表現するのは容易ではない。味の素としてブランド、コミュニケーション、クリエイティブの一貫性をどのように実現しているのか。向井:自分たちの製品やサービスのユニークネスがどこにあるのかを明確に理解することに尽きる。ビジョンやブランドの本質的な価値を単なる絵空事として捉えるのではなく、コミュニケーションチームやクリエイティブチームが自分たちならではの視点で表現できるよう常にメンバーと話し合い、設計していく。そうしなければ、よいクリエイティブは作れない。
DD:「よいコミュニケーション」とはなにか。おふたりが常に意識していることを教えてほしい。向井:マーケティングデザインセンターが結成された際、メンバー全員が自分の思いを紙に記入することになり、私は「愛し、愛される」と書いた。消費者にファンになってもらうためには、まず自分たちが相手を好きになるべきだという思いからだ。ファン作りはまず好きになることから、コミュニケーションも同じだ。相手のことが好きであればこそ、相手に受け入れてもらえる要素を見つけ出し、どうアプローチすればよいのか考えられる。岡本:コンシューマーブランドは消費者に支えられてはじめて成立する。つまり、ブランディングというのは好きな人に好きになってもらう仕事だと言える。そのためのコミュニケーションは、消費者のエモーションやシーン、さまざまなモーメントに応じて最適なメディアを活用し、心に入る設計をどうするが不可欠になる。デジタルではこうする、マスではこうするという手法論は重要ではない。うま味調味料の「味の素」 一粒に価値はないが、そこから作られる料理や生まれる会話、癒される気持ちはかけがえのない価値だ。その価値を生み出すきっかけを作り、さらにエンハンスするコミュニケーションこそが我々が求めているもの。それをどうすれば届けることができるのか、必死に考え続けていきたい。Written by 坂本凪沙、分島翔平Photo by 渡部幸和