お酒を飲むことは楽しくてストレス解消になりますが、飲み過ぎると二日酔いに苦しめられてしまうため、人々は古くから「お酒を飲みつつ二日酔いを避ける方法」について探求してきました。近年では「お酒を飲む前にオリーブオイルを飲んでおくと、アルコールの吸収を遅らせて二日酔いを防げる」という説が人気を集めていますが、果たして本当にオリーブオイルには二日酔いを防ぐ効果があるのかどうかを、イギリスのアングリア・ラスキン大学で医学教授を務めるジャスティン・ステビング氏が解説しています。

Some say a shot of olive oil can prevent a hangover - here’s what the science says

https://theconversation.com/some-say-a-shot-of-olive-oil-can-prevent-a-hangover-heres-what-the-science-says-234443



「オリーブオイルを飲むと二日酔いを防げる」という説は、音楽プロデューサーのベニー・ブランコ氏がトーク番組の「ザ・トゥナイト・ショー」で話したことなどがきっかけで広まっているとのこと。オリーブオイルが二日酔いを防ぐメカニズムについては、「オリーブオイルの脂肪が胃の内壁にコーティングを形成し、アルコールが血液に吸収される速度を低下させるため」と説明されています。

二日酔いは、血液に吸収されたアルコールが肝臓で分解されてアセトアルデヒドという有害な物質が作られ、血中のアセトアルデヒド濃度が高くなりすぎることで発生します。そのため、オリーブオイルがアルコールの吸収を遅らせることで二日酔いを防げるという説明には、一定の妥当性があるように思えます。

しかしステビング氏は、「この主張は魅力的ですが、科学的な裏付けがないため、懐疑的な目で見る必要があります」と指摘し、オリーブオイルを飲んだところで二日酔いを防げる可能性は低いと主張しています。



脂肪分の多い食品がアルコールの吸収をある程度遅らせることができるのは事実ですが、アルコールのうち胃で吸収されるのは約20%に過ぎず、残りの約80%は小腸で吸収されます。つまり、たとえオリーブオイルが胃からのアルコール吸収を遅らせたとしても、アルコールの大半は小腸で吸収されてしまうため、二日酔いを防ぐほどの効果はない可能性が高いそうです。また、オリーブオイルには肝臓によるアセトアルデヒドの生成や、二日酔いに伴う脱水症・頭痛・吐き気といった諸症状を軽減する効果はありません。

ステビング氏は、二日酔いを防ぎたいならオリーブオイルに頼るよりも、以下のような対策を取った方がいいとアドバイスしています。

◆1:水をたくさん飲む

脱水は二日酔いの症状の主な原因だそうで、飲酒前やその途中、飲酒後に適度な水分補給をすることで二日酔いの重症度を軽減できるとのことです。

◆2:栄養をしっかり摂取する

飲酒前にタンパク質・脂質・炭水化物が豊富な栄養価の高い食事をとると、オリーブオイルを飲むよりも効果的にアルコールの吸収を遅らせることが可能です。

◆3:節度を保って飲酒する

二日酔いを防ぐ最も効果的な方法は、「二日酔いになるほど大量に飲酒しないこと」です。自分の上限を見極めて、アルコール摂取のペースを調整することで二日酔いのリスクを大幅に減らすことができます。

◆4:不足した栄養素を補う

飲酒した後に失われた電解質を補給し、必須栄養素を含む飲食物を摂取することは、体が二日酔いから回復するのを助けてくれます。飲酒後に適した飲食物には、スポーツドリンク・果物・野菜などが含まれます。



ステビング氏は、「オリーブオイル・メソッドが自分に合っていると主張する人がいることは注目に値しますが、このような話はプラセボ効果の影響を受けていることが多いのです。治療法の効果を信じることは、たとえその効果が科学的に証明されていなくても、時には体感的な改善につながることがあります。つまり、二日酔いを防ぐために飲酒前にオリーブオイルを一杯飲むというアイデアは、魅力的で単純な解決策ではあるものの、科学的な裏付けに乏しいということです」とコメントしました。