暖冬でも業績好調、ダウンジャケットが主軸の「カナダグース」が売れる理由とは?

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近年、世界的な暖冬の影響でアパレル各社が冬物商戦に苦戦している中、「ダウンジャケット」を主軸に展開しながらも着実に売上を伸ばし続けているブランドがある。それが、「カナダグース(CANADA GOOSE)」だ。同ブランドを展開するカナダグースホールディングス(Canada Goose Holdings Inc.)は、最新の2024年3月期通期の連結売上高で、前年同期比9.6%増を記録。日本で事業を運営するカナダグースジャパンも、売上高は非公開であるものの、決算公告によれば当期純利益は10億4600万円と業績は好調だ。  暖冬にもかかわらず、ダウンジャケットをメインに打ち出すカナダグースはどのようにして堅調な売上を維持しているのか。同ブランド担当者によれば、日本ではマーケットニーズを反映した日本独自企画の商品が、売上に大きく貢献しているという。

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 カナダグースジャパンは、2022年にサザビーリーグとカナダグースホールディングスとの共同出資による設立以来、本国であるカナダ企画の商品と併せて日本独自の発案による商品を展開。「日本の気候に合わせて都会でも山岳でも着用できる」をテーマに、高品質や高機能性といったブランドのDNAは守りつつも、消費者の声や蓄積されたデータを元に、日本市場のニーズを反映したオリジナルの商品企画を本国に提案し製品化を行っている。そんな「日本限定モデル」は、基本的に年1回秋冬シーズンに新作を発表しており、毎回約2年の製作期間を経て製品化が実現しているという。

 なかでも、同社が近年特に力を入れて開発しているのが、ライトウェイトのダウンジャケットだ。従来は例年9〜10月ごろからヘビーウェイトのダウンジャケットが動いていたものの、近年は暖冬の影響によりライトウェイトの需要が拡大。ボンバージャケット型の「フレイザー ボンバー」(12万5400円)をはじめ、オニオンキルティングをあしらったアウターとしてもインナーとしても着られる「マクリーン ジャケット」(17万6000円)や「メイフィールド ジャケット」(19万300円)、すっきりとした短めの着丈と軽さが特徴の「ブライデン パッファー ブラックレーベル」(19万9100円/全て税込)など、薄手でダウン見えしないアイテムや、より長いシーズン着用できるアイテムの売上が目立っていると担当者は語る。

 これらのアウターの売上が好調な要因として、同社は暖冬の影響に加え、「メイドインカナダのクオリティ」「機能性」「軽量性」を挙げる。いずれのアイテムにも耐久性や耐摩耗性、撥水性などに優れた機能性の高い自社開発素材を用いているほか、外側と内側双方に複数配したポケットや、脱いだ際にジャケットを肩から提げてハンズフリーで持ち運べる「バックパックストラップ」など、細部まで追求された同ブランド独自の機能面も好評を得ているという。

 また、ライトウェイトのダウンジャケット以外にも、近年はフリース素材のジャケットやフーディーなども日本独自に展開。そのほか、今年はブランドとして初めて春コレクションでも日本限定モデルを製作し、防風性・撥水性に優れたボンバージャケットや、旅行・レジャー需要に対応したしわになりにくい軽くしなやかな素材のライトアウターなどを発売した。

 同社担当者によれば、ヘビーウェイトに代わりライトウェイトダウンの販売数量が伸びているため1点あたりの単価は減少しているものの、ダウンアイテムの販売数量自体は増加。さらに、「ダウン以外のアイテムカテゴリーが拡大し、オールシーズン提案できている」ことから、結果的に増収に繋がっているという。主戦場の秋冬シーズンに留まらない、端境期や春夏含めたより長いシーズンの需要を視野に入れた製品提案を強化していることも、同ブランドが好調な業績を維持している一因のようだ。

 先月発表された2024年秋冬コレクションでは、カナダ企画の多様なデザインのヘビーウェイトダウンを中心としたラインナップと併せて、日本限定モデルの新作も登場。異素材のリバーシブルで着用できる「キンロス リバーシブル フリース ジャケット ブラックレーベル」(13万9700円)や、ダウン見えしないキルトなしデザインのライトウェイトダウン「ロドス ジャケット フュージョンフィット」(16万9400円)、「ロドス フーディー フュージョンフィット」(18万3700円/全て税込)など、日本では引き続き、端境期や暖冬を意識した商品企画を強化し提案していく。